毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

丸長旅館の夕食(ニッポンの秋を探して・その25)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152515.jpg ▲煮物は「里芋の饅頭(鶏ミンチ)生木耳」。

 2011年11月6日、名物エノハ。

 長湯温泉丸長旅館での夕食が続きます。

 ようやく前菜を食べ終えると、お吸い物。「山芋の磯辺巻き 紅葉人参」で、お吸い物と言ってもかなり食べ応えがあります。お椀のフタを開けると、紅葉人参が載った黒い物体がどっかりと鎮座しています。この黒いものは海苔で、一瞬おにぎりが入っているのかと錯覚します。この海苔の継ぎ目から箸で中へ分け入ると、海苔に包まれているのは山芋のとろろで、まさに「山芋の磯辺巻き」。おすましのダシの香りと海苔の香り、そしてとろりとしたとろろの舌触り、これだけでも十分食べ応えがあります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152433.jpg お吸い物。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152446.jpg 海苔の中にはとろろが。

 続いて向付は、これまた定番中の定番で、エノハと鯛のお刺身です。エノハとは、九州の大分県、宮崎県北部、熊本県の一部の方言で、ヤマメとアマゴのこと。「榎の葉の魚」という民話が「エノハ」という名称の基になったのだとか。天然物は少なく、ここのも養殖物だとは思いますが、臭みはまったくなく、こりこりとした歯ごたえがたまらない。なお、この日は揚げ物に「エノハの唐揚げ」が出まして、これはたぶん初めていただきましたが、刺身とはまた違ったほくほくした淡泊ながらも滋味溢れる味わいで、おいしかったです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152438.jpg 向付はエノハと鯛。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152441.jpg エノハも鯛も旨し。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152504.jpg エノハの唐揚げも旨し。

 和食の楽しみの一つにその器がありますが、器も楽しみ、味も楽しむというのは本当に贅沢です。フタがされたままの器が出てきて、そのフタを自分で取って食事をするという形式があるのは、和食以外にあるのでしょうか。和食のお碗のフタには保温以上の役割があると思います。欧米料理はフタなんか付いてきそうにないし、中国料理もありません。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152450.jpg フタは和食の特徴か。

 そんなお碗のフタを開けてみると、これは炊合せ。「蕪 飛竜頭 紅葉麩」となっております。「飛竜頭(ひりゅうず、ひろうす)」とは京都などでの呼び方ですね。小麦粉に卵を混ぜ合わせて油で揚げた菓子を指すポルトガル語「filhos(フィリョース)」が語源だとか。東日本、北日本では普通に「がんもどき」と呼びますな。
 
 それより、この炊合せの巧みだなあと思ったのは、レンコンの穴に小豆の粒が詰めてあるところ。このおかげでほっくり感が増していて、芸が細かいことこの上なし。炊いた蕪も絶品。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152459.jpg 小豆の粒の芸が細かい。

 煮物も蓋付きの碗で供されます。「里芋の饅頭(鶏ミンチ) 生木耳」です。まん丸い里芋饅頭に、生キクラゲを刻んだものを散らした醤油ベースのとろりとした餡がたっぷりかかり、饅頭の上にはワサビが添えてあります。中を割ってみると、中には鶏の挽き肉もたっぷり。醤油ベースの餡は、これまで出てきた料理に比べて味が濃く、すりつぶして饅頭にした里芋のねっとりとした口当たりに濃い味が絡んで、十分に主食を張れそうな一品。さーて、そろそろおなかがいっぱいになってきたぞ(^^)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152510.jpg フタを開ける楽しみ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818152521.jpg ▲里芋饅頭の中には鶏のミンチもいっぱい。ほっくりとねっとりと、里芋らしさ全開。