初エティハドで秋のニッポン(その7;荻町集落)
2011年10月2日、白川郷荻町集落探訪のつづき。
白川郷はおそらく世界遺産に指定されてから観光地化に拍車がかかり、合掌作りの家屋は観光の対象でしかないかのように思われつつあってはいけないなという懸念もあるのですが、小道を歩いていると、今もしっかり現役の民家が並んでいます。玄関前に自転車が停められていたり、ストーブの煙突が壁から突き出ていたり、そこには普通の庶民の暮らしがあります。本当に残していかなければならないのは、こんなふうな無形の生活文化なんですよね。
完全に現役の合掌造民家。
この集落では、単に合掌造りの家屋が民家として今も使われているというだけではありません。周囲を山に囲まれた平地の少ない地形なので、一枚一枚は決して広いものではありませんが、田んぼもあれば畑もあり、そこでは農耕による生産という営みも行われているのです。
合掌造りの民家が縦に連なる一角にあった田んぼは、稲刈りがとっくに終わり、束ねた稲わらが棒に掛けて干してあるのがずらりと続いています。
稲刈りの済んだ田んぼに稲掛けの列、その向こうに合掌造りの民家、そのまた向こうには森、そして山。なんてニッポンな風景だと思いませんか?日本人はこの風景を忘れてはいけないし、いつまでも守り続けていかなくちゃいけないんじゃないか、そう思いました。
稲刈りの済んだ田んぼに稲掛けの列、その向こうに合掌造りの民家、そのまた向こうには森、そして山。なんてニッポンな風景だと思いませんか?日本人はこの風景を忘れてはいけないし、いつまでも守り続けていかなくちゃいけないんじゃないか、そう思いました。
いくつも現役の民家がある。
合掌造りの連なり。
まさにニッポンの秋。
もう10月に入ったのに、民家の軒先で朝顔が威勢良く咲いているのを見かけました。この色の朝顔は以前も見たことがあります。しかも、見かけたのは飛騨高山でした(記事はコチラ)。飛騨高山は白川郷までバスで50分という白川郷へのゲートウェイ。同じ地域と言っていいと思うんですが、このあたりで咲く朝顔というのは皆こういう感じなのでしょうか。この爽やかなブルー、とても気に入っています。10月に入っても楽しめるこの朝顔、なんていう品種なんでしょうね。
10月でも元気に満開。
またさらに歩いて行くと、とても大きな合掌造りがありました。「神田家」です。神田家の北に構える和田家(国の重要文化財)の次男が分家して、産土八幡宮の「神田(しんでん)」があったことから姓を「神田(かんだ)」と改め、その場所に居を構えたのが始まりだとか。
神田家の合掌造りは江戸後期に石川県の宮大工により10年の歳月をかけて建造されたとものと言われ、中は入場料を払って見学できるようになっており、最上階まで上がれるそうです。ここでも一年中囲炉裏で火を焚いていて、囲炉裏の鉄瓶で沸かした湯で自家製の野草茶を無料で飲めるのだとか。
神田家の合掌造り。
最上階まで見学できる。
荻町集落の案内所などでもらえる案内マップにも「集落内は保存地区のため道路や水路に柵がありませんので、十分注意して通行してください」と注意書きがされているとおり、小道端には小川のような用水路のような水の流れがありますが、柵は全然ありません。そしてこの水がまたきれいで、大きな鯉が何匹も泳いでいるんです。まさか取って食べるためではないと思いますが……
「荻町合掌集落」というバス停のところまで戻ってきました。今回は時間がなくて、合掌造りの建物の中を見学することはできませんでしたが、北の方にはこの集落を一望できる展望台(荻町城跡)もあるそうですし、今回訪れたのをきっかけに、今度はもっとゆっくり散策したいなと思いました。
道ばたの小川に鯉が。
▲加越能バスの「荻町合掌集落」バス停。しかし路線バスでのアクセスはそれほどよろしくはない。