毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

厳冬の中国最北端をゆく(その9;最北端の農家にて)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130720.jpg ▲最北端の村の農家のかまどにて。一所懸命ごはんを作ってくれてます。

 2007年1月6日、晩ごはん。

 ようやく中国最北端の駅に到着し、まだ午後6時半ですがもう真っ暗なので、ここでこのまま宿に入り、最北端の駅の余韻にひたりたいところですが、この日の日程はまだ終わりません。

 漠河県の駅には旅行社のガイドさんが車と一緒に迎えにきてくれていました。これからこの車に乗って、一気に中国最北端の村まで行ってしまうのです。
 街灯がほとんどなく暗い中を車で出発です。比較的明るい照明が点る木材集積場を過ぎると集落はすぐに途切れ、道の両脇は雪原か森林になって、ほとんど真っ暗です。この日は満月ではありませんでしたが、丸い月が煌々と輝き、雪原にその明かりを落としています。「冴え冴えと」あるいは「凛々と」という言葉はまさにこの日のこの月にこそふさわしい言葉だと思いました。

 2時間以上走ったでしょうか、車はようやく中国最北端の村に入りました。もう時間は夜10時にならんとしています。実は夕食がまだなので、ガイドさんが食事のできるところを探してくれますが、こんな時間にやっている店などありません。そこで、ガイドさんや運転手さんの知り合いの農家に頼み込んで、急遽夕食を作ってもらうことになりました。たいへん申し訳ない気持ちにもなりましたが、普通の農家の中に入ってそこで食事ができるというのはなかなかできない体験なので、実はうれしかったりします。

 そして連れて行かれた一軒の農家。入り口の扉を開けるとすぐそこは台所兼食堂です。入って右の壁に面して調理台があり、奥の壁に面してかまどがあります。かまどは低い位置にあり、燃料は薪です。隣室は茶の間兼寝室になっていて、寝台はオンドル式で、かまどの熱がパイプを伝って寝台の下に流れ、床暖房のようになります。入り口のすぐ脇には井戸水をくみ上げる手動ポンプがあって、室内で水がくめるようになっています。ポンプの隣にある大きな甕は中国東北地方の冬の味覚「酸菜(白菜を水につけて発酵させたもの)」の甕ですね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130705.jpg 中で薪が燃えるかまど。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130714.jpg 入り口脇には井戸水のポンプが。

 さて、調理開始です。使わないときは跳ね上げ式の木の蓋をしておけば台になり、その蓋を跳ね上げると現れる木の幹を切って作った大きなまな板で、ガイドさんも自ら包丁を振るってくれます。いきなり夜遅くに押しかけてきた日本人たちに、いったい何を作ってくれるのでしょう。

 おや、台所の棚に真っ茶色に錆びたモノを発見。なんだこりゃ?あっ、これはアイロンだ!なんと、火入れ式のアイロンです。炭火などを本体の中に入れてその熱でシワを伸ばすアイロンです。日本でこのようなものが使われていたのはいったい何十年前のことでしょうか。中国も都市部ではもうとっくに使われてはいないでしょう。それがこの最北端の村では健在だったのです!

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130727.jpg 今も現役の火入れアイロン。

 さて、農家のおばさんとガイドさんが腕をふるってくれたおかげで、料理ができあがりました。時間はもう夜11時になろうとしています。ホントにご迷惑をおかけしました。
 できあがったものは4品。キクラゲと鶏肉を炒めて煮込んだもの、「酸菜」に豚肉やはるさめを加えてさっと炒めたもの、タマネギを加えた卵焼き、そして黒龍江で取れた小魚の唐揚げです。これらをおかずに白いごはんをいただきます。見た目はどうにも荒っぽいですが、農家でいただく「農家菜(のんじぁーつぁい;農家料理)」はおいしかったですよ(^^)。

 ようやく食事を終えて、まもなく日付も変わろうとしています。「中国最北端の宿」へ移動して、そこに泊まります。農家のご夫婦にお礼を言って外に出ると、激しい冷え込み。しかし空を見上げてみると、あっと声をあげてしまうぐらいすばらしい満天の星でした。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130710.jpg ガイドさんも自ら料理。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818130723.jpg ▲ようやくできました、晩ごはん。熱々の湯気が食欲をそそりました。