甘粛省夏河から迭部へ(彼は歩いてどこへ行くのか)
▲左隅の彼はいったい歩いてどこまで行こうというのか。
合作市あたりの海抜は3,000m内外ですが、迭部県へ向かって海抜は多少下がるはずです。とは言っても迭部も海抜は2,450mとのことです。道路の両脇の景色は丘のような山のような傾斜の緩やかな斜面がゆるゆると続き、背の高い木はほとんど見あたらず、一面の草原です。このあたりに来ると羊や「毛牛(ヤクのことかしら?)」「チベット牛(藏牛)」なんかが放牧されているのが目に付くようになります。
ゆるやかな斜面がつづく。
あちこちで羊の放牧。
気持ちいい~~~。
四川省との省界が近づいてきたところで車を停めて休憩タイム。風が涼しく、爽やかです。高地の息苦しさは感じません。
道のすぐ脇には小川が流れていて、放牧されている羊たちがその川端で思い思いに草を食んでいます。まことにのどかです。そんな羊たちの脇を道がまっすぐに走っています。その向こうに広がっているのはひたすら続く高原です。車もたまにしか通りません。道は高原の中へ吸い込まれるように消えています。川辺で羊たちと戯れていると、南のほうから大型バスがやってきて北へと走り去っていきました。フロントガラスには「瑪曲-舟曲」とあります。四川省と青海省に挟まれた甘粛省の南西部マチュ県と南東部のドゥクチュ県を結ぶバスです。このあたりは「チュ(曲)」が付く地名がたいへん多いですが、これはチベット語で「水」という意味なのだそうです。清らかな水のある場所に集落があるのでしょうね。
高原を水が流れる。
バスが走り去っていった。
我々がこれから向かおうとしている方から、男性が一人、歩いてきました。彼は我々が走ってきた方向へ、ただ歩いていきます。さて、今走ってきた道に集落はあっただろうか?あったにしてもはるか手前だったような気がするのだけれど、彼はいったい歩いてどこへ行こうとしているのでしょう。彼の前にたちはだかる高原は、歩いて行くにはどう見ても果てしなく、人をして途方に暮れさせるに十分なような気がするのですが……
車の移動でもたいへんよ。
再び車に乗って走り出します。道の両脇の丘や山は後退し、地形はいよいよだだっ広い平原になってきました。そしてそのはるか前方に、雪を頂く険しい山脈が見えてきました。この季節にまだ雪があるということは標高4,000m以上の山々なのだそうです。この山々はきっと甘粛省と四川省の間に横たわっているのでしょう。あの山々を向こうに越えると、四川省の世界自然遺産「九寨溝」へと続いているはずです。
雪山が見えてきた。
しばらく走ると省界を越えて四川省に入りました。今僕が向かっているのは甘粛省の迭部県ですが、四川省を経由しないと行けない場所だというのがちょっとスゴイです。「タクツァン・ラモ(郎木寺)」というこのあたりで有名な寺院が近くなってきました。そこへ向かってこの街道をひたすら五体投地で進む人々の脇を走り抜け、とある小さな集落がある場所でその幹線道路から分かれ、左へと進路をとりました。左へ折れずにまっすぐ行けば四川省をずんずん南下していくことになりますが、左へ折れるとほどなくして再び甘粛省に入るはずです。小さな川にかかる橋を渡り、集落と雪山を見ながら、未舗装のダート道へと踏み入りました。
▲幹線道路を左に折れて橋を渡ると道は未舗装に。目的地まであともう少し。