毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

またまた「あけぼの」に乗りました(その4;象潟で降りた人たち)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224008.jpg ▲上り「あけぼの」、秋田到着。ブラインドももうほとんど降りた。

 2009年6月4日に乗った上り「あけぼの」の乗車記です。

 「あけぼの」が県境を越えて秋田県に入る頃には車窓の向こうは真っ暗になりました。いよいよ夜行列車の風情です。

 東能代には20:11の到着。おや、隣の線路に列車が停まっています。おお、これは新潟発青森行きの2007M特急「いなほ7号」ではありませんか。上沼垂色の485系3000番台のようです。残念。国鉄色に戻ったT18編成ならよかったのに……。「いなほ7号」は20:10に東能代に着いて「あけぼの」の到着を待ち、ここで交換して双方が20:12の同時発車というダイヤになっているようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818223955.jpg 「いなほ7号」と並びました。

 東能代から走ること約50分、21:04に秋田到着です。車窓からは秋田新幹線のホームに「こまち」が休んでいるのが見えます。もう上りの「こまち」はありませんが、東京からの下り「こまち」はもうあと3本やってくるはずです。時間はまだ午後9時をちょっと回っただけですが、ホームの端っこのほうになる「あけぼの」の2号車あたりはすでにひっそりとしています。それでもさすが秋田、「あけぼの」にもそれなりの乗車があったようです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224013.jpg 秋田「こまち」。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224001.jpg 色ガラスの向こう。

 「あけぼの」が秋田を発車して、僕も自分の寝台に戻ると、向かいの寝台の上下段に乗客が入っていました。一見しておばあちゃんと孫娘という二人連れ。僕が戻ると、おばあちゃんのほうが「こんばんは、よろしくです」と声をかけてこられたので、僕からも「あ、はい。どちらまでですか?上野ですか?」と声をかけました。そしたらそのおばあちゃん、「いえ、違います。象潟まで」。

 「ああ、そうですか、象潟までですか。………ええっ??キサカタ???」

 象潟って「象潟や雨に西施がねぶの花」の象潟?すぐ着くじゃないですか。聞けば、そのおばあちゃんは愛知県に住んでいるのだけれどももともとは象潟の生まれで、象潟にいるお兄さんが亡くなったので、小牧空港発秋田行きの飛行機で駆けつけたのだけれど、飛行機に乗る前に名古屋の旅行社でチケットを購入した際、秋田到着後象潟まで行けるのは「あけぼの」しかないと言われて乗ったのだとのこと。

 確かに、時間帯としてはもう「あけぼの」しかありません。しかし、「ゴロンとシート」は満席なのでしょうか。「あけぼの」のヒル区間羽後本荘までなので象潟行きには使えませんが、「ゴロンとシート」ならどの区間でも指定席特急料金だけで乗車できます。そういう車両が2両ついているのだけれども、そのことは切符を買うときに言われませんでしたかと尋ねてみると、「とにかく『あけぼの』しかないと言われて、言われるままに切符を買った」ということらしい。

 「あけぼの」が通るわけでもない名古屋の旅行社が「あけぼの」に「ゴロンとシート」なるものが連結されていることを知らなかったとしても無理はないなあとは思いつつ、たった1時間の乗車なのに「ゴロンとシート」があることを告げずに寝台券を一方的に販売したのは、旅行社の仕事としてお粗末と言わざるを得ません。この二人連れは、たった1時間の乗車のために、「ゴロンとシート」に乗れば払わなくても済む寝台料金6,300円×2枚=12,600円を何も知らずに払っているのです。

 そこで、検札に来た車掌さんにこの経緯を伝え、「ゴロンとシートが満席ならばしかたがないが、もし空席があるのなら、ゴロンとシートの存在を告げずに寝台券を販売したことには問題がある。ゴロンとシートへ移れるよう配慮していただけないか」とお願いしました。車掌さんは、うーんうーんと唸りながらも「ちょっとお待ちください」と言って去っていきました。

 しばらくすると、車掌さんが戻ってきました。「ゴロンとシートには空席があります。象潟駅には連絡を入れておきましたので、駅員はもう事情を知っていますから、降りたら駅員に申し出てください。ただ、駅員はいますが機械はもう止まっているので、払い戻しの手続は明日改めて駅に来ていただかなければなりません」だそうです。おばあちゃん、「あらあ、よかったわあああ」と感激の面持ち。ゴロンとシートの1号車か8号車に移らなければなりませんかと尋ねたら、車掌さんは頭をかきながら「うーーん、指令ではゴロンとシート車両にご案内するようにとのことなのですが、まあいいでしょう。ここにこのままいらしてください」。スバラシイ。久しぶりにJRの心地良い対応を見た。とってもやさしい車掌さんでした。ありがとうございました。

 それから象潟までのしばらくの間、おばあちゃんと僕は四方山話に興じ、あっという間に下車駅の象潟駅に着きました。車窓からホームを眺めていると、ホームに降りたおばあちゃんと孫娘がにこにこしながら手を振ってくれました。よかったよかった(^^)。翌日からはお通夜やお葬式などでばたばたするのでしょうけれど、すごく久しぶりの帰郷だとおっしゃってましたから、少しでも久しぶりのふるさとを楽しんでくれたらいいなと思います。

 象潟を出た「あけぼの」は、遊佐に続いて酒田に停車。22:42です。

 あれ、酒田駅のホームに見慣れないカラーリングの気動車が停まっています。2両編成で酒田方の車両はいつもの新潟色ですが、新潟方の車両はどうも見慣れない。時刻表を見てみると、「あけぼの」の到着するわずか1分前の22:41に酒田に到着する鶴岡からの普通列車233Dというのがありますが、これでしょうか。酒田あたりと言えば映画「おくりびと」のヒットで訪れる人が急増しているそうですが、もしかしてこのキハ、「おくりびと」仕様??(^_^ゞ

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224019.jpg すでに深夜の酒田到着。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224025.jpg このキハはなんだ?

 酒田を発車して11分で余目、そのあとは鶴岡。「あけぼの」は深夜帯に入ってもこまめに停車していきます。鶴岡を出たところで僕は横になることにいたしましょう。ここまでで、我が2号車の乗車人員は、さっき象潟で降りた2人も含めて12人。さっきの孫娘が上段を使ったほか、もう一人上段に入っている人がいます。木曜日に下段が三分の二以上埋まったのですから上出来ではないでしょうか。

 このあと「あけぼの」はあつみ温泉、村上、新発田、新津と停まって、それから先は高崎まで旅客扱いはありません。羽越本線内は単線区間が多く、駅を通過する度に大きく揺れますが、それも夜行列車の楽しみのひとつ。体を揺れに任せて、眠りに就こうと思います。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818224033.jpg ▲22:55、余目到着。そろそろ眠りに就く時間。