毎日ヶ原新聞

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初エティハドで秋のニッポン(その5;射水新湊曳山)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010754.jpg ▲無数の提灯を吊した「提灯山」の行列が出発を待つ新湊曳山。

 2011年10月1日、射水新湊曳山。

 富山県には「曳山(ひきやま)」と呼ばれるお祭りが数多く残っているそうです。「曳山」とは、祭礼の際に使われるいわゆる「山車(だし)」のことで、その祭礼に伴っていくつもの「曳山」が練り歩く行事を「曳山祭り」と称しているようです。富山県では八尾、城端、伏木、石動、射水、岩瀬など数多くあり、僕が今回訪ねた射水市でも、海老江、大門、新湊の3つの曳山が行われます。海老江は9月23日、新湊は10月1、2日、そして大門が10月の三連休のときです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010820.jpg 宵闇を曳山が行く。

 前回の記事のとおり、僕が高岡で列車を降りたのは午後7時前でしたが、訪ねて行った先のご家族が、「今日はちょうど新湊の曳山だからみんなで見に行こう」と言ってくださり、僕も初めて富山の曳山を見ることができました。

 新湊の曳山祭りは正確には「放生津曳山祭(ほうじょうづひきやままつり)」といい、江戸時代中期から続く放生津八幡宮の秋季例大祭の一部を成すもので、毎年10月1日には神輿渡御と13基の曳山供奉が行われることになっています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010749.jpg 先頭一番山は古新町。

 10月1日の朝、13基の曵山が放生津八幡宮の前に集まり、そこで御祓いを受けた後、曵山の巡行が始まります。昼は花がさを飾る「花山」、夜は曵山を囲うように提灯を飾った「提灯山」が練り歩きます。僕は夜の「提灯山」しか見に行けなかったので、明るい空の下を豪華絢爛な花山が練り歩く姿は見られませんでしたが、宵闇の中を練り歩く提灯山の柔らかな明かりもまた風情がありました。

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       ▲毎年必ず一番山を務めるのが古新町。創設は1650年。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010800.jpg 行列が動き始めた。

 曳山祭りの醍醐味でありいちばんの見どころは、狭い街道を練り歩き、曲り角に差しかかったときに、優雅なお囃子がテンポの速い勇壮な曲にかわり、曵子たちが「イヤサー!イヤサー!」という掛け声とともに渾身の力をこめ、曵山が車輪のきしみとともに角を曲がる場面。重い曵山をいかに上手く操るかが勝負になり、各町の曵子たちはここぞとばかり気合いを入れ上手さを競い合うのだそうです。

 僕は「川の町新湊」が近くにある神楽橋の近くで見物したのですが、そこは直線コースで曲がり角はなく、勇壮な「回し」の見どころはなかったものの、秋の夜空を照らすように連なってむしろしずしずと進んでいく曳山の列が風情があってよかったです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010811.jpg 二番手は三日曽根。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010804.jpg 三日曽根の標識は和同開珎。

 新湊の曳山は富山県内最多の13基(古新町、四十物町、長徳寺、東町、中町、荒屋町、奈呉町、法土寺町、紺屋町、立町、新町、三日曽根、南立町)の曳山が登場します。その一番山の「古新町」の曳山の創設は1650年(慶安3年)だとか。次いで「奈古町」、「中町」が1692年(元禄5年)の登場だそうです。

 ちょうど神楽橋のたもとで行列の出発を待っている先頭はその一番山の「古新町」。提灯にも「古」「新」「町」の赤い文字がばっちり入っています。標識は「鈷鈴(これい)」で、王様は諸葛孔明。提灯に覆われているので見えにくいですが、正面の提灯を吊していない一角の奥には「前人形」と呼ばれるからくり人形が仕込んであり、「古新町」の前人形は「唐子の太鼓叩き」だそうです。

 二番目に付けているのは「三日曽根」の曳山。標識は古代の硬貨の「和同開珎(わどうかいほう)」、王様は布袋さまです。三番目は「南立町」。標識は「五三の桐(ごさんのきり)」で王様は住吉大明神。

 こんな長い歴史のある素晴らしい曳山を一つ一つ飽きもせず眺めていたら楽しくてしかたないです。しかし今回の初めての新湊曳山はこのへんでお開きです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819010815.jpg ▲三番手は南立町。提灯山は夜10時頃まで続く。