毎日ヶ原新聞

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松山でいただく京料理(紅葉まだき初秋のニッポン旅;その19)

イメージ 1 ▲愛媛「国際ホテル松山」の「吉長」でいただく夕食の始めは先付の「鰻白焼き」。

 2015年9月23日、秋茄子が。

 松山空港から空港リムジンバスに乗って市内に入り、ホテルにチェックインする頃には、どんよりと曇った空から雨が落ち始めました。ホテルで、長年たいへんお世話になっている我が師匠と再会し、雨の中、師匠の案内で松山市内の温泉施設でまずはゆるりと温泉に浸かりました。

 すっかり脂が抜けてふにゃふにゃになって温泉を出ると、テレビでは折しも「ミュージックステーション」の「30年目突入!史上初の10時間SP MUSIC STATION ウルトラFES」を放送中。風呂上がりの冷えた生ビールを飲みながら、再結成したレベッカの「フレンズ」を聴いて涙しました。

 しかし外は雨止まず。師匠の案内でタクシーに乗り、「国際ホテル松山」へ行って、夕食会の始まりです。

イメージ 2 ▲いきなり好物が出てきて感涙。蒸さずに焼くのが西日本風。少しぱりっとした食感。

 松山へおじゃますると師匠が時々(たまに?)連れて行ってくれるのが、「国際ホテル松山」内にある料亭のような和食レストラン「吉長」。今回もここの料理長、松下仁士さんにお世話になります。

 「吉長」は、基本的に個室メインで、入口から靴を脱いで上がり、畳敷きの通路を進んで、それぞれの部屋に通されます。それだけでも慣れない高級感に震えてしまいそうなのに、次から次に出てくるお料理はおいしくて、いや、師匠、いつもどうもありがとうございます!!

 この日のお品書きは、まず先付は「鰻白焼き」。関西風なので蒸さずに焼いたシンプルな白焼きにワサビとたっぷりの刻み海苔を添えていただくと、それはもう上品なおいしさに、最初からこんなんいただいていいんですかって感じ。

 続いて吸物は、秋になってきましたので「土瓶蒸し」。何焼きだか知らないのが悔しいけれど、この土瓶がそもそも素敵な器。中で蒸されているのは松茸やらなんやらかんやら具だくさんで、大満足。

イメージ 3 ▲二番目に登場したのは土瓶蒸し。素敵な器です。

イメージ 4 ▲具だくさんで食べ応え十分ですが、これらが渾然一体となって蒸された汁はこの上なく美味。

 お造りは「ハギ薄造り トロ」。大皿の中央に、見るからに脂がのったトロの刺身が並び、それを取り囲むように、ハギの薄造りがぐるり。中央には湯引きした皮も肝あるし、このあたりではよく使われるかぼすの汁をしぼって、さっぱりといただけます。肝を醤油に溶かしてねっとりとした味わいを楽しむこともできます。北日本ではハギを刺身で食べることはほとんどないので、珍しい味を堪能できます。

イメージ 5 ▲お造りはハギの薄造りとトロ。トロもいい色してますなあ。

イメージ 6 ▲薬味もたっぷり。かぼすでさっぱりと、肝醤油でねっとりと。

 続いて煮物は「伊佐木煮付」。イサキは東日本では塩焼きというイメージですが、西日本へ来ると煮付けにすることも少なくなく、身離れがよく硬く締まりすぎないので美味しいとされています。豆腐にネギ、山椒を添えて、京風にあっさりと炊きあげたイサキは、身がほろりととれつつも決して硬くなりすぎず、日本じゃないと出せない味をじっくり味わうことができました。

イメージ 7 ▲東日本だと塩焼きにしがちなイサキをこの日は煮付けでいただきます。

イメージ 8 ▲脂っこい魚ではないので、身が締まっていますが、硬くはなく、僕好み。

 焼き物は「和牛ロースステーキ」。伊予牛とか愛媛産の牛肉かどうかはわかりませんが、とろりとした脂に包み込まれて軽く焼かれたステーキは、まさにとろけるような味わい。白髭ネギなどの薬味もたっぷり載っていて、ニンニクのすりおろしがよく効いたソースがけっこうたくさんかかっていて、薬味とソースをよく絡めて食べると、これまたうまし。ステーキもこういうふうに調理されると、和食なんだなーって思います。

イメージ 9 ▲焼き物は「和牛ロースステーキ」。

イメージ 11 ▲白髭ネギなどの薬味もたっぷり。ソースもたっぷり。

イメージ 10 ▲ほどよい脂にとろりと包まれた感じの焼き上がり。

 次の揚げ物はうっかり写真を撮り忘れてしまったのですが、「秋刀魚大葉揚げ」。秋の旬としてはずせないサンマを大葉とともに香り高くさっぱりと揚げた一品。

 そして主食は「鮎そうめん」。わー、こんなの食べたことないぞ。そうめんの上に、鮎の半身が載っていて、なんとまあぜいたくな。西日本のうどん系にしてはつゆの色が濃いようにも見えますが、だからと言って味がしょっぱすぎるということはなく、おだしが効いたつゆと鮎の香りが混ざり合って、たいへん上品なお味。するりと胃の中に収まりました。

イメージ 12 ▲初めていただきました、鮎そうめん。

イメージ 13 ▲だしの効いた見た目は濃いめのゆつと鮎の香りが上品にコラボします。

 そしてデザート。これが一風変わっていまして、「秋茄子のアイスクリーム」。ナスを使ったアイスクリームなんて、食べたことない!ぱっと見た感じは、レモンシャーベットのような外観。食感は、ナス入れてあるだけに、シャーベットのようなシャクシャクにはもちろんならず、アイスクリームなのになんとなくほっくりした感じ。ほんのりとナスの味わいがあるようなないような(笑)。この季節ならではの和食の工夫に驚いた一品で、これですっかりおなかいっぱいになりました。師匠、ごちそうさまでした!

イメージ 14 ▲オドロキのデザート「秋茄子のアイスクリーム」。