毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

仏歯寺参拝(念願かなってセイロンティーの旅;その25)

イメージ 1 ▲マータレー県で見かけたヒンズー教の寺院「Sri Muthumariamman Temple」。塔がみごと。

 2017年4月23日、足裏が熱い。

 スパイスガーデン参観を終え、次は街全体が世界遺産に指定されているキャンディをめざします。キャンディまでは、A9号線(ジャフナ・キャンディ ハイウエイ)を南へ約40kmです。

 スリランカ国民の七割は仏教徒ですが、全人口の12%程度はヒンズー教徒だそうです。このA9号線を走っていると、時折寺院のような建物を見かけ、運転手さんに聞くと、ヒンズー教のお寺といいうのが意外にたくさんあることに気づきます。

 スパイスガーデンから12kmほど南へ進んだあたり、マータレー県の県都マータレーの市街地へ入りかけたところには、立派な塔を持つヒンズー教の寺院がありました。「Sri Muthumariamman Temple」という寺院だそうで、雨と豊穣の女神を祀っているのだとか。「Gopuram」と呼ばれる高さ55mの塔が際立っています。その装飾も多彩ですね。

イメージ 2 ▲キャンディの中心部に入ってきました。黄色い花をつけたこの木はなんの木かな?

イメージ 3 ▲1855年開業の「クイーンズホテル」。一度は泊まってみたい。

 そこから更に走ること約25km、中部州の州都であり、シンハラ王朝キャンディ王国の最後の都であったキャンディの市街地へ入ってきました。人口12万のこの街は、街全体が世界遺産に指定されています。

 キャンディ王国は、1469年から1815年まで続きましたが、19世紀に入ってからイギリスの侵入を受け、1815年のキャンディ条約によりイギリスの保護国となり、その後イギリス領セイロンへ併合され滅亡します。その後はイギリスが経営したこともあり、キャンディではコロニアル風の街並みを見ることができます。その代表的なのが1855年開業の「クイーンズホテル」。一度は泊まってみたいものです。

イメージ 4 ▲ライオン・ハートの9歳の英雄マッドゥーマ・バンダラの像。

イメージ 5 ▲いよいよ「仏歯寺」の建物が見えてきました。

 これから入ろうとしているのは「仏歯寺」というお寺なのですが、キャンディ湖の北岸にまっすぐ伸びる両側が美しい芝生敷きになった道を進んでいきます。この道の途中に、少年像が建てられています。これは「ライオン・ハートの8歳の英雄マッドゥーマ・バンダラ」の像。キャンディ王国最後の王スリー・ウィクラマ・ラジャシンハによって、1814年に家族とともに処刑されてしまいました。9歳のマッドゥーマは、怯える兄を奮い立たせようと、「兄さん、怖がっちゃダメ。どんな風に死に向かえばいいか、僕が見せてあげるから!」言ったそうです。結局兄弟は斬首、母と妹二人は重りをつけてキャンディ湖に沈められ、この残酷な処刑が民衆の心を王から離れさせる決定的な契機になったのだそうです。

イメージ 8 ▲木造部分と石の柱がみごとな調和を見せる「仏歯寺」の内部。

イメージ 6 ▲石の柱には柔らかな曲線を描く彫刻が施され、美しい。

イメージ 9 ▲この石の柱の彫刻や途中を八角形にしているところなど、すてきです。

 「仏歯寺」は、正式には「ダラダー・マーリガーワ寺院(Sri Dalada Maligawa)」といい、1595年創建となっているようですが、「仏歯寺」という名のとおり、死後、遺骨と同様にインド各地に分散された釈迦の歯は、スリー・メーガワンナ王(301-328)の治世に右の犬歯がスリランカにもたらされたとされており、また、スリランカにもたらされたのは左の糸切り歯だとするものもあるようです。仏歯は王権の正統性の証しとされるため、アヌラーダプラからポロンナルワへと、遷都の度に仏歯も移動し「仏歯の安置所」に祀られてきたそうです(ということは、仏歯がシーギリヤに安置されていたこともあったのかしら?)最後の王都がキャンディですから、今はこうしてここキャンディに祀られているわけです。

イメージ 7 ▲巨大な象牙が据えられているのは拝殿。この2階に仏歯が納められているそうです。

 最初、入口はどこかなあとうろうろしていたら、運転手さんがあとからお供え用の花びらをたくさん買って追いかけてきて、自分の実家はキャンディだからお参りをする、一緒に行こう、と言ってくれ、運転手さんのあとについて、またハダシになって、中へ入っていきました。

 木造部分と石造りの部分がそれぞれに意匠をこらしてあって、彫刻などの一つ一つに目を奪われますが、それよりも何よりも、ここを訪れ、花を献げ、思い思いに祈りを捧げている敬虔な人々の姿です。僕たちも、運転手さんと一緒に2階の木の床の上に座り、祈りのひとときを過ごすことができました。

イメージ 10 ▲これはかつての集会所か何かであったらしい。

イメージ 11 ▲小さいお堂のようなものもぽつぽつと。石の彫刻がすばらしいですね。

 「仏歯寺」の敷地はたいへん広く、仏歯が納められた拝殿を中心にした本殿ともいうべき建物以外にも、敷地の中にはいろいろな建物が残っています。敷地が広いので、ハダシで歩いていると、ひなたになっているところは暑くてたまらんです。

 毎年、シンハラ暦のエサラ月(新暦7~8月)には、3週間にわたってペラヘラ祭というお祭りが開かれるそうです。そのときに訪れることができれば、古都キャンディ、仏教の聖地で繰り広げられる仏教徒の壮大なパレードなどが見られるらしいです(しかし7、8月となるとそうとう暑いな。)。

イメージ 12 ▲赤い八角屋根のところから中へ入ったのでした。足の裏は熱さでいいかげん腫れてきてます。