毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

崇厳寺(ミア寺)参拝(ハノイふたたび;その17)

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             ▲「ミア寺」境内のシンボルとも言える仏塔。

 2015年4月26日、ドゥンラム村にお別れ。

 ミア妃を祀った廟を出て、ドンサン集落の方へ更に歩いて行くと、なにやら賑やかな一角に出ました。寺院の山門前にいくつものパラソルが立ち、果物や手作りのお菓子なんぞが売られています。

 この山門から中が「ミア寺」。正しくは「Sùng Nghiêm tự(スンギエム・トゥ;崇嚴寺)」といいますが、サトウキビの村、「ミア村」だけに、お寺も通称「ミア寺」というわけです。

イメージ 10 ▲「ミア寺」の山門。

 もともとここには13、14世紀頃に既に小さいお寺があったそうですが、後黎朝後期の実質的な支配者Trịnh Tráng(チン・チャン;鄭梉)の妃の一人、Nguyễn Thị Rong(グエン・ティ・ゾン)、つまり「ミア妃」が1632年にこれを大規模に建て直し、その後修復、改築を繰り返して今に至っているのだとか。

 山門をくぐり抜けて中へ入ると、鬱蒼と茂る草木の中にまずひときわ目を引くのが仏塔です。

イメージ 1 ▲「ミア寺」の山門を入ってまず目を引くのがこの仏塔。

イメージ 9 ▲仏塔の足下から見上げると、彫刻の龍がまるで天に昇っていくかのよう。

イメージ 2 ▲様々な彫刻や装飾が施されている仏塔の外壁。中は空洞みたい。

 この仏塔、なかなかの高さがあります。塔の内側に入ると、ガランとした空洞があるばかりで興醒めですが、外壁の彫刻や窓に施された装飾はとても立体的で、迫力があります。八角の塔のそれぞれの角に施された龍の彫刻は、まさに天に昇っていこうとしているかのようです。

 仏塔を右手に眺めながら小道を進み、「崇嚴寺」と漢字で書かれた石門をくぐると、前堂があり、それを抜けて奥へ進むと、本堂です。

イメージ 8 ▲上部に「崇嚴寺」と彫られた石門。

 「ミア寺」には、全部で287体の仏像が安置されているそうです。最も奥まったところにある須弥壇はもちろんのこと、ベトナム観音の「Quan Âm Thị Kinh(ティキン観音)」、誕生物、苦行物、聖母道などの祭壇、回廊に並ぶ護法神、八部金剛、十八羅漢など、境内を巡り歩くと、実に多くの仏像を目にすることができます。

イメージ 7 ▲最も奥まったところにある須弥壇の一つ。供物がたっぷりと供えられています。

イメージ 3 ▲仏像のほとんどは塑像かジャックフルーツの木を彫った木像だそうな。

イメージ 4 ▲「乾坤正気」の扁額を掲げた祭壇。

イメージ 5 ▲回廊には十八羅漢がずらりと並ぶ。

イメージ 6 ▲回廊の軒は低く、ベトナム独特の魚の鱗のような細かい瓦がぎっしり敷かれた屋根が目の前に。

 仏塔の周りあたりまでは出入りする人も多く賑やかでしたが、本堂や回廊のあたりまで入ってくると人影は少なくなり、様々な表情の300体近くもある仏さまをゆっくりと見て歩くと、自然と安らかな気分になってきます。

 そんな「ミア寺」を後にして、ドンサン集落からモンフ集落へと、来た道をゆっくりと戻ります。

 ふと、また古民家の門が見えたので、最後にもう一ヶ所、おじゃましていきましょう。どなたのお宅かわかりませんが、門をくぐって中へ入ると、やはり同じように、中庭を古い建物が囲んでいます。先祖を祀った祭壇があると思われる建物の軒先では、主人とおぼしき老人が腰掛けて何か作業中。草花が植えられた中庭には、ここにも味噌か酒を造っている大小の甕がずらり。古い町だけれども、そこに暮らす人々の息づかいが伝わってくる、ドゥンラムはそんな素敵な村でした。

イメージ 13 ▲「ミア寺」からの帰りがけに、またも古民家の門を発見。

イメージ 12 ▲中に入ると、主人とおぼしき老人は何か作業中。

イメージ 11 ▲草花が植えられた中庭には甕がずらり。味噌甕かな?酒甕かな?