毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

魚のいない湖(Long Summer Vacation;その35)

f:id:mainichigaharu:20191002234610j:plain奥入瀬渓流と言えば「銚子大滝」。奥入瀬渓流本流にある唯一の滝です。

 

 2018年7月15日、16日、りんごキッチン。

 

 奥入瀬渓流散策から戻ってひと風呂浴びて、それから夕食です。

 

 今回宿泊した「星野リゾート奥入瀬渓流ホテル」の夕食は、青森のりんご魅力をまるごと味わう個性的なビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」が会場。「りんごの生産量日本一を誇る青森県は、りんごを楽しむ知恵も豊富。そんな青森ならではの文化を見て・聞いて・食べて、まるごと召し上がりください」というのがコンセプトです。

 

 なので、レストランの入り口からさっそくりんご三昧です。入り口の手前の受付の更に手前から続く長い廊下の一面には、ガラス越しにりんごがズラリ。これは「ウェルカムりんごセラー」というそうで、中には生のりんごが約1800個。なんと言っても色彩が美しく、ガラス越しでもりんごの香りが届きそうで、食欲増進作用バツグンかも。

 

f:id:mainichigaharu:20191002234950j:plain▲夕食会場「青森りんごキッチン」へ続く廊下には「ウェルカムりんごセラー」が。

 

f:id:mainichigaharu:20191002234945j:plainワインセラーのワインのごとく、約1800個の生のりんごが並べられてるんです。

 

 青森生まれ青森育ちの僕が見ると、りんごがこれだけずらりと並んでいても別にどうとも感じないのですが(笑)、県外からのお客様、特にりんごの産地ではないところかのお客様は、うれしいでしょうねー、これだけまとまった数のりんごを見ると。

 

 レストランの中は木材を多用した暖かい造り。お料理コーナーも広くて、りんごを使った青森ならではの料理も多く準備され、オープンキッチンでも様々な料理が作りたてで提供されています。

 

 青森自慢はお料理だけではありません。お料理コーナーにずらりと並ぶお料理を照らす照明の一つには、「輪切りのりんご」をモチーフにした、「BUNACO(ブナコ)」という日本一の蓄積量を誇る青森県のブナを使って丁寧に手づくりした木工品が使われています。インテリアからも青森のりんごの魅力が楽しめる「青森りんごキッチン」でおなかいっぱいいただきます!

 

f:id:mainichigaharu:20191002234954j:plain▲ビュフェコーナーには「輪切りのりんご」をモチーフにしたブナ材を使った照明が。

 

 食後は、奥入瀬渓流のせせらぎの音と吹き渡る夜風を楽しみながら温泉に浸かったり、ラウンジ「河神」で行われる「森の学校」で奥入瀬渓流十和田湖についての紹介講義に耳を傾けたり、などなど、広い館内で思い思いに過ごせます。

 

 さて、明けて翌日は、前日の奥入瀬渓流散策では雲井の滝までしか行けなかったので、レンタカーでズルをして、一気に銚子大滝まで行ってみます。銚子大滝には道路脇にちょっとした駐車場があるので、車で行っても下車してゆっくり見ることができるんです。

 

 奥入瀬渓流散策と言うとき、だいたいみなさん歩いているのは石ヶ戸から銚子大滝までの約8.3kmで、銚子大滝まで到達するとゴールした!という気分になりますね。銚子大滝から更に子ノ口までの1.6kmを歩けと言われるとちょっと(笑)。そんな奥入瀬渓流散策のゴールでもありスタートにもなる目印的存在なのが、銚子大滝。奥入瀬渓流本流にある唯一の滝です。でも、どうして「銚子」っていうんだろう?  

 

f:id:mainichigaharu:20191002234604j:plain▲石ヶ戸から歩き始めるとき思い描くゴールは、この「銚子大滝」。

 

 銚子大滝は、高さ7m、幅20m。確かに、奥入瀬渓流では他にはここほど高低差がある場所はないので、石ヶ戸から8km以上歩いてここにたどり着いたときに目の前に現れる銚子大滝の高らかな水音と激しい水しぶきに、それまでの疲れをすっかり忘れてしまえます。この日は曇り空だったので、写真も暗めに写ってますが、もしからりと晴れ上がっていたら、新緑を縫って降り注ぐ木漏れ日に水霧がきらめいていたことでしょう。

 

 滝となって落ちた水は、そのまままっすぐ流れるのではなく、滝壺から左方向へほぼ直角に向きを変えて流れていきます。だからこそ滝の姿を正面から近づいて見ることができるわけです。奥入瀬渓流にはこの銚子大滝による高低差があるせいで、十和田湖へと魚が遡上することができないため、またの名を「魚止の滝」とも呼ばれています。十和田湖は火山火口にできたカルデラ湖なので、もともとは魚は棲んでおらず、「魚止の滝」があるために河川からの遡上もできなかったので、十和田湖には長いあいだ、魚はいませんでした。19世紀末頃以降、魚類の人為放流が行われるようになり、その中で定着し近年になってブランド化されたのがヒメマスです。刺身、ルイベ、塩焼き、ムニエルなど、淡水魚なのに脂ののった「十和田湖ひめます」、おいしいですよ~。

 

f:id:mainichigaharu:20191002234615j:plain▲銚子大滝を落ちた水は、滝壺から直角に左方向へ向かって流れていきます。

 

 せっかくなので、銚子大滝から残りの1.6kmを車で走り、十和田湖畔まで行ってみました。十和田火山の噴火で形成された二重カルデラ湖で、面積は61.11k㎡で全国第12位、水深は326.8mで、田沢湖支笏湖に次いで全国第3位です。透明度は9.0mで全国第5位。いろいろと全国の最上位に食い込む十和田湖ですが、青森県十和田市に属しているのは東半分だけで、西半分は秋田県鹿角郡小坂町に属しているので、十和田湖の全部が全部青森自慢というわけにはいかないのが歯がゆいところ。

 

 子ノ口からは休屋との間で遊覧船が運航されていますが、この日はまだ時間も早いせいか、十和田湖畔には人影は少なく、とても静かでした。子ノ口桟橋に立って見ると、正面には、十和田湖の南辺から北へ出っ張っている二つの半島のうち東側の御倉半島が遠望できました。

 

f:id:mainichigaharu:20191002234620j:plain十和田湖畔、子ノ口桟橋から奥に見えるのは御倉半島。