厳冬の青森へ雪かき帰省(その7;蔦沼雪中行軍)
▲夏は緑、秋は赤の蔦沼が、厳冬には真っ白に。
2012年1月29日、蔦沼への雪道。
蔦温泉旅館で迎えた朝、朝食前にも朝風呂を浴びましたが、朝食後もひとっ風呂。ぜいたくであります。
本館から西館へ行くために通る渡り廊下のようなところの手前の本館側には、陶器の工房と薪ストーブを焚いた休憩室があり、自宅にも薪ストーブを設置している富山から来た一家はそちらのほうを見物するというので、二度目の朝風呂は僕が一人で入りました。最高に気持ちいいです。
すっかり脂が抜けて風呂から上がり、本館の玄関口まで戻って来ると、富山一家がなにやら外出の支度をしている。聞けば、冬でも蔦沼まで行けると聞いたので行ってみることにしたとのこと。へえ~、雪が降ったら終わりと思っていたのに、冬でも蔦沼へ行けるとは初めて知った!旅館が長靴やかんじき、長靴カバーなどを無料で貸し出してくれるので、それを装着すれば雪道でも行けるというのです。それならば行ってみないわけにはいきません。僕も急いで長靴に履き替え、宿の人によれば蔦沼までならかんじきなしでもだいじょうぶだということなので、そのまま出発!
ブナの原生林が続く。
地面はかなりの積雪。
この道を初めて歩いたのは2005年の7月。新緑が深緑へとその緑の濃さを増しつつある頃でした。2回目は翌2006年11月の末で、落ち葉を踏みしめながらの散策でした。(それぞれの様子は「2005年7月の蔦沼」「2006年11月の蔦沼」をごらんください。)
その同じ道を歩いているのですが、真冬のブナの原生林はまったく印象が違います。どこまでも純白が続き、足元の雪はどこまでもやわらかです。傍らを流れる小川は凍っておらず、純白の中にその黒い流れを覗かせています。
傍らを小川流れる。
友人一家が雪中行軍。
凍らない黒い流れ。
20分も歩いたでしょうか。確かに蔦沼までは人一人が通れるぐらいの幅で雪が多少踏み固められていて、かんじきがなくても特に苦はなく歩けそうになっていました。
そして蔦沼に到達。初めて見る真冬の蔦沼が目の前に広がりました。
山水画そのものか。
ブナ原生林の連なり。
水面はほぼ氷結。
厳冬の蔦沼は、荘厳なまでの美しさをたたえて、そこにありました。その美しさに、言葉を忘れてただ呆然と息を呑み立ち尽くすのみです。春から夏にかけては緑に萌え、秋には真っ赤に色づく蔦沼一帯の風景が、すべて白と黒だけの姿になっているのは凛々しささえ感じます。
蔦沼の水面はほぼ全面が凍結しています。中央部はそれなりに厚く凍っているのか、その上に雪が積もって真っ白です。岸に近い方はシャーベット状程度なのか、水面が透けて見えます。
雪が激しくなってきました。対岸のブナの山が雪で掻き消えそうになります。我々も引き返すとしましょう。蔦沼から鏡沼、月沼、長沼方面へ向かう「沼めぐりの小路」も蔦沼までほどではないけれど人の歩いたあとがあったので、やろうと思えば真冬でも「沼めぐりの小路」を一周することもできるのでしょう。宿の人は、最近一周した人がいたと言ってました。まあ我々のような山歩きの素人には蔦沼までがせいぜいでしょう。もとの道を宿まで戻り、出発の支度を調えます。
▲雪が激しくなり、対岸が雪で掻き消えそうになる蔦沼。