【社説】「和諧号」の「実名制」について
この週末は遼寧省北票市というところに行ってきたのですが、そのレポは次回からということにして、今日は「和諧号」の切符の「実名制」についてご紹介します。
中国では「和諧号」という愛称の高速鉄道が急激にネットワークを広げていますが、北京では(たぶん全国的にだと思うのですが)、6月1日から、この高速鉄道の切符の買い方に「実名制」という制度が導入されました。
「実名制」とは、切符を買う際に身分証の提示が必要で、乗車時にも身分証のチェックがあって、切符を購入した者と乗車する者が一致していなければならないという制度です。飛行機並みに厳しい制度が鉄道にも導入されたわけです。
目的はダフ屋撲滅ということらしいですが、ダフ屋撲滅のために乗客全員に面倒をかけるやり方は、「偉い人が自分で切符を買いに行くわけないだろう」とか「代理販売する旅行会社はどうすりゃいいんだ」とか、導入が発表されたときから非難囂々。結局、買うときは身分証のコピーがあればよく、代理購入可ということでスタートしました。
で、僕は11日に北京から錦州南まで「和諧号」のD25次列車に乗りましたので、「実名制」の実態をレポートいたします。
▲北京から錦州南駅までのD25次列車「和諧号」の切符。「実名制」の対象です。
▲こちらは北京発鞍山行き2549次列車の切符。高速列車ではないので「実名制」の対象外。
まず切符購入時。旅行会社に購入を依頼したところ、身分証のコピーをFAXで送れと言われました。我々外国人の場合はパスポートですね。自分で切符売場の窓口に出向く必要はないようです。
で、手に入った切符を見てみますと、確かにその切符には身分証番号(パスポート番号)が印字されています。
上の写真、上が今回乗った「和諧号」の切符、下が買ったけど使わなかった普通の列車の切符です。見比べてみると、上の写真には左下に「866」で始まるモザイクがけの数字が見えますが、これが僕のパスポート番号(最初のアルファベット2文字はなくて数字のみ)です。下の普通の列車の切符には、このスペースには何も印字されていません。
この切符を持って、11日の早朝、北京駅へ行きました。どこで身分証のチェックが行われるかが最大の関心事(^^)。
まず駅舎入り口のセキュリティチェック。切符を見て、荷物をX線検査機にかけることになっていますが、切符は見ずに、荷物を通すだけで通過。
駅舎の中に入って待合室へ移動。すでに改札が始まっていたので、入口でチェックされなかったんだからあとは改札のときだろうと思って改札を通ろうとすると、ただパチンと入鋏されただけで通過。
あれ、何のチェックもなくホームまで来てしまったぞ。あ、わかった。中国の列車は車両のドアごとに車掌さんが立っていて切符をチェックしているので、そのときだなと思って、指定された号車へ行ってみると、身分証のチェックどころか車掌さんも立っていなくて自由に乗れてしまった。
発車直後、車掌さんが検札に来ましたが、切符を見ただけで終わり。
いったい、パスポートのコピーを提出してまで買ったこの切符はなんなのだ。誰もチェックしてくれないではないか。「実名制」、これでいいのか。
「切符を買った者しかその切符は使えない」とするのであれば、改札のときにチェックすべきですが、あのものすごい人の数と押し合いへし合いの混雑では、入鋏するだけでもたいへんで、身分証との照合なんて物理的に不可能。「実名制」なんて最初からワークしないことはわかりきっているのに、どうしてこんなことやるんでしょうね。乗降が少なく小さい駅でなら厳しくやれるから、実際にチェックもしているかもしれませんが、北京駅などの大規模駅でやるからこそ意義があるのでしょうに。
というわけで、導入10日ですでに破綻した「実名制」の実態でした(^^)。(なお、すべての駅・列車でチェックが行われていないとは言い切れませんので、念のため。)