毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

かやの三杯茶(Long Summer Vacation;その33)

f:id:mainichigaharu:20190930220721j:plain▲睡蓮沼越しに見る、右は高田大岳、左は小岳。

 

 2018年7月15日、奥入瀬渓流ホテルへ。

 

 富山での用事が済み、富山07:10発のANA312便で東京羽田着08:15、09:55発のJAL143便に乗り継いで、青森には11:00到着で戻ってきました。

 

 青森空港からは、レンタカーを借りて、八甲田を越えます。空港内のレストランで軽くランチを食べ、それから出発です。

 

 空港から下ってきて、国道103号線、市街地の通称「観光通り」から通称「八甲田・十和田ゴールドライン」へ南下していきます。横内の集落を過ぎれば人家は激減して山道へ入り、青森公立大学前あたりまで来るともはや山の中。ここのキャンパスは学習・研究環境はばつぐんによいですね。おいそれとは繁華街へ下りても行けないし。

 

 雲谷スキー場脇を通り過ぎて少し行くと、萱野高原に着くので、ここで小休憩しよう。 

 

f:id:mainichigaharu:20190930220706j:plain▲萱野高原と言えば「かやの茶屋」。こちらは酸ヶ湯温泉直営のほう。

 

 萱野高原は、標高540mほどで、広々と草地が広がり、南には八甲田連峰が望めるということで、青森市内の小中学校は必ずここへ遠足やキャンプに来ます。僕も中学校のときにキャンプに来たけれど、夜になって雨が降り、悲惨だった思い出しかない。

 

 ここには、「長生きの茶屋」、「カヤ野茶屋」、「かやの茶屋」という茶屋(売店や食堂、トイレ施設がある休憩所)があって、「かやの茶屋」の方は酸ヶ湯温泉の直営店で、青森市内と十和田湖を結ぶJRバスのバス停もあります。

 

 これらの茶屋では、萱野高原名物として「かやの三杯茶」を無料で提供しています。「1杯飲むと3年長生きし、2杯飲むと6年、3杯飲むと死ぬまで生きる」と言われる「三杯茶」ですが、「かやの茶屋」では、たぶん八甲田の湧き水なのだろうと思われる水が飲める店舗前の広場に水飲み場に大きなお釜が据え付けてあって、温かい「三杯茶」がたっぷり入っています。7月半ばとは言え、このあたりまで来るとだいぶ涼しいので、温かいお茶が飲めるのはありがたいです。なお、飲むなら2杯までがオススメです(笑)。

 

f:id:mainichigaharu:20190917225144j:plain▲JRバスの停留所もある「かやの茶屋」前にある水飲み場。手前にお釜がありますね。

 

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▲お釜の中には温かい「かやの三杯茶」。無料ですが飲むなら2杯までがオススメ。

 

 さて、寿命が少し延長されたところで、萱野高原を出発。

 

 八甲田ロープウェー山麓駅、城ヶ倉温泉を過ぎて萱野高原から10kmほど走ると、酸ヶ湯温泉に到達。濃い白濁したお湯が涌き、「ヒバ千人風呂」で有名な酸ヶ湯温泉旅館があります。湯治客も多く、八甲田登山口もあるので、いつもにぎわっています。江戸時代前期の1684年(貞享元年)の開湯だと伝承されていて、すごい山奥にもかかわらず古くから湯治場として訪れる者が多かったとのことですが、400年も前に、湯治客がここまで来られる道ができていたとはちょっと信じられない。湯治客がよく来るようになったのはもっと時代が下ってからではないでしょうか。

 

 酸ヶ湯の湯に浸かりたいのはやまやまですが素通りしまして、硫黄臭を伴う噴気が立ち上る斜面も見える地獄沼を左に見ながら更に進み、国道103号線の最高地点、標高1,040mの傘松峠を越えて、JRバスの停留所もある睡蓮沼で小休憩。

 

 睡蓮沼は、7月上中旬に、スイレンの一種エゾヒツジグサが見られることから付けられた名前。6月上旬はミズバショウが一面に咲き乱れ、10月には八甲田の山々を背景にすばらしい紅葉が見られるスポットです。吹き抜ける風がとにかく気持ちよくて、ほにゃーっと気が抜けてしまいそうになりました。

 

f:id:mainichigaharu:20190930220725j:plain▲睡蓮沼越しに見る、左は石倉岳、右は硫黄岳。

 

f:id:mainichigaharu:20190930220729j:plain▲睡蓮沼越しに見えるのは、大岳に次いで標高が高い、1,552mの高田大岳。

 

 傘松峠を越えたので、あとは下り道。走っているだけで森林浴になりそうな、マイナスイオンたちこめる(たぶんね)国道103号線を更に進むと、青森県内で僕の好きな温泉ランキング第1位と言ってよい蔦温泉旅館のあるブナの原始林を通り抜けます。ちらっとですが蔦沼も望めます。そして焼山集落に至り、国道102号線との合流箇所で奥入瀬川にかかる橋を渡ると、この日泊まる「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」に到着です。

 

 「奥入瀬渓流ホテル」は1991年の開業ですが、2005年に星野リゾートの傘下に入って、リニューアルされて現在は星野色が濃厚に前面に出ています。チェックインして部屋に荷物を置いたら、まずはラウンジ「河神」でいっぷくします。広くて天井が高いホールのような空間の真ん中には、天井から(なのか、天井へ向かって、なのか)巨大なオブジェが吊り下がっています、あるいは天井に突き刺さっています。このオブジェが、高さ10m、重さ7トンのアルミ合金製の立体彫刻、題して「河神」でして、なんと、岡本太郎氏の遺作なのだそうな。「うねりながら、わかれ、またあわさり、緩やかに、また激しく流れていく水。水の流れが岩にあたったしぶきが妖精になる様子を表した7体のニンフと、渓流を表したうねるようなラインの暖炉が特徴」だそうです。

 

 奥入瀬渓流に面した側は、壁一面が巨大なガラス張りになっていて、まるで映画のスクリーンのように、あるいは一張りの緞帳のように、ホテルを取り囲む豊かな緑が見えています。

 

 この立体彫刻を取り囲んで、あるいは巨大なガラス張りの側を向いて並べられた椅子では、コーヒーなど無料で提供されるドリンクを手に、宿泊客たちが思い思いに時間を過ごしています。なんとも優雅なひとときです。

 

f:id:mainichigaharu:20190930220733j:plain▲ラウンジ「河神」の中央には、岡本太郎作の巨大な立体彫刻が。

 

f:id:mainichigaharu:20190930220738j:plain▲ラウンジ「河神」の奥入瀬渓流側は映画のスクリーンのような巨大なガラス張り。

 

f:id:mainichigaharu:20190930220743j:plain▲こんな風景を目の前にしてスマホに目を落としているのはなんとももったいない。