毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

初エティハドで秋のニッポン(その6;白川郷)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010839.jpg ▲白川郷荻町集落に建つ合掌造り。これは土産品店「山峡の家」。

 2011年10月2日、初めて見た合掌造り集落。

 富山射水の新湊曳山を楽しんだ翌日は、初めて白川郷へ連れて行ってもらえることになりました。

 白川郷と言えば知らない人はいない超有名な世界遺産。世界遺産に登録されたのは1995年だけど、ここはそのはるか以前から誰もが知っている合掌造りの集落。小学校か中学校の社会の時間に必ず習う場所です。

 しかし僕は、そんなに前から知っているのに、一度も訪れたことがなく、本当に今回が初めて。本物の合掌造りの家屋を見るのももちろん初めてです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010825.jpg 山に囲まれて合掌造り。

 1995年12月、岐阜県白川村荻町(白川郷)と富山県上平村菅沼、平村相倉(五箇山)の3集落が世界文化遺産「白川郷・五箇山合掌造り集落」に登録されました。合掌造りとは日本の住宅建築様式の一つで、急勾配を持つ屋根がてのひらを合わせたように見えることからこの名が付いたとされています。

 合掌造りの定義は一定していないようですが、日本政府が白川郷と五箇山の集落を世界遺産としてユネスコに推薦した時は、「小屋内を積極的に利用するために、叉首構造の切妻造り屋根とした茅葺きの家屋」と定義づけたそうです。でも、この定義を読んでも「合掌造り」の姿はイメージできないなあ(笑)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010912.jpg 秋の草花の中に。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010900.jpg 軒先と濡れ縁。

 この合掌造りは、白川郷と五箇山のみに存在する特異な伝統建築物なのだそうで、合掌造りの家屋が密集して立ち並ぶ独特の景観は他では見ることができないのだとか。

 白川郷の合掌造り集落は主立ったものが3ヶ所あるようですが、僕が訪れたのは「荻町集落」。ずいぶん観光地化されていて、街道に面して土産物屋や飲食店が建ち並んでいます。自家用車で来る人も多く、日曜日ということもあってか駐車場はいっぱいです。ここらへんはちょっと興ざめですが、しかし、徒歩で小路を入っていくと、山里に寄り添うように合掌造りの家屋が建ち並んでいるひっそりとした風情を感ずることができます。

 しばらく小路を行くとお寺がありました。明善寺。寛延元年(1748年)創建の浄土真宗のお寺だそうです。このお寺の山門がすばらしい。明善寺の山門は、山門と鐘楼を組み合わせた鐘楼門と呼ばれ、茅葺き屋根の二層の寄棟造り。一階には板庇がついた珍しい建物だそうな。山門脇の柿の木にはびっしと柿の実がぶら下がり、山深き白川郷の秋の深まりを感じさせています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010843.jpg 奥は明善寺本堂。

イメージ 4 明善寺の素晴らしい鐘楼門。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010849.jpg 柿食へば鐘が鳴るかも明善寺。

 この山門だけでもすばらしいのに、明善寺は本堂、鐘楼門、庫裡のすべてが茅葺きで、そのような寺は全国的にも珍しいそうです。特に、約200年前の江戸時代に建てられた五階建ての庫裡は白川郷最大の合掌造りだそうで、郷土館として古い農機具や民具などが展示されているほか、屋内の囲炉裏では毎日火を焚いていて、昔ながらの火の香りを体験できるそうです。いいなあ、合掌造りの囲炉裏端に座ってのんびり熱燗飲んで過ごしたくなる(^^)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010855.jpg 明善寺の庫裡は郷土館。

 柿の木にたわわに実る柿の実を眺めながら小道を行けば、今度はコスモスです。いやあ、すばらしい色合いで今を盛りに咲いています。中国にはコスモスってあったっけなあ?覚えがないけど、とにかくこうして間近でコスモスの花を楽しむなんて、なんかすごく久しぶりな感じ。あまりにきれいだったので、3枚ばかり写真をUPします。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010830.jpg 濃いピンク。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010916.jpg 白く可憐なコスモス。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010835.jpg 元気よく咲いてます。

 大きな建物ばかりが合掌造りの茅葺きかと思いきや、先ほどの明善寺の山門も合掌造りの茅葺き屋根ですし、畑の脇の唐臼場と呼ばれる米、麦、ひえなどを搗くための小屋の屋根まで急勾配の茅葺きです。

 よく、合掌造りの集落のいちばんのすばらしさは何かと言えば、今もその建物に人が普通に住み、日常生活の中で使われていることだと言われます。僕もそれには同感です。保存して後世へ伝えていくべき価値があるものは何かと言えば、それは合掌造りの建物そのものであるとともに、そこでどのような暮らしが営まれていたかという無形の文化そのものでもあるからです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010904.jpg ▲母屋も唐臼場もみんな急勾配の茅葺き屋根。ここで暮らすことがこの形を求めたのでしょう。