雨の夕暮れ、只見駅。
▲晩秋に雨で午後4時台でもはや暮れかかったような只見駅。
2004年10月30日、只見駅で起きていたこと。
6年前のネタをもうちょっと続けます。
静かに流れる只見川。
左にそれほど大きくない只見ダムと只見湖を眺めながら通り過ぎると、道は突然くねくねと曲がりくねった坂道になります。道が大きく曲がって方向を180度かえるたびにフロントガラスからの眺めがぐるりと180度回りますが、どちらを向いても、紅葉に彩られた山の斜面が迫ります。すでに紅葉のピークは過ぎ去って、枯れゆく褐色の木々と名残の紅葉が入り交じる中に雨が降り落ち、濃い暖色系の油絵の中に迷い込んだような気持ちになります。
濃色の紅葉がまだ残る。
標高をかせいだ上のほうには田子倉ダムがあり、田子倉湖が広がっています。もう少し山道を行くと只見線の田子倉駅があるはずですが、ダム堤の脇に駐車場があり、売店のような休憩所のような施設もあるので、そこに車を停めてダム堤を歩いてみることにしました。
ダムの向こうには眼下に先ほど通り過ぎてきた只見湖が細長くのびているのが遠望できます。只見湖に比べると、田子倉ダムの田子倉湖のほうがはるかに大きく、春から秋までの間だけ列車が停車する田子倉駅があるというのも、田子倉湖周辺がそれなりの観光地になっているということでしょう。天気が良い日に訪れれば、すごく気持ちよさそうだし、10月初め頃の晴天の日なら紅葉はさぞやすばらしいものであったでしょう。
田子倉ダムのダム堤。
只見駅に着いたのは16:16頃。なんとなく改札を抜けてホームのほうへ出てみたら、只見駅って駅舎からホームまでけっこう離れてるんですね。雨も降ってるし、ホームまでは上がらずに駅舎の軒先から撮った写真が冒頭の一枚。ホームには列車が停車しています。うまい具合に列車の入っているときに出くわしたようです。
当時の時刻表が今は手元にないので、手元にあるいちばん古い2006年3月の時刻表によれば 会津若松発小出行き427Dが只見に16:13着、16:20発となっているので、このときホームにいた列車はおそらくこの427Dでしょう。
ところが、この写真、ちょっと妙です。
写真に写っている列車は駅舎から見えている側のテールランプが赤く点っているので、会津若松のほうを向いているような気がします。列車前面の行き先表示幕も、はっきりは見えませんが二文字というよりは四文字書かれているように見えます。でも列車はこれから小出に向けて出発していくはずで、向きが反対です。
今になって改めて調べてみたところ、この年(2004年)は10月23日の夕方に新潟中越地震が発生しています。僕が只見を訪れたのはその一週間後の10月30日。当時のニュースを調べてみると、只見線は地震発生の10月23日から只見~小出間が不通になり、同年11月20日まで、只見線は会津若松~只見間で折り返し運転をしていたようなのです。
ということは、僕が只見駅で見かけた列車は、16:13に只見に着いたばかりの427Dが、折り返し18:00発の会津若松行き434Dになる支度をしていたということでしょうか。何年も前に撮った写真をなにげなく眺めていたら、実はそこにはその当時起きていた大きなできごとの影が写り込んでいたことを見つけてしまうなんて、なんだか不思議な気持ちになりますね。
田子倉ダム湖が広がる。
▲まだ紅葉の残る田子倉ダム湖周辺。天気がよい日だったらどんなによかったことか……。