毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

【社説】津軽鉄道が漫画に登場

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 ▲金木駅に到着する津軽鉄道走れメロス号。

 もうみなさんご存じのことかもしれませんが、青森の地元紙「東奥日報」のウェブ版にこんな記事↓が載っていましたのでご紹介します。
                        津鉄沿線舞台の連載漫画スタート
                      
 
   五所川原市と中泊町を結ぶ津軽鉄道と沿線地域を舞台にした連載漫画が、17日発売予定の
  漫画雑誌「ビッグコミック増刊号」(小学館、年五回発刊)で始まる。

   題名は「ちゃぺ!津軽鉄道四季ものがたり」。十和田市出身の作家川上健一さんが原作、
  テレビドラマ化された「ビッグウイング」を手がけた人気漫画家の引野真二さんが作画を
  担当する。

   物語は、津軽中里駅前にある食堂「はるえ食堂」を切り盛りする「ばっちゃん」と二人
  暮らしの少女「ちゃぺ」と、津鉄にかかわる人々との温かい人間模様を描く。八話連続で
  掲載予定。

   漫画には、五所川原市中心街の市場・マルコーセンターや同市金木町の芦野公園など地元
  住民になじみ深い風景が随所に出てくる。津鉄の従業員や、車両内や駅で特産品を販売する
  津軽鉄道応援直売会の女性たちも登場するという。

   津鉄の漫画化は、小学館が六月に発売する県職員太田忠光さんの津鉄をテーマにした
  写真集の企画がきっかけ。写真集の出版を進めてきた母親向けの子育て雑誌「エデュー」の
  黒笹慈幾編集長が「メディアミックスできないか」とビッグコミックの編集部に持ち込んだ。

   津鉄は経営難の中、全国からレールオーナーを募るなど積極的な全国発信に奮闘中。
  澤田長二郎社長は「大手の雑誌社に取り上げられありがたい。津鉄だけでなく五所川原や
  中泊の宣伝になり観光面にも役に立つ」と発売を心待ちにしている。

                      (2007年5月8日(火)16:43付「Web東奥」より転載)


 青森県のJR五能線五所川原に隣接する津軽五所川原と津軽中里を結ぶ、冬はストーブ列車、夏は風鈴列車、秋は鈴虫列車で有名な津軽鉄道。
 最近は映画「銀河鉄道の夜」のロケも行われるなどますます全国の注目を集めている(たぶん)津軽鉄道がついに漫画にも登場することになったのだそうです。これをきっかけに、ますますたくさんの人が津軽鉄道に乗りに来てくれたらなと思います。

 残念ながら僕はこの雑誌を手に入れることができないので、もしごらんになったかたがいらっしゃったら感想などお聞かせいただけるとうれしいです。

 津軽鉄道、実は芦野公園から先、津軽中里までの区間にはまだ乗ったことがありません。ストーブ列車も津軽五所川原~金木間を一往復したことがあるだけです。津軽鉄道に乗るときはどうしても太宰治と斜陽館を訪ねたくなってしまうものですから…… 

 でも、近いうちにはきっと、津軽中里まで乗り通してみたいと思います。そして小泊を訪ねたいのです。
 
 太宰治の小説「津軽」でもっとも印象的なのは、やはり太宰の乳母であった「越野たけ」と小泊で再会するシーンではないでしょうか。何度読んでも涙が出ます。

 今年の芦野公園の桜はどうだったでしょうか。五所川原、金木、芦野公園、中里と、津軽鉄道でのんびりと津軽平野を旅してみたいですね。

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 ▲金木駅から五所川原方を望む。右にうすーく岩木山の稜線が見える。


 (太宰治「津軽」から。)

一番の八時の汽車で五所川原を立つて、津軽鉄道を北上し、金木を素通りして、津軽鉄道の終点の中里に九時に着いて、それから小泊行きのバスに乗つて約二時間。あすのお昼頃までには小泊へ着けるといふ見込みがついた。

 (中略)

 「修治だ。」私は笑つて帽子をとつた。
「あらあ。」それだけだつた。笑ひもしない。まじめな表情である。でも、すぐにその硬直の姿勢を崩して、さりげないやうな、へんに、あきらめたやうな弱い口調で、「さ、はひつて運動会を。」と言つて、たけの小屋に連れて行き、「ここさお坐りになりせえ。」とたけの傍に坐らせ、たけはそれきり何も言はず、きちんと正座してそのモンペの丸い膝にちやんと両手を置き、子供たちの走るのを熱心に見てゐる。けれども、私には何の不満もない。まるで、もう、安心してしまつてゐる。

 (中略)

 それから立ちどまつて、勢ひよく私のはうに向き直り、にはかに、堰を切つたみたいに能弁になつた。
「久し振りだなあ。はじめは、わからなかつた。金木の津島と、うちの子供は言つたが、まさかと思つた。まさか、来てくれるとは思はなかつた。小屋から出てお前の顔を見ても、わからなかつた。修治だ、と言はれて、あれ、と思つたら、それから、口がきけなくなつた。運動会も何も見えなくなつた。三十年ちかく、たけはお前に逢ひたくて、逢へるかな、逢へないかな、とそればかり考へて暮してゐたのを、こんなにちやんと大人になつて、たけを見たくて、はるばると小泊までたづねて来てくれたかと思ふと、ありがたいのだか、うれしいのだか、かなしいのだか、そんな事は、どうでもいいぢや、まあ、よく来たなあ、(以下略)


(写真は二枚とも2005年7月16日に撮影。)