毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

Lennusadam 屋内展示室(Long Summer Vacation;その69)

f:id:mainichigaharu:20200209230623j:plain▲ドーム型の屋根がいくつも組み合わされた屋内展示室。左は潜水艦「Lembit」。

 2018年7月28日、水底のような。


 「エストニア海洋博物館」は、エストニアの海洋文化に関する物品を収集・保存・展示し、海洋史を含む海洋文化を学べるようにすることを目指し、「太っちょマルガレータ」の塔を改装して1981年にオープンしました。その後、2012年には、この格納庫が「エストニア海洋博物館」の別館のような形でオープンし、今やエストニア最大の、かつ最も人気のある博物館として多くの来観者でにぎわっています。


 バス通りに面した側の入口から入るとチケット売り場があり、大人は15ユーロ(=約1,800円)なんですが、なんとタリン・カードを持っていると無料。タリン・カード持っててよかったといちばん思える施設の一つです(笑)。
 

f:id:mainichigaharu:20200209230618j:plain▲水上飛行機の格納庫だっただけあって、館内はあまりにも広いです。

 

 順路に従って入っていくと、メインの展示室内に架け渡されたブリッジのようなところに出るので、まずは展示室全体を見下ろしながらの見学になります。

 

 それにしてもこの展示室は、広い。反対側の果てが見えないくらい広いです。しかも、床面は暗めの青い照明が使われているので、海の底にいるような感じがしてきます。これこそLennusadamの海洋博物館たる演出なのでしょう。

 

 ブリッジを進んで行くと、ところどころブリッジと同じ高さに床を張って展示物が接地されていますが、軍事関係の展示物が多いですね。もともとここ一帯がわりとこないだまで軍事施設だったわけですから、それは当然と言えば当然でしょう。

 

 なので、海洋博物館ではありますが、戦車も展示されてます。対空機関砲2門を備えたこの戦車は、ソ連製の「ZSU-57-2 オブイェークト500(Ob'yekt;Объект)」です。第二次世界大戦後の50年代後半に製造された戦車で、口径57mmというのは実用化されている機関砲としては現在に至るまで最大口径で、それに見合った最大級の破壊力と射程を誇りますが、発射速度が低い、砲塔旋回速度が遅い、レーダーを持たないなど欠点が多く、5年ほどで製造が打ち切られたようです。ここで展示されているのも、ソ連軍が置いていったものなんでしょうね。 

 

f:id:mainichigaharu:20200209230628j:plain▲ソ連軍が置いていったと思われる対空戦車「ZSU-57-2 オブイェークト500」。

 

 元・水上飛行場らしい展示の目玉は、エストニア軍にも使われた第一次世界大戦中の英国の水上複座偵察爆撃機「ショート184(Bomber Float Plane "Short Type 184")」の実物大レプリカです。「単発、乗員2名、無線電信器装備、ホワイトヘッド14インチ魚雷を搭載できる水上機魚雷攻撃機」が今すぐほしいという英国海軍省の求めに応じ、英国の航空機メーカー「ショート・ブラザーズ(Short Brothers plc)」が設計・製造を手がけ、その試作機第184番機の仕様が正式採用されたので「ショート184」の名がつきました。「ショート184」は1915年8月12日、水上機母艦「ベン・マイ・クリー(HMS Ben-my-Chree)」から飛び立ち、ダーダネルス海峡の北でトルコの軍艦を空中投下型魚雷で攻撃。これが軍事史上初の艦載機による艦艇攻撃となり、「ショート184」は歴史に名をとどめることとなったのです。本物の「ショート184」の機体は世界中に1機も残っておらず、ここLennusadamに展示されているのが世界で唯一の実物大の模型だそうです。

 

f:id:mainichigaharu:20200209230632j:plain▲世界で唯一の水上複座偵察爆撃機「ショート184」の実物大レプリカ。

 

 展示室全体を見下ろしながらブリッジ沿いの展示を見て歩き、ひととおりブリッジを反対側まで歩いてしまうと、階段で展示室の床面へ下り、さっきまで上から見下ろしていた海の底のようなエリアの見学へと移ります。

 

 フロアには、実物大、というか本物のブイやフロート、海中推進装置などなどが所狭しと展示されていて、多くは標識としての役割を果たすために決められたよく目立つ塗装が施されているので、色とりどりです。本物かレプリカかわかりませんが実物大の黄色い潜水艇などもあり、実際に手で触れたり中に入ったりすることができます。

 

 また、大きなブイや、各種ボートなどは上から吊す形で展示されているので、ブリッジの上からは上側だけが見えていたのが、こうして下のフロアに下りてみると、底側を見上げて見学することもできておもしろいです。 

 

 そして、Lennusadamの展示室内最大の展示物と言えば、展示室のほぼ端から端までのスペースを使って現物がそのまま展示されている潜水艦「EML LEMBIT」です。これは次回の記事でじっくり見学したいと思います。

 

f:id:mainichigaharu:20200209230723j:plain▲下のフロアにはブイやらなんやらが所狭しと展示されてます。

 

f:id:mainichigaharu:20200209230719j:plain▲メイン展示室最大の展示物、潜水艦「EML LEMBIT」がまるでホントに航行中みたい。

 

f:id:mainichigaharu:20200209230715j:plain▲実物大の黄色い潜水艇もそのままに置かれています。