毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

中国を走る現役SLを訪ねる旅(その12;ボタ山)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214136.jpgボタ山が広がる北票市の郊外。ここへSLがボタを運んでくるらしい。

 2011年6月12日、広大すぎるボタ山の連なり。

 明けて6月12日、再び北票煤業鉄路運輸部の事務所を訪れ、この日蒸気機関車は動くかどうか尋ねてみました。しかし答えは「日曜日なのでそもそも仕事がない」。なんじゃそら~。それなら昨日そう言ってくれよ。「明日の運用は明日じゃないとわからんから明日また来てくれ」って言うからこうして朝っぱらから来たんじゃないか。

 というわけで鉄路運輸部を離れ、車で走ること30分ほどに広がるボタ山地帯へ行ってみました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214110.jpg 足下は全部ボタ。

 ボタ山とは石炭や亜炭の採掘に伴って発生する捨石(ボタ)の集積場のことですが、北票煤業の炭鉱で採掘された石炭とともに出るボタの山が、この北票市郊外に広がっているのです。

 車で田舎道を走るうちに集落が尽き、なだらかな丘の続く田舎道を走ると、いつの間にか線路が寄り添ってきて、その線路と一緒に斜面をうねうねと登っていきます。のどかな田園風景が広がります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214105.jpg なんてのどかな。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214119.jpg 段々畑と林が広がる。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214115.jpg あれは村の廟かしら。

 緑豊かな丘を走っているのだと思いきや、いつの間にか足下がすべてボタになっていることに気づきます。釧路の太平洋炭鉱なんかにあるボタ山は見たことがありますが、ボタ山のスケールが違います。この場所は、長い年月をかけてボタが捨てられ続けた結果、巨大な丘陵地帯になり、しかも今も実際にボタが捨てられ続けているのです。今現在の捨て場所となっている部分は、斜面はボタが剥き出しで、ここがボタ山であることを確認させてくれます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214140.jpg 現在のボタ捨て現場。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214145.jpg 遙か向こうからボタが続く。

 線路は何度も枝分かれし、いちばん遠くまで行っている線路は、大きく右カーブを描きながら遙か向こうまで伸びています。時にはこのカーブをボタ捨て列車がいちばん向こうまで行ってボタを捨てることがあるのでしょう。そしてそのボタ捨て列車を、蒸気機関車が牽いてきていたのです。それはもちろん、北票煤業鉄路運輸部所属の「上游」型蒸気機関車でしょう。この大カーブを、黒煙を上げながら走ってくる蒸気機関車を、見たかったですねえ。でも日曜日なのでこの日は来ません。もうこのままずっと、蒸気機関車は来なくなってしまうかもしれません。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214126.jpg ボタ捨て列車の線路。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214131.jpg この大カーブをSLが走る。

 いったい、これだけのボタ山ができるまでどれぐらいの時間がかかるんでしょうか。冬の厳寒期にこのボタ山へ上ってくる蒸気機関車は、黒煙を吐き出し、白い蒸気に包まれて、さぞや勇壮なことでしょう。目をつぶると、一帯に響き渡る蒸気の野太い地響きのような音が聞こえてくるかのようです。

 ボタ山でできた斜面の谷底に、民家が見えます。周りが全部ボタ山で囲まれ遮られてしまっても、その谷底には農民が住み続け、農業を営んでいるのです。これもまたたくましいというかなんと言うか。

 線路の途切れた支線の車止めの上に乗って見渡すと、すぐ足下に真っ黒いボタの斜面があり、それが大カーブに沿って遙かかなたにまで続いています。今目にしているところ全部がボタ山。なんとスケールのでかい国なのでしょう、この中国という国は。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818214110.jpg ▲手前の足下もボタ。遠く電柱が並んでいるのが線路で、その下も全部ボタ。ボタ。ボタ。