毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

興城古城(ANA機内誌でも特集掲載!;その2)

イメージ 8 ▲まるで御殿のような興城駅の新駅舎。

 2017年6月10日、遠回り。

 最後尾の1号車の連結面に「18」と書かれたプレートもあるので、この列車は18両編成でしょうか。車内放送では編成の案内はしないし、中国の車両は長さが25mあるので、先頭まで行って確認して機関車の写真も撮りたいけれど、450mも歩いて往復してる時間もないし、確認はできておりません。

 1号車の車番は「硬座車 YZ 25G 356732」。25系客車は、1979年に登場して以来、今に至るもひたすら造られ続けているロングセラー車。25/25A/25B/25C/25G/25K/25T/25Zと様々な形式が生まれていて、25G型もその一つ。1995年から量産が始まった空調付き車両で、YZは「Ying Zuo」つまり「硬座車」の印で、日本的に言えば「普通座席車」でしょうか。定員は118人。

イメージ 1 ▲遼陽駅では、隣接する高速鉄道用ホームに高速鉄道列車が到着。

イメージ 2 ▲後方には、ディーゼル機関車の主力「東風4D」型機関車も。

 1号車の「硬座車」に満員の乗客を乗せて、西安行きK2048次列車は、瀋陽北駅を定刻8時ちょうどに発車しました。

 次の停車駅は、旧「奉天駅」の瀋陽駅。ひとつ隣の駅で、08:07到着ですが、さっそく10分停車。08:17に発車して、次の停車駅は、瀋陽駅から64kmの遼陽駅。隣接して高速鉄道用ホームもあり、どこ行きかわかりませんが、ちょうど高速鉄道列車「和諧号」(中国高速鉄道CRH5型車両)が入ってきました。在来線側の後方には、ディーゼル機関車の主力「東風4D」型機関車も見えます。機番は「DF4D0391」。マルーンとクリーム色のツートンカラーは旅客列車用です。

イメージ 3 ▲遼陽駅の高速鉄道用ホームを眺めながら、遼陽駅を発車します。

 次の停車駅は、遼陽駅から25km走って、鞍山駅。

 鞍山駅、こりゃまた古いですね~。昔ながらの低いホーム、そしてホームの屋根、それを支える橋、そしてなんといっても跨線橋の年季の入りようと言ったらスゴイですよ。

 それもそのはず。高速鉄道は遼陽駅からの途中で分かれて別線になり、鞍山市内には鞍山西駅という新駅ができているので、今もこの鞍山駅は在来線列車しか通らないのですが、開業したのは1918年11月20日、「満鉄」奉天鉄道事務所管轄の駅としてで、駅舎などは何度か改修を経ていますが、ホームには1930年代に建設、補修が行われたときのものがまだ残っているそうです。満鉄は、1918年に鉄道付属地内に鞍山製鉄所を設立したので、その関係でこの駅を建てたというのが最初なのかもしれません。鞍山製鉄所は、1933年には昭和製鋼所と名前を変え、八幡製鉄所に次ぐ生産量を誇るに至ったそうです。この古いホームと跨線橋を見ていると、当時の製鉄業に湧く活気溢れる鞍山の様子が目に浮かんでくるようです。

イメージ 4 ▲鞍山駅のなんとも古びたホームと跨線橋。なにしろ1918年開業ですから。

 ところでちょっと待った。興城は瀋陽から見て西の方なのに、この列車は瀋陽北駅を出発してから、ずっと南へ南へと走っているではないか。これはどういうこと?

 ふつう、瀋陽から興城へは、北京へ向かう「京哈線」(現在は在来線部分は「瀋山線」といいますが。)を西へ向かうはずですが、このK2048次列車の経路は、かなりの迂回道。瀋陽を出ると、まずは大連へ向かう「瀋大線」で南下し、海城駅で「溝海線」に入って進行方向を北西に転じ、溝帮子駅で「京哈線」に合流するという大回りルートを走るのです。

 K2048次列車は、西安までの2,166kmの間に始発の瀋陽北駅と終点の西安駅を除いて、25の駅に停車しますが、そのうち10駅が遼寧省内の駅。いかにこの列車が、長距離列車ながら、遼寧省内のこまめな輸送を重視した列車かがわかります。実際、列車の行き先が西安だけに、長距離利用の乗客ばかりと思っていたのですが、実際に乗ってみると、ひと駅ごとにたくさんの乗客が入れ替わることに気づきました。短距離利用客が意外にも多いのです。たまたま向かいの席に座った青年に、どうして高速鉄道を使わないのかと聞いてみたところ、「やっぱりこっちの方が安いから。週末ごとに大学の寮から実家に帰るので、けっこう回数も乗るし」とのことでした。緑色の客車列車「緑皮車」、まだまだ十分活躍してるじゃないか!

イメージ 6 ▲というわけで、興城駅に到着したので、しかたなく下車。

 そんなわけで、鞍山駅の次の停まった海城駅を出ると、右に大きくカーブを描いて、「溝海線」に入っていきます。

 この「溝海線」に入ってからが時間がかかった。「溝海線」は101.7kmの全線が単線電化なのですが、「京哈線」に合流する溝帮子駅までの間には「盤錦駅」にしか停車しないのに、単線のせいなのかやたらと運転停車が多く、どんどん遅れが広がっているような気になりました。しかし、盤錦、溝帮子、錦州、葫蘆島と停まって、興城駅に到着したときには遅れは10分ほどだったので、「溝海線」内の運転停車は織り込み済みのものだったのですね。

 興城駅に降り立ったのは、約11年半ぶり。興城駅は高速鉄道が通っているわけではないですが、ホームは、日本の駅のホームと同じようにごく最近かさ上げされたようで、真新しい感じがします。走り去るK2048次列車を見送って外に出てみると、こりゃまた御殿のような巨大な駅舎に建て替えられていて、びっくり。11年半前の面影は微塵も感じられません(11年半前の様子はコチラ。)。

 それはともかく、瀋陽北駅から371km、所要5時間51分、表定速度63.4km/hの客車列車の旅、久しぶりに楽しかったです!

イメージ 5 ▲興城駅のかさ上げされたばかりのホーム。塗装したての車体は濃緑に黄色帯がくっきり


イメージ 7 ▲走り去るK2048次列車。終点西安まではあと残り約25時間。