毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

2010春・新疆に行きたい心境(その11;できたての車内弁当)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205105.jpgタクラマカンの北辺を走る南疆線の車窓風景。並行する国道をバスが行く。

 2010年3月10日、車内弁当。

 カシュガルを08:13の定刻に発車した7558次列車は、まだ漆黒の闇を快調に走ります。各駅停車の普通列車ですが、次の駅アトシュまでは35km、その次の巴楚まではアトシュから210kmもあります。隣の駅までの駅間が210kmもあるんですよ!

 そうこうしているうちに夜が明けてきました。明るくなって外が見えるようになると、目に映るのはただ荒涼と広がる砂漠ばかり。タリム盆地タクラマカン砂漠の北辺です。砂漠というよりは砂礫漠ですね。道路が並行して走っていて、時折トラックやバスが走っていくのが見えます。1991年にウルムチからカシュガルへ初めて行ったときはこの南疆線はまだなかったので、今車窓から見えるあの道路を二昼夜かけてバスで行ったんですねー。

 さて、7558次列車、機関車を除いて16両編成のようです。端から端まで歩いてみたわけではないですが、荷物車(電源車)が2両、二階建て硬座車(普通座席車)が9両、硬臥車(開放式三段B寝台車)が1両、乗務員用の硬臥車が1両、餐車(食堂車)が1両の14両編成で、いちばん前が2号車(荷物車)、いちばん後ろが15号車(荷物車or電源車)です。我々が乗ったのはたった1両しかつながっていない4号車の硬臥車。カシュガル発が朝の08:13で下車駅のクチャ到着が18:53で、車内で夜を明かすわけではありませんが、それでも寝台券は購入できます。カシュガルからクチャまで、我々は完全ヒルネ状態です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205110.jpg 「硬臥車」の車内。

 三段寝台ですが、下段は中段や上段の客に勝手に座られたりするし、夜中も車内販売が行き来して上段は高さが低くて狭苦しいので、中国の「硬臥」は中段がベストと言われています。天井までの高さが高いので、三段式でも各寝台は日本の二段式B寝台と同じぐらいの高さが確保できています。日本の寝台車との大きな違いは、寝台にはカーテンがないので寝姿が丸見えになるということと、枕元に読書灯がないので消灯されると車内に明かりがなくなり寝るしかなくなるということです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205117.jpg これは中段ですね。

 カシュガルを出て最初の駅アトシュ着が08:46、その次の巴楚着が11:40、このあたりで車内販売員が弁当を売りに来ます。我々の乗っている硬臥車の隣の車輌は「餐車(食堂車)」ですが営業はしておらず、車販基地として使われるとともに、大勢乗り組んでいる乗務員がたむろする場所になっています。その餐車の厨房で弁当を作り、それを車販が売りに歩きます。だから、中国の列車内ではだいたい作りたての弁当を食べることができるんです。一個10元(=約130円)と値段は高めで、ものすごくおいしいというわけでもありませんが。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205122.jpg 車販が売り歩く弁当。

 地平線が霞む荒涼茫漠としたタクラマカンの風景を眺めながら弁当を食べるなんて日本ではなかなかできることじゃありません(ていうか、ゼッタイできない)。おかずはなんですか。野菜炒めが三種類入ってますね。10元という値段に少し抵抗があるのか、この弁当はすごく売れ行きがよいわけではありません。多くの乗客が車販からカップラーメンを買って、車内に備え付けのポットからお湯を注いで食べています。車内にポットがあってお湯やお茶を自由に入れられるのは便利でいいです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205127.jpg 砂漠を見ながらランチタイム。

 13:08、柯坪到着。砂漠の中にぽつんとある小さな駅です。駅舎自体はなんのへんてつもない四角い建物で、この季節は木も枯れていてほとんど周囲の砂漠と一体化していますが、緑潤う季節に来れば、駅そのものがタクラマカンの中のオアシスのようになることでしょう。そんな季節なら、砂漠を走り続けてきた列車も、オアシスでひと息付くという気分になれるんじゃないでしょうか。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205133.jpg 柯坪到着。

 柯坪の次の駅は49km先の「金銀川」駅で13:47の到着。近くに砂金砂銀のとれる川でもあるのでしょうか。

 金銀川駅では下り列車との交換があります。こちらは13:47着ですが、交換する相手のウルムチからのカシュガル行き7557次列車は13:43着の予定なのにまだ到着していません。2面2線の反対側のホームには、大きなずだ袋を持ったウイグル人が駅員と談笑しながら列車を待っています。金銀川駅は各駅停車の普通列車しか停まらない駅なので、一日に上り一本、下り一本しか列車はやってきません。一日にたった一回しかやってこない列車をのんびりと待つ姿はまことにもってのどか。こんな駅で途中下車してみたいけれど、いったん降りたら24時間後じゃないと次の列車はやってこないのですから、なかなかできませんね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205139.jpg 13:47、金銀川到着。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818205144.jpg ▲駅員とおしゃべりしながらカシュガル行きを待つ人たち。