毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

出雲大社に桜咲く。(旅するニッポン、春たけなわ;その25)

イメージ 5 ▲みごとな広がりを見せて満開の出雲大社境内の桜。

 2016年4月4日、そっぽ向く大国主大神。

 一畑電車出雲大社前駅から、リニューアルされて散策しやすくなった神門通りをのんびり歩いて、出雲大社へ。出雲大社を訪れるのも10年ぶりです。

 2008年から、60年に一度の「大遷宮」の事業が始まり、今年年3月には境内境外の全ての御社殿の御修造遷宮が完了しました。すっかり生まれ変わって初めての出雲大社参拝です。

イメージ 1 ▲60年に一度の「大遷宮」が終わって初めての参拝です。

イメージ 2 ▲「勢溜(せいだまり)の大鳥居」をくぐるとまっすぐの下り参道が続きます。

 桜の季節に出雲大社を訪れるのは初めてですが、これはなかなか、いい桜が咲いているではないですか。下り参道の途中、右奥にある「浄の池」の池端に咲く桜も満開で、散り落ちた桜がみごとな花いかだとなっています。

 下り参道の更に進めば、手水舎の点前のあたり、右に草地が広がるその奥に、なんとも素晴らしい枝振りの桜の樹がありました。何本かの樹が重なって、みごとな横の広がりを見せ、しかもこれ以上ないというほどの満開です。写真に撮ってもこの奇跡的な広がりは再現できないだろうと思いましたが、少しでも記憶にとどめようと一枚シャッターを切りました。


イメージ 4 ▲境内の小川の上に張り出すように咲き誇る桜。

イメージ 3 ▲「浄の池」には、池端の桜が散り落ちてすっかり花筏。

イメージ 10 ▲出雲大社境内と神楽殿の境を流れる「素鵞川」を覆うように満開の桜の樹。

 出雲大社は大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)をまつり、その現在の御本殿は1744年に造営されたもの。手水舎でお清めをし、「銅の鳥居」をくぐると、正面に誰もが知っているあの巨大なしめ縄がかけられている拝殿が現れます。しめ縄の長さは約13m、重さは4.5トン。

 しめ縄は一般には、社殿に向かって右を上位とし綯い始めを右にすることから「左末右本」で「右綯い」ですが、出雲大社拝殿のしめ縄は左を綯い始めにする「左本右末」でしかも「左綯い」。謎深いしめ縄であります。

イメージ 6 ▲出雲大社の拝殿。ここで「二礼四拍手一礼」でお参りします。

イメージ 7 ▲一般とは違う綯い方の出雲大社拝殿のしめ縄。

 しかし、大国主大神をまつった本殿は更にその奥にあります。しかも回廊の内側に入ることはできず(入ることができるのはお正月五ヶ日のみ。)、回廊南面中央の八足門の外からしか参拝することはできません。正月五ヶ日に回廊の中に入れても、本殿へ近づくことができないことは変わりません。大国主大神は日本人の誰もが知っている神様なのに、どうしてこんなに近寄りがたいのでしょう。

イメージ 8 ▲点前に八足門、その奥に見えるのが御本殿。

 参拝者は、拝殿の前でも八足門の前でも、南を背にし、北を向いて本殿に向かって二拝四柏手一拝しますが、御神座の大国主大神は南、つまり参拝者の方を向いていません。西を向いて座り、参拝者にはそっぽを見て、左の横顔を見せています。本殿の回廊を西面へ行くと、ちょうど西を向いている大国主大神の正面にあたる場所に、ここでも拝礼してくださいということが書かれた木札が立って目印になっています。

 Wikipediaはこれについて、「これは本殿が古代の高床式住居とほぼ同じ構造になっているため、高床式住居における入口と最上席の配置と向きの関係から、御神座は西側を向くことになるためと考えられる」としています。建物が高床式のせいで最上席の向きがそうなるなら、正面を向いている方に門を設けてそっちから拝めるようにしたらよろし。納得できん。

 大国主大神から見て右には正面(南面)を向いて御客座五神が祀られてて、参拝者と対面しているのはこちらの御客座五神のほう。参拝客はこの御客座五神を拝んでいるような感じになるんですな。「オオクニヌシは神ではあるが、この国の正統な主権者ではない。だから、真正面から拝む必要はないし、支配者(大和朝廷)の側でもそうさせたくない」から参拝者が正対できないようにわざとしている、という井沢元彦の説の方を僕は支持したいですね。

イメージ 9 ▲こちらが御本殿の西面。こちらまで回ってくる参拝者は多くなく、ちと寂しい。