毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

中国を走る現役SLを訪ねる旅(その6;「上游」型蒸気機関車)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213648.jpg ▲「上游」型蒸気機関車1004号機の足回り。まだ油も乾いてなくて現役を感じさせる。

 2011年6月11日、北票煤業鉄路運輸部。

 おいしい昼食もたっぷり食べたので、それではこれからSLを見に行きましょう。

 中国では90年代まではかなりの勢力で蒸気機関車が活躍していましたが、日本と同様、徐々に淘汰が進み、正確にはわかりませんが、いわゆる中国の国鉄路線からは完全に引退してしまって既に久しいはず。確か2005年頃には完全撤退になったと記憶してます。

 その後は、炭鉱などの引き込み線や駅構内の入れ替え作業などに従事しつつほそぼそと生き長らえていましたが、それも次々と姿を消し、今や中国広しといえども、現役で働く蒸気機関車は風前の灯火であります。

 その中の一つが遼寧省北票市の炭鉱で活躍しているものの、それも6月いっぱいで姿を消すようだとの情報に接し、今回のSL探訪を決意するに至ったというわけです。北票には「北票煤業」(略して「北煤」)という炭鉱経営会社があり、採掘現場で掘り出された石炭を貨物列車に編成する駅まで運ぶのにSLが使われているというのです。

 そこで我々が勇んで出かけたのは「北煤」の鉄路運輸部。ここで担当者さんに会ったのですが、なんと現役SL3両のうち2両が故障して車庫に入っているとのことなので、まずはその車庫まで連れて行ってもらいました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213621.jpg レンガ造りの車庫。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213616.jpg 前には大型無蓋貨車。

 舗装されていない田舎道をがっくんがっくんしながら走って、車庫が並ぶ一帯に到着。鉄路運輸部の人に先導されて、敷地内に入ります。雨は上がっていたものの足下はぬかるみ、石炭の粉末などが堆積した地面を歩くと靴が真っ黒になりそうです。

 目の前に大きなレンガ造りの倉庫が現れました。日本にはレンガ造りの建物はあまり見かけないので、こうして見るとどっしりとして大陸的な風情があります。切妻部分には「1980」というのは創業年でしょうか、「北煤」鉄路運輸部のロゴマークとおぼしきマークが記されています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213626.jpg 「北煤」運輸部のマークかな。

 機関車が出入りする大きな扉は開けられないので、脇の作業員用のドアから中に入ります。

 いきなり目の前に、蒸気機関車がいました。火は入っていませんが、すごい迫力です。

 赤いプレートには「1004」の数字。この機関車は「上游」型と呼ばれる機関車で、その1004号機というわけです。後ろの炭水車には「上游1004」と入っています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213652.jpg 上游型1004号機。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213642.jpg 後方から眺めてみる。

 「上游」型蒸気機関車は1960年から1999年にかけて1,769両が生産されました(一説では1999年以降も製造され続け、総計1990両以上とも。)。もともと入れ替え用テンダー式蒸気機関車で、入れ替え用や各地の炭鉱、または区間運転用に設計されたもので、中国の工業用蒸気機関車では最多、生産期間が最長の蒸気機関車だそうです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213636.jpg ど真ん中にヘッドライト。

 「上游」型の基になったモデルは満鉄の日本製「ミカロ」型機関車。これを基に中国が設計製造したもので、当初は「工農」型と呼ばれていましたが、改良を経て1960年代に「上游」型となって登場します。唐山機車車輛廠、四方機車車輛廠、太原機車車輛廠等で製造され続けましたが、この1004号機に取り付けられた銘板を見ると、これは唐山で製造されたもののようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818213632.jpg 全長21m、全高4.2m。

 動輪周りや運転台などを見ると、ほこりをかぶっているわけでもなく、浮き出た油が鈍い光を放っているので、おそらくこれが最近故障したという一両なのでしょう。構内運転だけで走行距離も短く、速度もゆっくりだからか、デフなどは付いていません。

 全車引退が目前だけに、このタイミングで故障したのでは、もう復活はないかもしれません。というか、この記事を書いているのはもう7月ですから、既に引退してしまったかもしれません。走るの見たかったなあ。

イメージ 7
            ▲「上游1004」の運転台。上がってみたかったな。

イメージ 10
         ▲あまりSLには関心のない僕ですが、こうしてみるとかっちょええわぁ。