毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

青森を拠点にのんびり秋休み(その29;嗔の関(いかりのせき))。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818233643.jpg ▲近くの踏切から臨む碇ヶ関駅

 2010年10月9日、嗔の関(いかりのせき)。

 何も知らずにふらりと立ち寄った「道の駅いかりがせき津軽関の庄」で思いもかけずのんびり過ごすことができてしまい、時間は早や午後2時。そろそろ駅に戻らなければ。

 関所資料館と「関の庄温泉」の前にある駐車場から踏切が見えたので、そちらの道をたどってみます。すぐに線路に出て、碇ヶ関駅の構内が見渡せました。山に囲まれた小駅ですが、2面3線以外に引き込み線のような線路もあり、跨線橋鉄道模型の基本セットのような昔ながらの形です。

 踏切からその道をもどり、奥内プール「ゆうえい館」の敷地内をショートカットすればすぐに碇ヶ関駅へ戻ることができます。温泉に浸かっていた頃から天気は小雨模様になり、雨に濡れた碇ヶ関駅は人影もなく、黒く濡れたアスファルトが妙に広く見える駅前広場の奥に小さな駅舎がちょこんと鎮座しています。窓には、一年中つけたままなのか最近つけたのか、冬の豪雪に備えた雪覆いが打ち付けられていて、早や冬支度の装いです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818233649.jpg 雨に濡れた碇ヶ関駅

 アルミの引き戸を開けて駅舎の中に入ると、なにやらがらんとした風情。床面がコンクリートの打ちっ放しなので、この日の天気とあいまって、さらに寒々とした印象を与えます。入って左側が切符売場、右側が待合スペースで、倒木を利用して作った幼稚園児の椅子のようなかわいらしい腰掛けが円を描いて置いてあります。冬になるとこの真ん中に石油ストーブが置かれるのかもしれません。
 その奥には黒塗りの一角が。物置でしょうか。かつてはここにキオスクがあったんじゃないでしょうか。ストーブを囲み、キオスクのおばちゃんと四方山話をしながらなかなか来ない列車を待つ、なんてシーンはもうすっかり過去のものなんですね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818233659.jpg 寒々しい印象の待合室。

 駅舎に入って正面にはやはりアルミの引き戸の改札口があり、その上には発着時刻表がかかっています。下りは16本に対して上りは12本。青森・弘前方面から碇ヶ関止まりの列車が1本あるのと、碇ヶ関始発の下り列車が3本(不定期運行の12:48発弘前行きも含めれば4本)設定されているからなんですね。
 碇ヶ関には「いなほ7/8号」は停まりませんが、「かもしか」と「あけぼの」は停車するので、発着時刻表にもその愛称が記されています。でも「かもしか」の文字はもうまもなく消えてなくなります。それに代わってここには「つがる」の文字が記されることになるわけです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818233655.jpg 碇ヶ関駅の発着時刻表。

 改札口の外側(ホーム側)には出入り口の両側にちょうちんが吊してあり、「関所といで湯の里JR碇ヶ関駅」と筆が描かれています。日が暮れるとこのちょうちんには灯が点るのでしょうか。ちょうちんの明かりが迎えてくれる駅なんて、いいと思いませんか?

 碇ヶ関駅には「駅名の由来」と題する案内板も設けられています。全文を引用すると、こんな感じです。

 「かつては「嗔の関(いかりのせき)」と書きました。ここは、岩木川の支流平川の上流域にあたり、大部分が山地でその間の小盆地に集落がありました。ここではよく洪水が起き、これを「水の怒り」すなわち「嗔(いかり)」と称したということです。
 天文12年(1543年)、この里に、後に「厳重なること、箱根の御番所などの及ぶ事にあらず」とまでいわれた関所が置かれ「嗔の関」と呼ばれました。これが転訛して「碇ヶ関」となったようです。」

 「水の怒り」、「厳しくて恐い怒りの関所」、碇ヶ関にはそんな歴史があったんですね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818233705.jpg ▲関所といで湯の里、JR碇ヶ関駅。ちょうちんが迎えてくれる。