毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

高句麗のふるさと五女山を訪ねて(その3;クルミ油)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211103.jpg ▲自生のクルミから生産したクルミ油。体にいいそうです。

 2010年7月31日、もう一つ特産品。

 世界遺産高句麗のふるさと五女山の旅レポをお届けしています。マイナーネタが続いていてちょっと申し訳ないですが、根気よくおつきあいくださいませ。

 前回は、五女山のある遼寧省本溪市桓仁県の新しい特産品であるアイスワインをご紹介しましたが、今回はもう一つ、どちらかというと昔からある特産品をご紹介します。

 それは、クルミ油。

 このあたりはわりと昔からクルミの産地として知られています。中国産のクルミは大きく分けて二種類あり、南方のクルミは殻が柔らかく手でつぶして中の実をとることができますが、北方のクルミは殻が硬くカナヅチなどでなければ割ることができません。桓仁県特産のクルミも殻が硬い種類なので、特産とは言え、そのままでは食べにくいわけです。そこからの発想だと思うのですが、ここでは新たな特産としてクルミ油が生産されています。その大手が2005年に設立された「遼寧長白仙子生物科技有限公司」。まあ大手と言っても田舎の町工場のようなもんですが。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211035.jpg クルミ油工場でございます。

 見せてもらった工場の設備は簡単なものでした。圧搾機が並んでいるだけ。搾れば油が出てくるんだからそれだけで基本は十分(もちろん瓶詰め工程もあるわけですが)。クルミの殻は硬く、割った中から実を取り出すのもたいへんで、いちばん手間がかかる工程ではないかと尋ねたところ、やはり人力に頼る他はなく、機械化はできていないとのことでした。ま、中国は労働集約的な生産業は大得意ですからちっとも困ることはないでしょう。工場の入口にいちばん近い棟が殻割り工程の建物だそうです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211041.jpg 殻割り工程の建物。

 工場敷地のいちばん前面、メインストリートに面したところには店舗があります。ここには「長白仙子」ブランドの製品がたぶん全部並んでいます。

 クルミ油って、僕は日本では一度も聞いたことも使ったこともありません。Yahoo!ショッピングなどで検索してみると、わずかですがヒットします。しかし、その多くが「めん棒の保護潤滑剤」「剣道の竹刀の手入れ」「木製品・木製家具・籐製品・竹細工の保護・ツヤだし」を用途としており、食品用にはフランス製のものがわずかに並んでいるのみ。日本ではまだほとんど知られていないようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211112.jpg 店舗には製品が勢揃い。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211118.jpg 箱詰めセットが多いですね。

 「長白仙子」ブランドの主な製品は4種類あり、まずは「紫蘇(シソ)の実油」。このあたりには野生のシソも多く繁茂していて原料には事欠かず、しかもシソの実には18種類のアミノ酸やα-亜麻酸、不飽和脂肪酸などが豊富に含まれ、酒飲みには肝臓を守るために大いに有用で、毎日5~10mlを摂取するとよいとか。また、妊婦さんは、懐妊後毎日10ml程度のシソの実油を摂取すると胎児の生育によいそうです。普通のシソの実油の他、女性向け「特級シソの実油」も出ております。240mlで49元(=約640円)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211057.jpg こちら普通のシソの実油。

 それから「ブドウの種油」。不飽和脂肪酸を豊富に含むほか、ポリフェノールの一種である天然植物成分OPCを豊富に含んでいます。他のポリフェノール類が腸間膜を素通りするのに対して、OPCは腸間膜で吸収されやすいので生理活性に優れ、しかも抗酸化能力はビタミンCの20倍、ビタミンEの50倍と非常に高いことが知られています。保湿やシミ取りなど女性の美容にはもってこいなのだとか。240mlで89元(=約1,200円)。

 そして「堅果油」。クルミやハシバミなど殻の硬い木の実の油にヒマワリ油とブドウの種油をブレンドしたものです。こちらは500mlで49.5元(=約650円)とおトクな感じ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211047.jpg ピンぼけですが「堅果油」。

 そしてメインの「クルミ油」。このあたりの山に自生するクルミは「長寿果」「益智果」とも呼ばれるように、赤ちゃんから老人まで、保健効果が高いとされています。このクルミを、熱が加わらない「冷圧」という技術で圧搾し丁寧に濾過することで作り上げたのがこのクルミ油!……って、ほとんど「長白仙子」の宣伝マンのようになってしまいましたが(^_^ゞ、490mlで198元(=約2,600円)であります。

 「日本ではクルミ油というのは聞いたことがないが、どうやって使うのか」と尋ねたら、「サラダのドレッシングを作るのに使ってもよいし、普通の炒め物を作るときに使うのでもよい。毎日スプーン一杯を直接飲むのでもよい」とのことでした。高血圧にも効果ありとのことだったので僕も買おうかなと思ったのですが、帰りの飛行機に持ち込むのが厄介だと思ってやめました。クルミ油とシソの実油はカプセルにしたものもありましたが、あれならよかったかも。

 ともかく、田舎で奮闘する姿には共感できるものがあります。すぐに全国進出というわけにはいかないでしょうけれど、地元の特産を活かして良い商品を創出し、やがては中国全土、そして海外へとここのクルミ油系列が広がったらいいなと思います。ていうか、僕もまずはクルミ油を使ってみなくちゃね!

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818211051.jpg ▲女性向け「特級」ラインナップ。左からシソの実油、ブドウの種油、クルミ油。