毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

林先生、ご存じでした。(旅するニッポン、春たけなわ;その27)

イメージ 2 ▲国の重要文化財に指定されている駅舎の一つ、旧国鉄大社線の大社駅。

 2016年4月4日、初耳学。

 今回の松江出雲旅行の最後は、1990年に廃止されたJR大社線の終点・大社駅址。神門通りを一畑電車出雲大社前駅を通り過ぎて更にずんずん南に歩いて行くと、1912年(明治45年)開業、1924年(大正13年)に改築された大社駅の駅舎の前に出ます。出雲大社の門前町にふさわしい純日本風の木造平屋建て、和風趣向の際立つ駅舎は、まるで今も列車が発着しているような趣でそこに残っています。

イメージ 1 ▲2004年に国の重要文化財に指定されたこともあり、よく手入れされていますね。
 
 高く設計された天井からは大正風の灯籠型の和風シャンデリアが玄関を含めて30個備え付けてあり、待合室は正面向かって右手が二等待合室、中央の大きな三等待合室と二つあり、昭和初期までは分けて使用されていたそうです。

 改札口の上には発車時刻表がそのままに残っています。1990年3月31日廃止時点の時刻表でしょう。出雲市行きの普通列車が15本走るだけだったのでしたが、それより以前は、急行「大社」や急行「だいせん」といった優等列車が大阪や名古屋から直接乗り入れていた時代もあり、出雲大社参拝客でさぞや賑わいを見せていたことでしょう。

イメージ 3 ▲「観光案内所」と掲げてある所がかつての出札口。奥はかつての二等待合室。

イメージ 4 ▲駅舎に入って左はきっぷ売場。今でも駅員さんが出て来そう。

イメージ 5 ▲以前はどこの駅にもあったよね、この字体の運賃料金表。なつかしいな。

イメージ 6 ▲今もそのまま残る廃止当時の発車時刻表。

イメージ 8 ▲局番ひと桁。列車が着く度に旅館の番頭さんが店の旗持って迎えに来てたんだろうな。

 ところで、前日、松江市内に宿泊した日、たまたまテレビでTBS系の「林先生が驚く初耳学」を見ていたら、これに偶然たまたま大社駅が登場したのです。

 国の重要文化財に指定されている駅舎が全国には三つあり、それは赤レンガの東京駅、ネオ・ルネッサンス調の木造建築の門司港駅、そしてここ大社線の大社駅。東京駅と門司港駅が洋風建築である一方、大社駅は純和風の木造駅舎です。

 さあ、林先生に「初耳」か「知ってた」かを問う問題は、大社駅はそんな純和風の駅舎だが西洋建築の技術で支えられている、という事実。それはどんな技術なのか、次の写真を見て考えてみよう!(笑)

イメージ 7 ▲さあ、林先生は「初耳」か、「知ってた」か??

 そんな番組を偶然たまたま前夜に見てしまったものだから、いや、これもご縁なんでしょうかね、おかげで今回の大社駅見学が数倍おもしろいものになりました。

 林先生の答えは、「知ってた」。上の写真でも3枚目の写真でもわかることは、和風建築では必ずあるはずの梁や柱がないということです。この日の朝に立ち寄った安来駅の駅舎の木造軸組工法を用いた小屋組構造が複雑に入り組んだ梁と柱でできていたことすると、すごく対照的です。

 大勢の乗降客が出入りする駅コンコースということで、できる限り広くスペースを確保したい、しかし、和風建築に頼れば屋根を支えるために梁や柱ができてしまう。そこで、設計者である当時の神戸鉄道管理局の技手・丹羽三雄さんが自分で考え出したものなのかどうか、西洋建築の技術を取り入れることを思いついた。三角形の骨組みを多用して力を分散させる「トラス構造」を採用することを思いついたのです!この高い天井の天井板(ベニヤ板らしい)の上には無数の三角形の骨組みが連なっており、上からかかる力をうまく建物周囲の柱と壁に分散させて、他の空間には柱を立てなくてもよい構造になっているのだそうです。

 スゴイ!それを知っていた林先生もスゴイが、90年も前に純和風駅舎を建てようとしながらこっそり西洋建築技術をばっちり取り込んでいた当時のものつくり師の人たちもスゴイ。ますます素晴らしい駅舎に見えてきたですよ!

イメージ 9 ▲駅舎のホーム側。駅名標、「駅長事務室」、転轍機、今すぐにでも列車が到着しそう。

イメージ 10 ▲急行「だいせん5号」の20系客車に乗って大阪からここへ到着してみたかった。

 大社駅は、2面3線のホームを今も保ち、線路も残っているので、ホームの方に出てみるとなおさら、今にも列車が到着するのではないかという錯覚に陥ります。それぐらい、今すぐにも使えそうなほどしっかりと、大社駅は残っているのです。歴史に「もし」はありませんが、大社線をもっと長く存続させられていたら、日本全国で三つしかない国の重文指定の駅舎がここにあり、パワースポットとして人気が高まり、「大遷宮」も行われた出雲大社の集客力で、大社線の再興はあり得たのではないかと、そう思わずにはいられないのです。

イメージ 11 ▲2/3番線ホームから眺めた駅舎。今にも列車が到着しそうです。