毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

上海小楊生煎館

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204403.jpg ▲上海呉江路小楊生煎館の焼き肉まん。

 新年あけましておめでとうございます。みなさまどんなお正月を迎えていらっしゃるでしょうか。こちら北京はどんより曇った真冬日の寒い元日になりました。

 さて、2010年最初の記事は、先日上海で行った「小楊生煎館」です。

 「生煎」とは一言で言えば焼き肉まん。小ぶりな肉まん(「包子(ぱおず)」というやつですね)を巨大な鉄板に敷き詰めて蒸し焼きにしたもので、下は焦げ目がばっちりついてカリカリ、上には仕上げにゴマとネギがたっぷり散らしてあります。上海の「小楊生煎館」はとりわけ有名でガイドブックに必ず載っています。僕は上海では「生煎」を食べたことがなかったので、日本から北京へ戻る帰りに立ち寄った上海で2009年12月27日、初めて「小楊生煎館」に行ってみることにしました。

 「小楊生煎館」は上海市内に何店舗もあるようですが、有名なのは呉江路店。静安寺から散歩がてら南京西路をのんびり歩いて呉江路に入ります。この日は上海にしてはかなり寒い日で、しかも途中から冷たい雨が降り始めましたが、なんとか本降りになる前に店にたどり着くことができました。

 なんと、まだ11時を回ったばかりだというのに、狭い間口の店の前には行列が。やっぱり庶民の胃袋を支えるお店は大人気なんですね。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204414.jpg 11時でも途切れない行列。

 店の右側に座っているレジのおねえさんに注文してレシートをもらい、行列の後ろに並びます。店の中央では、奥のほうで次々と焼き上がる生煎の巨大鉄板から、客の注文に応じて別のおねえさんが手際よく焼きたてあつあつの生煎を皿や持ち帰り用のパックに取り分けてくれます。生煎が敷き詰められた巨大鉄板、おねえさんの手際の良さ、そしてごった返している店内にすっかり圧倒されてしまいます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204331.jpg ▲焼き上がった生煎の巨大鉄板からみごとな手際でおねえさんが取り分けてくれます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204337.jpg 店内は狭い!

 僕も生煎12個と、店内1階奥にいるおばさんから魚のすり身団子のスープ(カレー味)を受け取り、2階へ上ります。2階もたいそう狭く、その狭いスペースにめいっぱい置かれたテーブルと椅子は満席で、みんな肩を触れ合わせながらすごい勢いで生煎を食べています。僕もしばらく立ったままで席が空くのを待ち、ようやく空いた席に座って、初「生煎」にチャレンジです!

 テーブルの上にはお茶のポットが置いてありますが、実はこれは生煎を食べるための醤油ダレが入っています。これを小皿にとって食べ始めます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204349.jpg 2階もびっしり。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204354.jpg 生煎12個とスープ一碗。

 さてでは1個めの生煎をガブリ。あつつっ!なんと、生煎の中にはあつあつの肉汁がたっぷり入っていて、これが実においしい。醤油ダレに付ける必要がないぐらいです。生煎にかぶりつくと思いもよらぬ方向へ肉汁がほとばしり出てくるので注意が必要です。まずこの肉汁をすすり、それから醤油ダレをちょっと付けて皮と中の肉餡にかぶりつくという感じでしょうか。肉汁はごくあっさりした味でくどくなく、焦げ目がいささか焦げ過ぎなような気もしますが、とにかくぱくぱくとあっという間に12個を完食してしまいました!

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204359.jpg 底はちょっと焦げ過ぎ?

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204408.jpg ゴマとネギで香ばしく。

 食べ終わって店を出る頃には店内はますます混雑を極めていて、人一人がようやく通れるような階段を上り下りし、店内を通り抜けて外へ出るのもたいへんなありまさ。外の行列も長く伸び、いよいよランチタイム本番という感じになっていました。

 しかしながら、この呉江路界隈は、昔ながらの町並みにB・C級グルメの小さな店がたくさん軒を連ねるスポットとして長く上海人の胃袋を満たし、観光客の定番スポットにもなってきたようですが、最近の都市開発の波に呑まれ、この一帯は完全撤去、取り壊されることになったようです。すでに一帯のほとんどの建物は立ち退きが済み、工事用の壁で覆われているところも少なくありません。軒を連ねていた小さな店々もほとんどが既に店終いし、周辺は閑散とした雰囲気が漂っています。

 この「小楊生煎館」のすぐそばにも「小楊生煎 告知」という看板が出されていて、「小楊生煎館」も近々店終いすることが告げられていました。その告知には「呉江路店はまもなく閉店しますが、市内にはいくつも直営店があり、オリジナルの味(原文は「原汁原味」)を保証いたしますので、常連の方も新しくいらっしゃる方もどうぞ市内各店へ再びいらしてください」というようなことが書いてあり、市内16店舗の住所が記してありました。いつ閉店かその具体的な日付は書かれていませんが、周囲の様子からすると、閉店はそう遠くない感じがしました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204419.jpg 閉店の告知。

 市内に16店舗もあれば、この呉江路店がなくなっても小楊生煎館の味が失われることはないでしょうし、いつでも気軽に食べにいくことにも変わりはないでしょう。しかし、もっとも有名だった呉江路店が閉店になるのはいささか寂しい。それに、僕にとっては、初めて訪れた小楊生煎館が偶然にも呉江路店で、しかも次に来たときにはこの店はもう取り壊されて存在しないかもしれないのです。そう思うとなかなか立ち去りがたいものがありましたが、冷たい雨も少々強くなったようです。満腹の満足感を抱えて、小楊生煎館呉江路店をあとにします。ごちそうさまでした。次にきたとき、この呉江路界隈はどんな変貌を遂げているのでしょうか。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204424.jpg 生煎館に冷たい雨。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818204344.jpg ▲取り壊しと再開発が決まった呉江路界隈。小楊生煎館も近々店終い。