毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

中国を走る現役SLを訪ねる旅(その10;旧北票駅)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213926.jpg ▲三角屋根が愛らしい駅舎とホームが見えるのは旧満鉄北票駅跡。

 2011年6月11日、満鉄北票線。

 北票煤業鉄路運輸部の車庫で余生を送っている「上游」型蒸気機関車を見学したあとは、再び鉄路運輸部の事務所へ戻ってきました。

 鉄路運輸部の事務所は線路脇にあるのですが、この線路がまさに石炭積み出し路線で、無蓋貨車の入れ替えが頻繁に行われています。我々もこの線路に立ち入って、積み出し場まで線路沿いを歩いて行きます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213930.jpg 線路を歩いて行ってみる。

 案内をしてくれている人が、積み出し場とは反対方向を指さして、「あの三角屋根の建物が昔の北票駅だ」とおしえてくれました。

 「昔の北票駅」―――それは、かつて満鉄時代に日本が造った駅であります。

 北票駅は、満鉄北票線の終点駅でした。

 今の瀋陽駅は昔の奉天駅ですが、この奉天と山海関を結ぶ鉄道が1932年(昭和7年)に満州国鉄に編入され、満鉄委託経営開始に伴って翌1933年に国鉄「奉山線」となります。その「奉山線」の「錦県駅」から北へのび、「義県駅」で西へ折れて「古北口駅」まで行っていたのが全長542.3kmの「錦古線」。

 この「錦古線」の、「義県駅」に近いところにあった「金嶺寺」から分岐して1934年(昭和9年)4月1日に制定されたのが「北票線」で、金嶺寺、口北営子、駱駝営、北票の4駅(うち純粋に北票線にあるのは駱駝営と北票の2駅のみで、他は錦古線の駅)のみ、全長は17.9kmでした。

 「北票駅」ができたのは、「北票線」制定の1年前、満鉄委託経営開始のときで、1933年4月1日のことです。当時からこの三角屋根が特徴だったようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213921.jpg 旧北票駅を遠望。

 「満州日報」の1934年10月7日~10月13日版に掲載された「更正北票の全貌」という錦州支局記者の記事には「錦州より百十二粁六北票支線の終点である此街は寧ろ炭砿街といった方が適当な位炭砿あっての存在である、換言すれば炭砿の盛衰は直接街の繁栄に影響して来る宿命的な関係にあるのだ」とあり、北票は錦州から112.6kmのところにあった古くからの炭鉱の町であったことがわかります。

 この旧北票駅、線路側からは三角屋根の駅舎とホームの跡が望めますが、反対側、つまり駅舎正面側は北票市の公安局(つまり警察)になっていて、おいそれと近づけないのが残念。

 そして旧北票駅の反対側へ線路沿いをしばらく歩くと、石炭の積み出し場が見えてきます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213938.jpg 石炭積み出し場。

 コンベアーか何かでどこぞからこの積み出し場に運ばれてきた石炭が、一階部分の引き込み線に停まった無蓋貨車に積まれ、現在の北票駅へ運ばれて貨物列車が編成され、全国へと輸送されていくというわけです。

 この積み出し場から北票駅までの貨車の移動を引き受けていたのが、さっきまで鉄路運輸部の車庫で見ていた「上游」型の蒸気機関車たち。それが、北票煤業の威信を賭けた(?)「東風5」型ディーゼル機関車の導入によって、終焉に向かおうとしているわけです。

 3両残っている現役「上游」型蒸気機関車のうち現在2両が故障して車庫入り中。では残りの1両は走るのか、と尋ねたところ、今日は走る予定はないとの返事。「明日は?」と尋ねたら、「明日聞きに来い」。残念ながら、この日はSLの走りを見ることはできなかったのです。

 その代わり、青い塗装の「東風5型」ディーゼル機関車が積み込み場を出入りして活躍しているのは目にできました。こうして蒸気機関車の淘汰が進んでいくのでしょうね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213942.jpg 単機で来た「東風5」型。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213946.jpg ▲「東風5」型は貨車を連結し、ゆっくりと石炭積み出し場へと戻っていった……