毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

夜行列車で飲む酒は(暖冬正月北から南まで;その20)

イメージ 1 ▲夜行列車の中で傾ける酒ほど美味いものはなし。

 2014年1月5日、上越国境、夜は更けて。

 大勢のファンに見送られながら、2021レ寝台特急「あけぼの」は上野駅13番線を定刻の21:16に発車し、輻輳する線路をいくつも乗り換えながら、ゆっくりと776.2kmに及ぶ北への旅立ちです。

 発車後も、乗り込んだ多くの鉄道ファンが撮影にいそしんでいるらしく、通路をひっきりなしに人が行き交います。他の乗客の迷惑にならないようにしてほしいものですが、こちらは今回は個室寝台「ソロ」ですので、検札が済んで個室の扉を閉じてしまえば、完全なプライベート空間です。さっそく大塚駅の新しい駅ビル「アトレヴィ大塚」で仕入れた食料や上野駅構内売店で求めたお酒を並べて、さよなら「あけぼの」、乗り納め送別の宴といきますか。

イメージ 3 ▲5号車3番個室で寝台特急「あけぼの」に別れを告げるささやかな宴を。

 「アトレヴィ大塚」1階の「寿し処 粋魚」で手に入れたバッテラと太巻き、写真には写ってないけど「うなぎ・焼とり・惣菜 日本一」で焼き鳥も調達したはず。お酒はヱビスのロング缶にプレモルの350ml缶、そして「活性原酒 雪っこ」です。

 まずはビールと焼き鳥で宴はまったりとスタート。大宮停車のあと約1時間走り続けて、この日最後の停車駅高崎には22:46の到着です。

イメージ 4 ▲夜のとばりもすっかり降りたような高崎駅に静かに到着。

 高崎を発車すると、次に旅客扱いのある停車駅は03:18着の村上までありません。このあとは、EF64が踏ん張って、力の入る上越国境越えです。

 車窓の外はますます深い闇になってきました。そろそろ「活性原酒 雪っこ」を開栓します。岩手県陸前高田市に本社、岩手県大船渡市に工場がある「酔仙酒造」さんのお酒です。東日本大震災では瓦礫まじりの大津波で、木造4階建ての倉庫を含む全ての建物が水面下に沈み、壊滅・流失したそうです。そこから再び立ち上がってきた酔仙酒造さんのお酒を口に含むと、同じ東北人として、思わず胸が詰まります。

 「雪っこ」の缶を開けると、中は「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった」を思わせる、とろりとした白さの濁り酒。酵素や酵母が活きたままの「活性原酒」を使ったまろやかな甘さと口当たりの「雪っこ」は40年以上のロングセラー商品だそうです。

イメージ 2 ▲岩手陸前高田・大船渡の「酔仙酒造」さんの「雪っこ」を飲むほどに夜は更けて。

 すべてのものを平らげて、いつのまに寝入ってしまったのか、もうずいぶん時が経ったようです。酔いつぶれても終電を逃すこともなく、ただそのまま横になれば、列車がそのまま体を運んでくれる、それが夜行列車の最大の魅力の一つ。

 ふと窓外を見遣ると、どこかの駅に停車中。ホームには薄く新雪が積もり、ホーム灯のほの暗い明かりに白く浮き上がっています。時計を見ると05:28、どこかの駅で運転停車中です。

イメージ 5 ▲時刻は05:28、まだ夜が明けるにはほど遠く、どこかの駅で運転停車。

 定刻で運転されていれば、山形県から秋田県に入ってすぐのあたり、小砂川駅を通過する時間ですが、どこの駅で停車したのでしょう。やがて、ごとんと静かな揺れに続いて、客車ならではの静かさでゆっくりと「あけぼの」は動き始めました。

 そして05:50、象潟到着。

 おや、とすると、少し遅れて走っていますね。象潟の所定到着時刻は05:36なので、約15分の遅れです。ということは、さっき05:28頃に停車していた駅も小砂川ではありませんね。もしかして旅客扱いのある遊佐駅だったのかしら。

 いずれにしても、辺りが白むまではまだしばらくかかりそうです。

イメージ 6 ▲約15分遅れで象潟駅に到着。まだ外は真っ暗い。