毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

あるじなしとて春な忘れそ(念願かなってセイロンティーの旅;その58)

イメージ 1 ▲太宰府天満宮は向かう参道にある鳥居。ものすごい人出です。

 2017年5月1日、副詞「な」と終助詞「そ」。

 嬉野温泉をあとにして、福岡太宰府天満宮へ向けて、約100kmを走ります。

 長崎自動車道に入ってしばらく走り、小城の羊羹が好きなので、小城PAに入って売店で小城の羊羹を買い、それからまた長崎自動車道を東進。相方がまた途中で下道ドライブを希望したため、吉野ヶ里町の東背振ICで長崎自動車道を下りて、国道385号線へ突入。これがものすごい山道で、二つもダム湖のへりを走ったりしながら福岡県那賀川町に入り、那珂川べりの中ノ島公園、生産物直売所「かわせみの里」でトイレタイム。そのあとは大野城市を西から東へ抜けて、太宰府天満宮へ到達したのは午後1時半頃でありました。

イメージ 2 ▲境内入口の石鳥居。県内最古で、鎌倉末期の作(南北朝期の作とも。)。

 太宰府駐車センターに車を停めて徒歩で前進。西鉄太宰府駅の前を通り過ぎて、天満宮への参道である門前町を進んで行きます。さすがGW、参道は人、人、人です。西鉄太宰府駅から境内入り口までの参道は門前町の馬場地区と呼ばれているそうですが、とにかく両側に様々なお店がぎっしり並んでいて、その活気たるやものすごいです。

 その人、人、人をかき分けるように進むと、境内の入り口に到達。左に巨大な石灯籠、1754年に桃園天皇から院号を賜った宮司のやしき「延寿王院」の山門を右に見て前進すると、鎌倉末期に建てられたとする石造りの大鳥居。ここから北へ境内の中をまっすぐ進んでいくことになります。

イメージ 3 ▲左に石灯籠、右に延寿王院の山門。その間の石鳥居から境内へと入っていきます。

 石鳥居を抜けると、眼前には大きな池が現れます。「心」の字の形をしている「心字池」。

 「心字池」と言えば、さだまさしの唄「飛梅」で、「心字池にかかる三つの赤い橋は 一つ目が過去で 二つ目が現在(いま)。三つ目の橋で君は 転びそうになったとき 初めて君の手に触れた 僕の指」と唄われたあの「心字池」です。この唄のとおり、「心字池」にかかる手前から太鼓橋、平橋、太鼓橋は、過去、現在、未来を表し、この橋を渡って水の上を歩くことで心身ともに清められて神前に進むことができるとされています。さだまさしの唄の場合は、これから一緒に過ごしていきたい彼女が未来を表す三つ目の橋でこけるところが、この唄の悲劇的結末を予兆していて、ポイントだわな。

イメージ 4 ▲「心字池」にかかる過去を表す一つ目の太鼓橋。

イメージ 5 ▲一つ目の橋を渡ると、次は現在を表す二つ目の橋(平橋)に続きます。

 太宰府天満宮は、京都の北野天満宮とともに全国天満宮の総本社であり、菅原の道真の霊廟でもあり、創建は919年(延喜19年)。道真が亡くなるのは903年(延喜3年)ですが、その死後、天変地異が多発したのは道真が怨霊となって朝廷に祟りをなしたからだとされ、天満天神として厚く祀られることになったわけです。

 三つの橋を渡りきり、手水舎で手を口を清めてさらに進もうとすると、そこにあるのは、かなり壮大な「楼門」。慶長年間(1596年~1615年)に再建したのは、石田三成だそうです。心字池側と御本殿側とでは形が異なる珍しい建築物なのだとか。

イメージ 6 ▲石田三成も再建に携わった楼門。ここから先にいよいよ御本殿が。

 楼門をくぐって中へ入ると、いよいよ正面に御本殿が現れます。「五間社流造(ごけんしゃながれつくり)」という建築様式で、神社建築では最も一般的なスタイル。正面中央に1間の唐破風造の向拝(こうはい;庇のこと)を設ける「正面向拝一間」となっていて、太宰府天満宮には拝殿がないので、神事などはこの向拝の下で行われ、参拝者もこの向拝の下で参拝します。お正月の初詣の時期でもないのに、参拝者が長い行列を成しています。さすが「学問の神様」、菅公は大人気であります。

イメージ 7 ▲楼門をくぐると正面奥に御本殿。

 御本殿に向かって右側に青々と葉を茂らせているのは、飛梅。

 飛梅と言えばもちろん、901年に太宰府へ左遷され、それまで愛で慈しんできた梅に、「東風(こち)吹かば 匂ひをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」と詠んで京を離れたところ、主人を慕ってその梅もひと夜にして京から太宰府へ飛んで行ったという梅であります。副詞「な」と、動詞および助動詞「る」「らる」「す」「さす」「しむ」の連用形に付く終助詞「そ」が呼応した「な…そ」の形で、「(どうか)…してくれるな」という「穏やかな禁止」を表す護法をマスターするのに最適な歌でもあります(笑)。そしてもちろん、さだまさしの唄「飛梅」で「ひがしかぜ吹けばこち吹かば君は どこかで思い起こしてくれるだろうか 太宰府は春 いずれにしても春」と歌っているのも有名。ここでいう「君」というのはもちろんさっき三つ目の橋でこけてた「君」ですね。

 いずれにしても、境内に約200種、6,000本もある梅の木の中で、毎年一番に花をつけるのが「飛梅」。「飛梅」は今も、あるじなしとて春を忘れずに、東風が吹いたのを感じ取っては花をつけて匂い起こしているのです。

イメージ 8 ▲参拝者の長い列ができる右のこんもりとした青々とした葉をつけているのが「飛梅」。

イメージ 9 ▲一度でいいから、「飛梅」の花が咲いているときにここを訪れてみたい。