毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

「日本海」でいったりきたり(その25;いぶりがっこときのこ汁)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123557.jpg ▲秋田と言えば「いぶりがっこ」。

 2006年11月27日、「妙乃湯」の夕食。

 温泉宿で温泉に浸かったらその次の楽しみはと言えばやはり食事でしょう。

 「日本海1号」から秋田内陸縦貫鉄道田沢湖線、そしてバスを乗り継いでやってきた体を「金の湯」「銀の湯」の温泉にたっぷり浸して温まったあとは、お楽しみの夕食です。このお宿では部屋食などではなく、畳敷きの大広間に集まってそれぞれに食事を楽しみます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123536.jpg 前菜とアペリティフ

 席に就くとまずは食前酒として自家製の果実酒と前菜が並んでいます。食前酒は食前酒として、まずは風呂上がりのビール。これを飲まずにはいられない。それからおもむろに箸をつけていきますが、いつものことながら、日本料理というのは食材もさることながら、この器へのこだわりというのが素晴らしいです。器を愛で、料理を味わうというのはやはり日本料理ならではでしょう。


 日本はどこへ言っても豊かな食文化がありますが、秋田ももちろん「秋田と言えば」と言えばぞろぞろと名物が出てくるような土地柄です。その「秋田と言えば」の最初の品は「稲庭うどん」。主食としてではなく、小鉢でさらりといただきます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123544.jpg アユもまたうまし。

 もう15年も前に死んだうちのばあさんに言わせれば、「今のアユだのかれだもんでね。皮ばしあづくて身もかでしてなんもめぐね(青森方言で;訳:今のアユだなんて食えたものではない。皮ばかり厚くて身はかたくて全然おいしくない)」ということになるそうで、今のアユはちっともおいしくないのだそうですが、昔のアユを知らない僕にはそれでもおいしいです。ほっくり焼き上げたアユにこのままかぶりつくのがいちばんおいしい食べ方です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123552.jpg この器もいいですね~。

 厚揚げ様のものに、大根おろしを載せ、それに混じっているのはトンブリでしょうか、ナメコを散らした汁に浸した一品。これも鉢物ですが、この鉢がまたなかなか素晴らしい。いえ、僕は別に陶器の類に詳しいわけではなく、まったくの素人なんですが、なんかこの器が妙に気に入ってしまいました。

 それから、「秋田と言えば」と言えばはずせないのが「いぶりがっこ」。大根などを囲炉裏の上に吊るして燻製を作るように干してから漬け込んだ漬け物のことで、平たく言えばタクアンの燻製と言ったところでしょうか。秋田名物の筆頭を争うほど有名な「いぶりがっこ」、表面は燻されて黒ずんでおり、ふつうのタクアンよりも歯ごたえがあります。一口食べると燻製の香りがほのかに漂います。秋田ならどこのおみやげ屋さんでも手に入るのがこの「いぶりがっこ」ですが、改めて食べてみると確かにおいしい。雪の多い地方で野菜を天日で干すことができず、室内に吊して火を焚いて干したのが始まりだそうですが、これも素晴らしい生活の知恵から生まれたものなのですね。

 そしてこのお宿の自慢の料理がもう一つ。「きのこ汁」です。食事処になっている大広間の一角に囲炉裏が掘ってあり、熾した炭火の上に大きな鉄釜がかかっています。そこで煮えているのが「きのこ汁」。たっぷりのきのこにシラタキやネギを散らして煮たきのこ汁は素朴にして深い味わい。お宿のおねえさんがかいがいしく立ち働いて、きのこ汁をついで回ります。おかわり自由というのもうれしい。僕はこういう汁物が大好きなんです。青森でも僕の両親なんか5月頃になるとそのへんの山に入ってキノコを採ってきますからきのこ汁なんて僕には全然珍しい食べ物ではないけれど、いつも食べるものだけに、本当においしくなければ食べる気にはならないはずで、ここのきのこ汁は三杯もおかわりしてしまいました。

 あーー よく食べた。また温泉に浸かって消化を促進しなければ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123549.jpg 自慢のきのこ汁。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818123602.jpg ▲食事処の大広間の一角に掘られた囲炉裏では、たっぷりきのこ汁の入った鉄鍋が温まっています。