毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

「さくら」でランタンフェスティバル⑥(映画「解夏」をたずねて)

イメージ 1 ▲長崎駅前電停で、蛍茶屋行きの路面電車。

 2005年2月19日、長崎市内めぐり。

 腹ごしらえをしたあとは、午後3時を過ぎてようやく映画「解夏」ロケ地巡りの散策に出ます。
 
 またまたさだまさしで辟易される方もいらっしゃるとは思いますが、もうちょっとだけおつきあいください。
 僕にとっての最初の長崎はさだまさしの唄によってもたらされました。以下はさだまさしのずいぶん古い「紫陽花の詩」という唄です。中学生の頃にこの唄を聞いて、蛍茶屋、鳴滝、思案橋、眼鏡橋、賑橋、新地、出島……ちょっと風変わりな地名に、ほとんど異国のように遠く見も知らぬ長崎へ思いをはせたものです。

                  紫陽花の詩
                            さだまさし
              蛍茶屋から 鳴滝までは
              中川抜けてく川端柳
              他人の心を胡麻化す様に
              七つおたくさ  あじさい花は
              おらんださんの置き忘れ

              思案橋から眼鏡橋
              今日は寺町 廻ってゆこうか
              それとも中通りを抜けてゆこうか
              雨が降るから久し振り
              賑橋からのぞいてみようか

              南山手の弁天橋を
              越えて帰るは新地を抜けて
              出島の屋敷は雨ばかり
              むらさき 夕凪 夢すだれ
              むらさき 夕凪 夢すだれ

 今回こうして長崎駅前まで来てみると、そこで見かけた長崎電気軌道の行き先表示幕に次々とこれらの地名が! 本当に長崎に来ているんだなとへんなところで実感しちゃいました。

 長崎駅前から歩くこと約5分、まずは中町教会にたどりつきました。原爆での倒壊後1951年に再建された白壁の立派な教会です。

イメージ 2 ▲中町カトリック教会。

イメージ 3 ▲静寂の中に白堊の塔がたたずむ。

 さっきまで長崎駅前の雑踏の中にいたような気がするのに、ほんの少し山手の小路へ歩み込んだだけでのどかでひっそりとした佇まいが続いています。
 中町教会から夾竹桃の木々に囲まれた中町公園を過ぎて筑後通りに入ると、お寺さんがずらりと並んでいます。その東のはずれのほう、大樟の樹のある観善寺のならびに映画「解夏」の重要なロケ場所である聖福寺があります。

イメージ 4 ▲聖福寺山門。

イメージ 5 ▲聖福寺境内。

イメージ 6 ▲聖福寺の鉄心禅師の鐘。

 上の写真は、ちょっと逆光で暗くなってしまいましたが、聖福寺の鉄心禅師の鐘の鐘撞堂です。
 「鉄心の鐘」は、現在は大晦日の除夜の鐘でその音色を聴くことができるのみだそうですが、映画「解夏」では主人公が、長崎では新年を迎えた瞬間に長崎港の船の汽笛と、中町教会の鐘とそしてこの聖福寺の鐘が一斉に鳴り響くのだと語り、それを聞いた主人公の恋人が「今年は一緒に聴けるね!」と二人が思いの中でその音を聴く場面が出てきます。
 この映画は長崎の街の表情を様々にとらえた映像もさることながら、その音と音楽がとりわけすばらしく、このワンシーンも汽笛と二つの鐘の音が重なって鳴り響くとても印象的で美しい場面です。僕も長崎でこの三つの音の重なり合いを耳にしながら新年を迎えてみたいです。

 聖福寺の裏手は、広大な斜面が一面の墓地になっています。映画「解夏」では主人公の家の墓がここにあることになっていて、その高みへのぼって振り返ると、映画の中で重要な役割を果たす「あの絵の風景」が一望できます。この日は曇り空で弱い光が雲の間から射すという天候でしたが、長崎の中心部をしみじみと見渡してしまいました。

イメージ 7 ▲長崎港。遠くに工事中の女神大橋が見える。もう完成したのでしょうね。

 次は市内を南へ下って路面電車で石橋電停へ出て、斜行エレベーター(グラバースカイロードっていうんですか?)で南山手へのぼり、少し歩くと、映画「解夏」で主人公の実家の所在地として撮影された大浦天主堂脇の細い坂道に出ます。長崎は坂のある町だということを実感できる界隈です。長崎の人たちはこの縦横無尽に続く坂道とともに生きているのですね。

イメージ 8
                              ▲坂のある町、長崎。

 その坂を、グラバー園を柵越しに眺めながらゆっくりと下ってくると、大浦天主堂の前に出ました。さっきまでの静寂が嘘のように、観光客の雑踏が作り出す賑やかさの中に放り込まれました。長崎は、一つの坂を越えるごとに、一つの角を曲がるごとに、いろいろな表情を見せてくれるようです。

イメージ 9 ▲大浦天主堂。

 まずいまずい、もう日が暮れる。早く新地へ戻らなければ!