毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

十七夜の蔦温泉(紅葉まだき初秋のニッポン旅;その28)

イメージ 1 ▲おいしいものが次から次へと出てくる蔦温泉旅館の夕食が始まるよ。

 2015年9月29日、キリン秋味。

 なんとか日が暮れないうちに「蔦の森」の散策を終え、夕食前にひとっ風呂。「久安の湯」に男性が入れるのは20時までなので、まずはこちらに浸かります。ブナ材を使った湯船の底板の隙間からぼこりぼこりと湧いてくる湯は、何度浸かっても本当にすばらしい。いくらでも浸かっていたい泉質です。

 湯に浸かれば腹が減る。夕食は西館1階の食事処でいただきますが、今回の全面リニューアルで大きく変わったものの一つが、食事ですね。以前は、食事目当てにここへ来る価値ありと言うほどの特徴はなかったですが、それが格段に豪華になり、料理長名入りの献立を書き連ねた紙まで用意してあります。これはホントに「生まれ変わった」という感じ。

イメージ 2 ▲温泉にじっくり浸かったあとの冷たいビールってどうしてこんなにおいしいんだろう。

 温泉にじっくり浸かって脂を落としたあとのビールほどうまいものはないですな。食事に箸をつける前に、まずはビール。日本でしか味わえないビールを飲んでおこうと、キリンの「秋味」をオーダー。麦芽をたっぷり1.3本分使用し、少し高めのアルコール6%、そしてキリンらしく、苦い。ウマイ。たまらない。ビールはさ、やっぱり瓶ビールよ、瓶ビール、うん。

イメージ 3 ▲「茸とトマトの醍醐蒸し」、その奥にキリン「秋味」。

 総料理長・山内健蔵氏の手になるこの日の夕食の献立、始まりは前菜から。「揚げ干し柿」、「石垣長芋田楽」、「サーモンのサラダ巻き」、「芋茎の胡桃和え」、「秋刀魚のけんちん巻」、「味覚串(銀杏・栗・黒豆)」と、もう最初から盛りだくさん。前菜の奥に並んでいるのはお造りで、「陸奥湾産平目 帆立焼霜造り 虹鱒かさね造り」の三種盛りに「海の宝石 あおさ海苔寄せ 小菊 大葉 山葵 造り醤油」が添えられています。ニジマスというのがこのあたりらしいですね。

 更にその奥の小鉢は「蔦名物旬の豆腐 南瓜豆腐 山葵 美味汁」、その隣は「酢肴」で、「山菜と鮭の粥寿司」。八甲田山は山菜の宝庫。ちょっと季節ではないですが、地元のものが食べられるのはとにかくうれしい。

 そして焼魚は「岩魚姿焼串刺し盛 府草焼 茗荷」。いや、もちろんおいしいんですけど、何もここまでアクロバティックに出てこなくても……(^_^ゝ。

イメージ 4 ▲「岩魚姿焼串刺し盛」。ちょっと凝り過ぎ?

イメージ 5 ▲串刺し盛にしても最初から皿に載っていても、おいしいものはおいしいなり。

 蓋物は「湯葉巻 茶筅茄子 里芋 紅葉麩」。「茶筅茄子」とはよく名付けたもので、とても上品な仕上がり。里芋のつるりとした純白の肌合いは実にきれい。紅葉麩は季節を先行していますね。
 
 そして陶板焼は「五戸産シャモロック 県産野菜と共に 塩 胡椒」。シャモロックは、青森県畜産試験場が20年の歳月をかけて交配した自慢の一品。軍鶏を改良した「横斑シャモ」を父鶏に、プリマスロックを改良した「速羽性横斑プリマスロック」を母鶏に産まれたので、名付けて「シャモロック」。安易と言えば安易だが、我が家では年に一回、大晦日の年越し蕎麦のときだけシャモロックの鶏ガラでだしを取ることが許されていたというくらい、上質で高級な鶏肉なのだ。

イメージ 6 ▲まことにもって上品な蓋物。「茶筅茄子」がいいね!

イメージ 7 ▲陶板焼は、青森自慢の地鶏「シャモロック」。

イメージ 8 ▲添えてある県産野菜はズッキーニにナガイモ、そしてリンゴも。

 そして食事の締めは「皇室ご献上米農家大柳さんの天寿米白飯」、香の物は「自家製糠床 胡瓜人参大根」、止椀は「つるつる若布 あおさ海苔 三つ葉」と、最後まで手加減することなくおいしいものが出て来ます。最後の甘味は「洋梨寒 ミント添え」でさっぱりと食事を締めくくります。

 満腹満足、ごちそうの詰まった腹を抱えて部屋に戻り、窓を開けると、いつの間にか雨は上がり、雲も切れて、十七夜の立待月がくっきりと懸かっているではありませんか。よし、腹が落ち着いたら、もうひとっ風呂浴びてくるか!

イメージ 9 ▲つるつる若布たっぷりのお吸い物がおいしいね。

イメージ 10 ▲デザートの「洋梨寒」、さっぱりしてて食事の締めくくりにぴったり。

イメージ 11 ▲雨が上がり雲が切れて、立待月が煌々と懸かっていました。