毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

「鳥岩樓」の親子丼(X'mas in Guam;その5)

イメージ 3 ▲あまりにも鮮やかで美しい黄色を見せる「鳥岩樓」の親子丼。

 2017年12月22日、ランチをハシゴする。

 フレンチスタイルのパン屋さん「Le Petit Mec」で7種類もパンを食べて、大満足。おなかもそこそこいっぱい。

 しかし、香港人の友人は、次へ行こうという。次とは、どこなのか。

 「Le Petit Mec」を出て今出川通りを更に西へ数十メートル歩くと四つ辻があり、これを右に曲がって智恵光院道を北上し、最初の四つ辻を左に折れて五辻通を西へ進めば、左側に古い構えの店があり、その名は「西陣 鳥岩樓」。「Le Petit Mec」からはわずか300m弱。五辻通に面した建物の外観は、料亭といった感じ。

 「鳥岩樓」は、鳥を専門に扱っていた初代が明治末期に祇園で創業。昭和20年に西陣に移って、築100年超の京町家を改装して営業を再開した鳥料理専門店。当初は鶏のすき焼きがメインだったそうですが、やがてメインは水炊きとなり、今や西陣で鶏の水炊きと言えば「鳥岩樓」と言われる老舗だそうな。

イメージ 7 ▲京都西陣、五辻通りの築100年超の京町家に店を構える水炊きの老舗「鳥岩樓」。

イメージ 8 ▲こののれんは僕一人だったらくぐれないだろうな、たぶん。

 どうして香港人がこんなお店を知ってるんだろうとオドロキながらのれんをくぐる。入口の柱に「親子丼 十二時より十四時」と筆で書かれた板が掛かっているとおり、お昼のメニューは親子丼オンリーで、気軽に老舗の味が楽しめるというので、その親子丼が食べたいのだそうです。

 築100年超の木造民家の年季の入った廊下と階段をぎしぎしと進んで2階の座敷へ上がり、低い座卓を前にして座布団に着席。午後1時、まだまだランチタイムということで、どの卓にも客がついているという感じで、親子丼お目当ての客がひきもきりません。

イメージ 1 ▲老舗の水炊き屋が供する900円の親子丼の全体像がコレ。

 温かいお茶を飲みながら待つことしばし、卓の上には、飾り気のない真っ白なフタ付きのどんぶりと湯呑みのような器に入った薄く白濁したスープ、そしてたくあんが二きれが配膳されました。京都西陣の老舗の水炊き屋が作る親子丼、900円、いただきます。

 フタをとると、おーーーーー、いい色!とろりとした溶き卵の中からところどころ鶏肉が顔を出し、どんぶりのド真ん中には更にもう1個、生卵の黄身がのっかっていて、卵が二層状態。黄身の色はあくまで濃厚で、見ているだけでホレボレしてしまいます。他にはミツバが載るでもなく、いたってシンプル。山陰地方の地鶏を使い、鮮度が高い朝締めにしているそうで、これにわずかに粉山椒を振って食べるのがよろしいらしいです。

イメージ 2 ▲どんぶりのフタをとると、その下には色鮮やかな卵と鶏肉のハーモニーが!

イメージ 5 ▲全体をかきまぜてみた。肉入りの良質な卵かけごはんといったところか。黄身はなかなかつぶれない。

イメージ 4 ▲こんな親子丼が食べられるなんて、まさに至福としか言いようがない。

 湯呑み茶碗のような器で出てきたスープは、水炊きに使う出汁スープと同じもので、鶏ガラ25kg~30kgを、敷地内に湧く清涼な井戸水で「途中で何回も水を足してしつこい脂を取りながら」5~6時間かけて煮込んで作るそうです。水炊きには手が届かなくても、水炊きに使うのと同じ薄く白濁しとろりとしたコクと旨みが詰まったこのスープを味わえるのだから、うれしいです。

 どんぶりは小さめで、これでは腹いっぱいにならん、と感じる人もいるかもしれません。我々は既に「Le Petit Mec」でパンをたくさん食べて来たので、親子丼はこれぐらいのサイズで十分。全体をかきまぜて、下に敷かれたごはんの隅々に卵を行き渡らせると、見た目は肉入りの上質な卵かけごはんといった感じ。丼物ならガツガツとほとんど噛まずにかきこんでしまいがちな僕ですが、さすがにこの親子丼だけはお箸でひとすくいひとすくい、じっくり味わって食べたいです。

 いや~、こういうお店があってお昼をさくっと食べに行けるっていいですね、さすが京都。それにしても香港人、どうやってこのお店見つけたの?

イメージ 6 ▲三分の二ほど食べ進んだところで断面図。ホントおいしい。