毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

宗谷岬でタコしゃぶplease!(その6;「伽倻子のために」)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818141555.jpg ▲森駅を走り去る特急「スーパー北斗9号」。

 2009年9月5日、森駅で下車。

 函館を定刻に発車した「スーパー北斗9号」は、次の五稜郭駅にも停車し、それから七飯渡島大野と標高を上げながら山間区間へ入っていきます。281・283系気動車は勾配区間を苦もなく駆け上がっていき、五稜郭駅からわずか14分で大沼公園駅到着です。山間区間を越えると函館市内とは天候が変わり、雲の多い空になりました。車窓右側には大沼、左側には小沼が林の向こうに垣間見えますが、青空が切れ端のようにしか見えない天候ではなんとなくくすんだ印象です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818141547.jpg ちらりと大沼が見えた。

 晴れていれば車窓右側には美しい形の駒ヶ岳が見えるところですが、残念ながらもはや雲がたっぷりたちこめ、駒ヶ岳はまったく見えません。残念!

 列車は駒ヶ岳の西麓をたどるように北上し、大沼公園駅から16分で森駅に到着です。僕はここで下車します。1番線に降り立つと、木材を使って作った駅名標が迎えてくれました。「スーパー北斗9号」はわずか1分の停車ののち、再び爆音をたてて森駅を発車していきました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818141551.jpg 森駅1番線に到着。

 森駅にはずっと以前から降りてみたい降りてみたいと思っていました。一つには、森駅の名物駅弁「いかめし」を海の見える森駅のホームで食べてみたかったからです。
 確かに、森駅のホームは、かつて長大編成の特急や急行が往来していた頃を偲ばせる長いホームが今も残っていて、函館方面へ長く伸びるホームの先のほうへ行ってみると、森駅からの海の近さが感じられます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818141559.jpg 向こうはすぐ海。

 森駅で下車してみたいもう一つの理由は、李恢成原作の小説を映画化して1984年11月に公開された小栗康平監督の映画「伽倻子のために」です。女優南果歩のデビュー作となったこの映画を僕は大いに気に入り、東京で単館上映されていた岩波ホールに2回か3回見に行きました。この映画に、森駅が登場するのです。主人公たちが大沼公園の桜祭りの日に露店を出すために大きな荷物を抱えながら森駅で列車を待つシーンです。この映画を見てからというもの、僕は実際に森駅のホームに立ってみたくなり、以来ずっと森駅へ行きたいと思うようになったのです。

 跨線橋の上から「スーパー北斗9号」を見送って振り向けば、2番線にはキハ40が2両停まっています。手前は13:24発の長万部行き普通列車893D、奥のほうは13:19発の赤井川、大沼公園経由函館行き普通列車4834Dのようです。そのホーム越しに、噴火湾の海が広がっています。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818141604.jpg ▲森駅の2番線に停まる長万部行きと函館行き、その向こうに噴火湾