毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

モエレ沼公園(2017年月イチ日本・夏休み編;その16)

イメージ 3 ▲ルーヴル・ピラミッドかと見紛うモエレ沼公園のモニュメントは「HIDAMARI」。

 2017年8月14日、元はゴミの埋め立て地。

 「白い恋人パーク」、ちょっと慌ただしくて、一部を見てまわっただけになってしまいましたが、相方がどうしても行きたいところがあるというので、おみやげ調達もそこそこに、「白い恋人パーク」から出発。大急ぎで札幌自動車道にのって札幌市内を西から東へ横切り、20km弱走ってやってきたのは、「モエレ沼公園」。なんだそれ、初めて聞くぞ。でも相方はどこで調べたのか、どうしてもここへ行きたかったのだそうだ。

 園内への車の乗り入れは禁止されているので、駐車場に車を停めると、駐車場脇には、バス停やコインロッカー、レンタサイクル貸し出し所などが入っている建物があり、その向こうには緑豊かな広大な土地が広がっています。ここでも時間はあまりないのだが、何を見てまわればよいのだろう?

イメージ 1 ▲モエレ沼とモエレ湖の境目にかかる橋を渡って緑豊かな園内へ。

イメージ 2 ▲橋の左側に見えるのは川のようだけどいちおう「モエレ湖」となってます。水草が生い茂ってますね。

 モエレ沼は、豊平川か石狩川の蛇行の結果できあがった三日月湖で、南西に向いて口を開いた「つ」の字の形をしています。「モエレ」の由来は、アイヌ語の「モイレ・ペッ(流れの遅い川)」。1966年以降、減反によって周辺から水田が姿を消すと、札幌市内で大量に出るゴミの埋め立て地になっていたそうですが、札幌市の市街地を公園や緑地の帯で包み込もうという「環状グリーンベルト構想」における北東部緑地ゾーンの拠点公園として計画されたことから、1982年に整備に着手されました。基本設計を手がけたのは彫刻家のイサム・ノグチ。「全体をひとつの彫刻作品とする」というコンセプトのもとに造成が進められ、広大な敷地には幾何学形態を多用した山や噴水、遊具などの施設が整然と配置されており、自然とアートが融合した美しい景観を楽しむことができるとのことです。外周3.7km、広さ約188.8ヘクタール、東京ドーム40個ぶんぐらいあるので、今回はとても全部は見てまわれない。あ、右側の奥の方になんかピラミッドみたいなのが見えてきたから、とにかくまずはあそこまで行ってみよう。

イメージ 10 ▲橋を渡って園内に入ると、右側奥になにやらガラス張りのピラミッドのようなものが見えますね。

 このガラスのピラミッドは、その名も「ガラスのピラミッド "HIDAMARI"」。公園の文化活動の拠点施設であり、かつ公園を象徴するモニュメントでもあり、ます。屋外の環境を直接に反映し、夏には美しい芝生で切り取られた青空を、冬には一面の雪原の美しさを、公園の風景と一体になったかのような感覚を味わうことができます。

 ガラスで構成されたアトリウムは、一見、ルーブル美術館のガラスのピラミッドを連想させます。しかし、純粋な四角錐状ではなく、一辺が51.2mの三角面と四角錐、立方体が組み合わされた複雑な形をしています。館内にはレストランやギャラリー、ショップ、公園管理事務所が入っており、環境負荷配慮のために館内の冷房システムに「雪冷房」が導入されているとか。

 ちょうど8月6日から「札幌国際芸術祭2017」が始まっていて、モアレ沼公園はメイン会場の一つ。ガラスのピラミッドのアトリウムでは、展覧会「RE/PLAY/SCAPE」が開催中。松井紫朗による内部が複雑な形の回路になっている有機的な構造の巨大な黄色いバルーンが階上から垂れ下がっているのがまず目につきます。このバルーンを取り囲むように、床には100台以上の中古のレコードプレーヤーが配され、これは大友良英+青山泰知+伊藤隆之による作品《without records》のモエレ沼公園バージョンの新作《(with) without records》。聞こえているのはレコードの載っていないレコードプレーヤーから出る小さなノイズ音で、それも作品の一部でしょう。

イメージ 5 ▲ガラスのピラミッドのアトリウムでは、展覧会「RE/PLAY/SCAPE」開催中。

イメージ 4 ▲イエローの巨大なバルーンを中心に、床には無数のレコードプレーヤー。エキセントリック~~(笑)。

 ガラスのピラミッドを出て、元来た道を戻ろうとすると、正面に穏やかな斜面を持つなだらかな山が目に入りました。よし、次はあそこへ行ってみよう。

 この山は「モエレ山」。モエレ沼公園最大の造形物、かつ札幌市東区唯一の山。不燃ゴミと公共残土を積み上げ造成された人工の山で、麓からの高さは52m。 山頂部分は札幌市内全体を見渡せる展望台となっていて、その幅はイサム・ノグチの生誕100年にあたる完成年にちなんで2004cmだそうです。とても形がよい山なので、誰でもふらふらと登ってみたくなります。

イメージ 6 ▲ガラスのピラミッドを出ると、正面に形の素敵な山が見えました。「モエレ山」。

イメージ 9 ▲この草地をそのままずっと登っていきたくなってしまいますね。

 この「モエレ山」にも、「札幌国際芸術祭2017」の作品が展示されています。

 ガラスのピラミッドの方から近づいてきて「モエレ山」の麓まで来ると作品紹介板が立っていて、「伊藤隆介 長征―すべての山に登れ 2017 自転車、ミクストメディア 」と書いてあります。が、自転車?自転車なんてどこにもないけど?ていうか、どこが作品、というかどの部分が作品になってるの?

 と怪訝に思いつつ「モエレ山」を見上げると、あっっ!「モエレ山」の稜線に自転車がずーっと連なってる!!

 「モエレ山」の北側の麓から頂上へ続く登頂ルートに、100台超の自転車が列をなしているのがこの作品。これらの自転車は全部札幌市内の放置自転車だったものだそうで、ゴミ処分場だったモエレ沼の歴史を思い起こさせつつ、廃棄されたものたちが生き生きと蘇るユニークな作品となっているのだそうです。

イメージ 7 ▲「モエレ山」の南麓に立つ作品紹介板。どこが作品なの?

イメージ 8 ▲頂上方向を見上げてみると、稜線に沿って自転車の列が!放置自転車を配した作品なのでした。