毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

レトロ客車ここにあり。(念願かなってセイロンティーの旅;その33)

イメージ 2 ▲ホテル「Heritance Tea Factory」の裏庭に鎮座するナロウゲージの鉄道客車。

 2017年4月24日、コロンボまで194km。

 周りの茶畑を眺めながらホテルの裏手にまわってみると、小さなマッチ箱のような鉄道の客車が一両置いてあるのが目に止まりました。

 近づいてみると、ホテルの建物から屋根付きの渡り廊下がこの客車までのびていて、ホテル内から直接この客車に乗り込めるようになっています。その渡り廊下には、「HETHERSETT RAILWAY STATION(ヘザーセット駅)」と書かれた大きな駅名標があり、その下には「RAILWAY CARRIAGE AT THE HIGHEST ELEVATION IN SRI LANKA, 6850ft ABOVE SEA LEVEL」と添え書きがされています。添え書きの方は「海抜6850フィート(=2,088m)の高さ、スリランカで最も高いところにある鉄道客車」という意味ですね。

イメージ 3 ▲「ヘザーセット駅」と書かれた大きな駅名標。

 ヌワラエリヤの茶葉プランテーション一帯は、鉄道の最寄り駅がメイン・ラインのナヌ・オヤ(Nanu Oya)駅で、ヌワラエリヤから6.4kmほど離れていたので、プランテーション主らからの強い要望を受けた当時の英国人総督が鉄道敷設に動き、1900年に工事が始まって、1904年までに、ナヌ・オヤからブラックプール(Blackpool)、ヌワラエリヤ(Nuwara Eliya)、カンダポーラ(Kandapola;このホテルがある村)、ブルックサイド(Brookside)という主な駅を経てラガラ(Ragala)までの全長31kmの鉄道線「ユーダプサラワ線(Uda Pussellawa Railway)」が開通したのです。この鉄道線は軌間762mmのナロウゲージで、全線の海抜最高地点はカンダポーラ駅の1,925m(6,316フィート)だったそうです。しかし、1940年代に入ると道路輸送の発達に伴って鉄道輸送の経営が苦しくなってきたため、1940年1月には旅客営業を廃止し、最終的には1948年8月2日、全線が廃止となってしまいました。

イメージ 4 ▲この駅名標が掛かる渡り廊下を通って、ホテルからこの客車に乗り込むようになってます。

 こんな歴史を持つユーダプサラワ鉄道で走っていたナロウゲージの客車「TCK6685」が、今はこうしてホテル「Heritance Tea Factory」の裏庭に置かれて、列車レストランとなっているのです!1日4組限定で、車内のコンパートメントで、車掌に扮したウエイターさんにサーブされながら、「あの頃のノスタルジックな追体験(“nostalgic simulation of yesteryears”)」ができるというわけです。

 (ネット情報では"the full-size replica of the actual train’s restaurant"としているものもあるので、かつて走っていた本物の客車ではないかもしれません。また、ドアに数字の「3」が描かれていることから「三等車の車両("the third class carriage" )」と紹介しているサイトもありますが、客車形式の「TCK」はかつてのイギリス鉄道における車両の種類の一つ「Trailer Composite Corridor」の略だと思われ、もしそうだとすると、1つの車両に等級の異なるコンパートメントが混在していた車両ということになるので、ドアに描かれた「3」は単なる号車番号である可能性もあります。なお、上述のとおり、当時のユーダプサラワ線の海抜最高地点は1,925mだったそうなので、今のこの「ヘザーセット駅」が海抜2,088mで、スリランカで最も高いところにある鉄道客車だと書かれているのは、この客車をレストランにするためにここに運んできた結果、今のスリランカで最も高いところにあるんだよという意味であり、このホテルの前に実際に鉄道が通っていたわけではないでしょう。)

イメージ 1 ▲とは言え、茶葉工場の裏手にこういうふうに列車がやってきていたとしても全然不思議ではないですね。

イメージ 8 ▲今度来たときはぜひ、この客車に乗り込んで、ノスタルジックなディナーを楽しみたいなあ。

 この列車レストランは1日4組限定ということで、我々もホテルの予約と同時にディナーの予約を入れようとしたのですが、既にいっぱいで、我々は客車「TCK6685」の中に入ることはできませんでした。これは次回のお楽しみにとっておこう。

 ホテル裏庭の散策から戻れば、もうチェックアウトの時間です。もっとゆっくり滞在したいのですが、この日のうちにコロンボまで戻り、友人たちと一緒に晩ごはんを食べて、それから空港へ行って日本へ帰る飛行機に乗らなければならないので、はっきり言って運転手さんにはそうとうムリをさせてしまうのですが、 ホテルを9時に出発し、ひたすらわき目もふらずにコロンボを目指します。ホテルの正面玄関前に並ぶスリランカ各地からの距離を示した石碑には、コロンボは194kmとあります。高速道路などはないので、さあ、いったい何時間かかるのでしょー?

イメージ 6 ▲ホテル1階のロビーフロア。そこのソファーでもっとゆっくりしたかった!

イメージ 5 ▲コロンボまでは、194km。

イメージ 7 ▲カンダポーラの村を眺めながら山道を下っていきます。それにしても良い天気!