毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

きんし丼(紅葉まだき初秋のニッポン旅;その33)

イメージ 2 ▲京都新京極「かねよ」で14、5年ぶりに再会した「きんし丼」。

 2015年10月2日、おかわりしたい。

 午前中は京都市内をぶらぶらし、昼は、どうしても食べたいものを食べに、新京極へ。約15年前に一度食べたきり、その後は食べるチャンスに恵まれなかったモノを、今回はゼッタイに食べます。食べますよ、ワタシは。

 そのモノを食べられるのは、新京極にある老舗「かねよ」。大正時代に創業し早や100年の歴史を有する鰻の専門店。同店のHPによれば「創業以来、守り続けられている秘伝のタレと一本選りの鰻、火種は備長炭、そして熟練の職人。その組み合わせの妙が、おいしさを保ち続ける秘訣」とのこと。タレつぼは、創業以来100年にわたって使われ続けていて、中のタレはその当時から変わらないそうで、戦前かねよの3階が火事で燃えた時、主人がこのタレつぼだけを持って逃げたとも。

イメージ 7 ▲創業した大正時代の香りを残す建物がレトロな雰囲気。

イメージ 8 ▲玄関先には堂々と「日本一の鰻」の看板。

 ここでは、最初に蒲焼きかうざくなんかをつまみに熱燗のお銚子を一本二本とつけてゆっくりやりたいところですが、お昼ということもあり、とりあえず茶碗蒸しぐらいにしておきましょう。茶碗蒸しは、器のへりギリギリまですり切りのようにたっぷりと入っていて、表面は見るからにつややか。真ん中に押し花のように置かれた山椒の葉の緑が鮮やかです。こういう茶碗蒸しを作るの、すごく難しいと思います。しかも、茶碗蒸しの中には、蒲焼きが潜んでいました!のどごしつるりの茶碗蒸しだけでも十分においしいのに、中から蒲焼きが出てくるなんて!

イメージ 1 ▲つるりとこぼれ落ちそうなほどたっぷりでつるるんな茶碗蒸し。

イメージ 3 ▲茶碗蒸しの中から蒲焼き登場。ぜいたくな茶碗蒸しであります。

 さて、鰻の老舗「かねよ」の名物は、何と言っても「きんし丼」。普通に刻んだ錦糸玉子が鰻の上に載っているのではなく、座布団のようなどでかい玉子焼。出汁巻き玉子ならぬ出汁巻かぬ玉子。うなぎ丼の上にこの玉子焼が載り、それにどんぶりのフタをすると、どんぶりから玉子焼がはみ出てる~、というインパクト抜群の一品。ただし、「きんし丼」に並上特とある中で、どうも玉子焼がはみ出て配膳されるのは「並」らしく、上級の丼だときっちりどんぶりに納まって出てくるらしいです。今回も、つい思い切って奮発し「特」を注文してみたら、きれいに丼に納まってました。

イメージ 4 ▲二つ折りの分厚い出汁巻かぬ玉子の下にはなんとも香ばしい鰻様が鎮座ましましてます。

イメージ 5 ▲あっという間に完食まぢか。もう一杯いくべきか。

 どんぶりのフタをとっても、そこに見えるのは玉子焼のみ。鰻も見えなければ、ましてやその下のごはんは見えようはずがない。玉子焼きをかき分けて進めば、そこには「かねよ」自慢の香ばしい鰻様が隠れておわします。京都の老舗ですが、鰻は「江戸焼き」だそうなので、ふっくらとしたしあがり。この玉子焼と鰻とごはんを一緒に口に運び、三つの味を同時に楽しむ「三味一体」がいちばんおいしいのだそうです。そんなことは言われなくても、玉子焼、鰻、ごはんを渾然一体にしてかきこみますと、ああ、ウマイ。おかわりしたい。しかしここはぐっとガマンして、きんし丼をおかわりする代わりに、「うなぎ棒寿司」をいただいてみよう。これまたお上品で、とてもおいしかったです!

イメージ 6 ▲たいへん上品な趣の「うなぎ棒寿司」もいただきました。