厳冬の中国最北端をゆく(その25;最終回)
▲ハルビン駅に到着したN58次列車。一両ごとに車掌さんが下車客を見送ってくれます。
2007年1月9日、キタイスカヤ。
チチハルで車内ががらんとなった列車は、朝のけだるい雰囲気に包まれながらラストスパート。そして11:32、N58次列車は定刻にハルビン駅に到着しました。列車の終点であるハルビン東駅は列車の運行上必要だから便宜的に行くだけで(おそらくハルビン駅に始発終着列車をあまり滞留させられないからだと思います)乗客のほぼすべては終点一つ手前のハルビン駅で降りてしまいます。この日も寒いけれど青空の広がるよい天気です。駅前に出てみると、4日前の夜にここを出発したときにはよく見えませんでしたが、駅前広場にも氷の彫像が作られていて、氷祭り気分を高めています。
ハルビン駅と駅前の氷像。
時間はちょうどお昼時。連れの勧めに従って、ロシア料理を食べに行きました。かつてキタイスカヤと呼ばれた中央大街には今も20世紀初頭に建てられた西洋風の建物が残り、ロシアの街角を思わせる雰囲気が漂っています。このあたりにロシア料理店が何軒かあるので、今回の旅のしめくくりはロシア料理を奮発しようと思います。
キタイスカヤ中央大街は石畳の風情あるストリート。以前は車も走っていましたが、今は車は通行止めとなり、歩行者専用となって当時の西洋建築が並ぶ観光スポットに変貌を遂げています。これから行くロシア料理店も、そんな西洋建築を巧みに使ったお店の一つ。そのはす向かいにはケンタッキーフライドチキンもありますが、なんとケンタまで20世紀初頭の西洋建築です。
ロシア料理店。
ケンタまで西洋建築。
ゆっくりまったりと、赤ワインを開けてロシア料理を楽しみ、お茶が済んでしまえば、今回の僕の中国最北端への旅はもうまもなく終わりを告げます。最後はハルビンの空港から瀋陽行きの飛行機に乗って、わずか1時間のフライトを残すのみ。
快晴の上空から見える地上は凍て付いています。凍った大地に、ゆっくりと夕闇が迫ってきました。新年が明けたばかりの中国東北地方の大地に春が訪れるのはまだまだ先のこと。しかし、今回中国最北端の村で、これほどまでに厳しい寒さの中でたくましく暮らしている人々の姿を目にしました。やがて春が訪れ、雪と氷の下から最初に顔を出す黒い土、割れた氷の割れ目から最初に顔を出す黒龍江の黒い流れは、彼らの目にはどんなふうに映るのでしょう。そんなことをぼんやりと考えていたら、飛行機はもう降下を始めていました。もうすぐ瀋陽に着きます。
夕闇迫る北の大地。