毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

お初の加賀温泉(2018年月イチ日本・3月編;その8)

イメージ 3 ▲加賀温泉のお宿の夕食の一品、鮑踊り焼きが焼き上がるのをじっと待つ。

 

 2018年3月17日、すぱクロくん。

 

 小松駅から特急「しらさぎ12号」に乗り、わずか8分で15:13に次の停車駅・加賀温泉に到着。実はもうここで降りるのだ。

 

 土曜日だからなのか、卒業旅行シーズンだからなのか、加賀温泉駅ではかなりの下車客があり、駅西口の駐車場には、加賀温泉駅をゲートウエイとして訪れることができる「加賀四湯」と呼ばれる粟津温泉、片山津温泉、山代温泉、山中温泉の4つの温泉にある旅館の送迎バスがずらりと並んでいて、下車客たちは次々に送迎バスに吸い込まれていきます。加賀温泉郷、人気なんですね~。

 

 かく言う我々も、この日は山代温泉に投宿する予定。加賀市内にあり、加賀温泉駅から南へ4kmちょっとのあたりにある山代温泉の旅館「ゆのくに天祥」さんにお世話になります。

 

イメージ 1 ▲お食事処として指定された「料亭 加賀」。この中の掘り炬燵の個室で夕食をいただきました。

 

 「ゆのくに天祥」さんのフロントデスク前にはチェックイン待ちの長い列。建物の外観はちといかつい印象がありますが、中に入ってみると柔らかな内装が施されていて、女性受けしそう。だからなのか、1階フロントロビーを行き交う人々には女性グループがすごく多く見受けられます。

 

 チェックインタイムを見計らって15時30分からは、温泉たまご手作り体験もできて、これが大人気。生卵の殻にペンで自由に柄を描き、玄関脇にある熱い源泉沸きだし口に入れておくと、温泉たまごができあがるという寸法。宿に到着するなり、いろいろ楽しいです。

 

イメージ 2 ▲夕食はこんな感じからスタート。石川だけに食器に金箔色が多いような。

 

イメージ 4 ▲季節物の前菜、彩々盛り合わせ。

 

 「ゆのくに天祥」さんは、2012年に自家源泉が開湯したということで、館内では自家源泉と引湯源泉による豊富なお湯をたたえた3カ所の大浴場で温泉を堪能できます。ただし、3カ所のうち2カ所は男性が入れるのは朝のみなので、男性が3カ所すべてを楽しむには早起きが必要。やっぱりここは特に女性にやさしいお宿なのかしら。

 

 ひと風呂浴びて汗がひいたら、晩ごはん。指定された2階の食事処「加賀」へ行き、掘り炬燵式になった4人がけの個室席へ案内されます。他のお客さんを気にせず、のんびり食事を楽しむことができます。季節のジュースを「食前」にいただいて、色とりどりの前菜盛り合わせを一つずつ味わいながら、晩ごはんスタートです。

 

イメージ 9 ▲「造里」は「海の幸 鮪、間八、梅貝、雲丹、甘海老」の5点盛り。

 

イメージ 11 ▲「火取り」は「寄せ鍋 烏骨鶏、海老、魚、野菜」。加賀麩が入っているのがうれしい。

 

 実際に食べた順はともかくとして、添えられた「御献立」の順に紹介すれば、前菜の次は「造里」。「海の幸 鮪、間八、梅貝、雲丹、甘海老」とあります。ウニはバフンウニでしょうか、なかなかいい色です。「梅貝(バイガイ)」は北陸ならではの味覚。少し表面を炙ってありますでしょうか。力強い食感と噛むとにじみ出る旨味、たまりません。

 

 次は「火取り」。烏骨鶏、海老、魚、野菜の「寄せ鍋」ですが、「火取り」ってどういう意味なんでしょうね。和食用語では、材料を火であぶること、中心まで加熱せず外側だけを炙ることを「火取る」というそうですが。まさか、山中温泉の大聖寺川にかかる「こおろぎ橋」の近くの「姥の懐」という場所に出るという「火取り魔」という妖怪と関係しているんじゃないでしょうね(笑)。「ゆのくに天祥」さんは、烏骨鶏を使ったお料理が自慢らしく、4月になると、烏骨鶏をベースに、朝鮮人参・キクラゲ・銀杏など体によい食材を取り入れたオリジナル薬膳スープが提供されるようです。また、金沢は寺院の多い土地柄で、京都から伝わった「お麩」が盛んに食べられましたが、江戸の後期には煮崩れしにくい「加賀麩」が考案されます。この寄せ鍋にもその車麩が入っていてうれしい。

 

イメージ 8 ▲「替鉢」は「鮑踊り焼き ブロッコリー、レモン、バター」。

 

イメージ 10 ▲「蓋物」は、加賀らしく「治部煮」。とろりとした感じが食欲をそそりますなあ。

 

 「替鉢」は「鮑踊り焼き ブロッコリー、レモン、バター」。「御献立」全体を見渡すと「焼き物」がないようなので、その「替鉢」のようですね。ぷりっとしたアワビの身が見るからにおいしそう。キモは貝殻を皿にして焼きます。日本酒に合いまくりそうです。今回は飲みませんでしたが。

 

 その次の「蓋物」は「加賀治部煮」。加賀の郷土料理の代表格ですね。汁にとろみがあり、薬味やワサビを使うのが特徴。真ん中にあるのは金沢の特産品、すだれ麩でしょうか。梅の花をかたどったのは生麩でしょう。上品なだしのうまさがとろみのある汁でよく絡んで、やさしくふんわりとした味わいが楽しめます。

 

イメージ 12 ▲ここまでの品々からは一転、強力な「洋皿」が登場。「極選牛のミニステーキ」。

 

イメージ 5 ▲最初からテーブルの上に鎮座していた「津和井蟹」。

 

イメージ 7 ▲僕はまず全部の身をほぐしてからまとめて食べるタイプです。

 

 懐石料理ならば「強肴」となるところでしょう、「洋皿」が登場しました。「極選牛ミニステーキ 温野菜添え」。国産牛であることは間違いないですが、石川と言えば能登牛といきたいところ、さすがにそこまでのものは出てこないか。温野菜はチンゲンサイとニンジンとタケノコで、しゃくしゃくと春らしく、濃いめのたれもあいまって、ごはんがほしくなる~~。

 

 そして、最初からテーブルに鎮座していたのは「酢の物」であるところの「津和井蟹 若布、合わせ酢」。これだこれだ、「北陸の冬の王者」と言えば、ズワイガニ。石川ものはブランド名は「加能ガニ」といい、旬は3月中旬までなので、今回はけっこうぎりぎりでしたが、食べられてよかった。僕は身を全部ほじって出してからまとめて食べるタイプなので(笑)、合わせ酢の小皿に山盛りになったズワイガニの身を見てにんまり。いただきます!

 

イメージ 6 ▲「お凌ぎ」は「ゆのくに天祥」こだわりの一品「加賀棒茶うどん」。

 

イメージ 13 ▲石川県産米のごはんに香の物三種盛、そして新丈、青味、口取りのお吸い物。

 

イメージ 14 ▲お吸い物の中にいるのは、山代温泉のゆるキャラ「すぱクロくん」!

 

 ここまで食べまくってきて「お凌ぎ」もないもんですが、「お凌ぎ」は「加賀棒茶うどん」。

 

 島根松江で、松平家7代藩主松平治郷(不昧公)のおかげで茶の湯が盛んになったのと同じように、加賀藩主前田氏の祖となった前田利家が千利休から直々に佗茶を学ぶなど前田氏が茶の湯に熱心だったことから、石川県にも茶の湯文化が根付き、加賀藩の支藩大聖寺藩主の命で茶葉の栽培が始まり、加賀市一帯(旧江沼郡、能美郡など)には60ha超の茶畑が広がっていたそうです。しかし、庶民が普段飲めるのはほうじ茶で、今でも石川県では伝統的にほうじ茶の消費量が多いそうですが、中でも、茎茶を焙じた「棒茶」は金沢が発祥の地。それまでは捨てていた茎の部分を使ったので原材料はタダ同然だったことから、安さを売りにした庶民の茶として1902年(明治35年)頃に開発された金沢の「棒茶」は、1983年(昭和58年)に昭和天皇に献上されることで「献上加賀棒茶」というブランド化に成功。今や認証基準も定められ、「石川県ふるさと食品認証食品」として登録されています。

 

 そんな「棒茶」、カテキンの含有が多く胃にも優しいということで、これをうどんに練り込んだのが「棒茶うどん」。見た目は蕎麦っぽいけれどもうどんです。かつおの香り豊かなおだしでおいしくつるつるといただけます。

 

 〆めは石川県産の米を炊いたごはんをお漬け物とお吸い物でいただきます。そのお吸い物の中に、妙なモノが。魚のすり身だんごのようですが、目玉とかがついてるぞ。これは、山代温泉のゆるキャラ「すぱクロ」くんです。725年(神亀2年)、高僧行基が霊峰白山へ修行に向かう途中、一羽のカラスが羽の傷を癒している水たまりを見つけたのが山代温泉のはじまりで、このカラスは、古事記や日本書紀にも登場する伝説の三本足の霊鳥「ヤタガラス(八咫烏)」。ヤタガラスと言えば「下町ロケット第4作ヤタガラス」、そんなことはどうでもよくて、だからヤタガラスが山代温泉のゆるキャラになったんだな。

 

 最初は向きがわからなかったんですが、長方形の白いのがある方が上(頭)。この白いのは、温泉に入って頭の上に載せているてぬぐいなんですね。で、真ん中の黄色いのが口(くちばし)です。「すばクロ」くんがお吸い物を温泉に見立てて、温泉に浸かってるっていう体でしょうか。

 

 デザートのプリンを食べて、夕食終了。完食。よくぞここまで食べましたって感じ。ごちそうさまでしたー。 

 

イメージ 15 ▲最後の「水物」は季節のデザート。