端午節は台風4号とともに(その15;弘前で蕎麦を食す)
▲「大ざる」。海苔をかけずに供されるようになり、蕎麦の風味が更に引き立ちます。
2012年6月23日、創業大正2年。
弘前市の「旧第五十九銀行(青森銀行記念館)」のあたりで角を曲がって少し行くと、白い壁の屏に囲まれた古い日本家屋に行き着きます。ここは創業大正2年の蕎麦の老舗「高砂」さん。今回青森へやってきた友人たちが蕎麦好きで、事前の下調べでこのお蕎麦屋さんを知り、ぜひお昼をそこで食べたいという希望が出たのです。僕も行ったことはないのでもちろん賛成して、こうしてやってきたというわけです。
▲白壁の屏に囲まれた古風な一軒家は蕎麦の老舗「高砂」さん。
▲門をくぐると緑濃い庭があり、奥には蔵も。
▲さあ、いざ暖簾をくぐりましょう。
この日本家屋の一軒家は青森ひばをふんだんに使った高級感のある古風な造りをしていますが、現在の建物は昭和47年の弘前大学付属病院増築の際、やむなく移転せざるを得なくなり新築されたものだそうです。
暖簾をくぐって引き戸をがらりと開けて中に入ると、店内はかなり広く、テーブル席が並ぶフロアの奥には広い座敷もあって、収容人数はかなり多いようです。13時過ぎという時間帯でしたが、入れ替わり立ち替わり客が途絶えることがありません。
▲店内はテーブル席も座敷もたっぷりあって広いです。
我々4人は厨房口近くのテーブルに陣取って、まずは店内を見回します。壁には達筆な毛筆の崩し字で書かれた品書きが掛かっています。値段の付いた品書きはテーブルごとに置いてありますから、壁の品書きは一種の飾りでしょう。「かけ」とか「天ざる」とか、いったい何の字を崩したものなのかさっぱりわからん。風流でいいけど(^^)。
▲崩し字の達筆な品書き。「天とじ」もよく読めんなあ。
▲「高砂」さんは「全国新そば会」のメンバーです。
「高砂」さんは現在三代目。「神田やぶ」での修行経験を経て、先々代からの味と技術を受け継いでいるとのことですので、さあさっそくその蕎麦をいただいてみましょう。
僕は「大ざる」。シンプルがいちばん。蕎麦はかなり細めの二八蕎麦。薬味は刻みネギとワサビのみ。さっそくずるずるっとやってみると、ウマイ!!これだよコレ、これが蕎麦だよ、これがダシだよ、こりゃ感激だ。口に入った瞬間、つけ汁が少し甘いかと感じたのですが、食べ進むとその甘さは決してきついものではなく、むしろ心地よい甘さであったことに気づきます。そしてなんと言っても蕎麦の香りがいい。
▲かなり細めの二八蕎麦。歯ごたえ十分。
▲リフトアップ写真をうまく撮れるようになりたいです(笑)。
友人のうち一人は「天ざる」を注文。天ぷらはエビが2つと蕎麦の磯部揚げ2つで、からり、さくりと揚がって、見るからにおいしそう。
テーブル置きの品書きの裏に、「お客様各位」というお知らせが書いてありました。「永年に亘りざるそば(天ざる)には海苔をかけてお出しして参りましたが、四月中旬頃より海苔をかけるのをとりやめ、そば本来のあるべき姿に戻り、風味・食感・喉ごし等に重点と趣をおかせて頂く事と致しました云々」とあります。
なるほど。僕は家で蕎麦の乾麺を茹でて食べるときにたっぷり海苔をかけることがありますが、それはある意味安物の蕎麦を食べるときのごまかしなのね。蕎麦そのものの味を楽しむには海苔は要らんわね。刻みネギやワサビもデフォでは不必要で、食べ進んでから味を少し変えて楽しむのに使う程度がいいんでしょうな。
▲こちら「天ざる」。エビの衣は見るからにさっくさく。