毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

帰省ついでの初「江差線」完乗(その5;江差追分)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818230948.jpg江差追分会館にて江差追分について学ぶである。

 2009年12月22日、ヤンサノエー。

 八雲駅前から乗ったバスを江差追分会館前のバス停で降りました。雪はすでに止み、さすがに道南、気温も札幌ほどは冷え込んではいないので、車道の雪はもう溶けてしまっています。しかし歩道などに積もった新雪はそのままで、なかなか歩きにくいです。

 道路を渡ればすぐそこが「江差追分会館」。日本の民謡の中の民謡と言ってよいであろう江差追分の歴史など「What's the 江差追分?」がばっちり学べる施設らしいです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818230943.jpg 江差追分会館正面。

 「追分」とは、もとは「牛馬を追い、分ける場所」の意で、転じて街道の分岐点を意味するようになり、例えば中山道と北国街道の分岐は「信濃追分」という地名で残っていますし、秋田県奥羽本線に駅がある「追分」も羽州街道と男鹿街道の分岐点だからついている地名ですね。

 各地の「追分」で歌われていた民謡が「追分節」。民謡「江差追分」の起源は信濃追分あたりで歌われていた馬子唄で、それが北前船の船頭たちによって江差へもたらされ、その後独自の発展を遂げたものだと言われているようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818230953.jpg 由来に関する展示です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231023.jpg 北前船の模型。

 会館の2階は木をふんだんに使った造りで、江差追分に関する様々な資料が並んでいます。【追分節の源流と足跡】、【歴史資料展示】、【思い出の名人】、【歴代優勝者の唄】、追分節や民謡関連の文献を集めた【追分文庫】など、なかなか充実しています。ニシン漁盛んなりし頃の番屋を模したものでしょうか、家紋か屋号を染め抜いたのれんのかかる門をくぐり、古い造りの日本家屋を懐かしみながら様々な展示物を見て回れるようになっています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231000.jpg 2階の展示室は昔懐かしく。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231018.jpg 展示資料はなかなか豊富。

 ところで、「追分節」の特徴の一つは、「はっきりした、明確な拍節を持っていないこと」なのだそうです。拍がはっきりしていないので、調子よくリズムに乗ってパンパンと手拍子を打てないのです。そして歌詞の一文字をうねうねうねうねと長く伸ばし、朗々と声を響かせて歌い上げます。下の写真がその譜面なんですが、こりゃまったく読めませんね。歌詞の最初は「国を離れて 蝦夷地が島にヤンサノエ 幾夜寝覚めの波」。枕音符に忠実にではなく、心と情で歌い上げるのが「江差追分」なのでしょう。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231006.jpg 江差追分の基本譜。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231010.jpg 各地の追分節が聴ける。

 江差追分の調べにのせて踊る江差追分踊りというのもあります。松前の殿様がアイヌのメノコ(女性)を集めて踊らせたことにはじまるという説もあるせいか、今でもアイヌの民族衣装を来た女性が船の櫓を手に踊るという形になっているようで、その模様を人形で再現した展示が、北前船の模型の隣に置いてありました。櫓を押す形や鴎の飛び交うさまが振り付けに取り入れられ、それが舞台踊りとして伝承されてきたのだそうです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231029.jpg 江差追分踊り再現図。

 会館1階には、畳百畳敷きの大きなホールがあります。立派な舞台もあります。4月下旬から10月下旬まで、ここでは毎日1日3回、江差追分と地元北海道民謡の実演が行われます。僕が訪れたのは12月なので残念ながら実演はありませんでしたが、そのようなオフシーズンには、来館者が希望すれば、江差追分の源流・変遷・全国大会の様子等を収めたビデオを、舞台上の200インチスクリーンで観賞することができるので、僕はこれをたった一人で百畳の大広間に座って楽しみました。1963年から毎年1回、江差町では江差追分全国大会が開かれ、全国から江差追分の猛者たちが集まってくるそうです。この難しい民謡を朗々と歌える人はスゴイ。生で聴いてみたいな。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818231038.jpg ▲百畳の大広間にたった一人座って江差追分を学ぶためのビデオを観賞しました。