晩秋初冬すてきなニッポン(その13;広電5号線)
▲広島港電停で発車を待つ比治山下経由広島行き路面電車。車両は750形。
2008年11月24日、雨止まず。
雨は降り止みません。09:05、松山からのフェリー「翔洋丸」は定刻に宇品の広島港に到着しました。車両を積載している船舶は旧ターミナルの桟橋のほうに着くようで、下船してからターミナルビルまでかなりの距離を歩かねばなりません。屋根がかかっているので濡れることはありませんが、それにしても寒いです。
広島港電停から広電の路面電車に乗ります。広島駅へ出るためには比治山下経由の5号線に乗るのがいちばん早く、30分足らずで行くことができます。やってきた車両は750形の772号機。なんとまあレトロな車両ではありませんか。1960年代に大阪市交通局から購入したものだそうですが、製造は1940年代。それでも現役というのだからたいしたものです。後ろには、頭に二つ並んだダブル前照灯の1900形がいます。もと京都市交通局の車両だったということで京都にゆかりのある愛称がつけられていて、前日見かけた1902号機は「桃山号」でしたが、この日は1908号機で「あらし山号」でした。
宇品からは3路線がある。
▲雨に濡れたフロントガラスの向こうにいるのは京都からやってきた1900形。
車内は分厚い板張りの床に壁、そしてえんじ色のロングシートが並んでいます。いちばん後ろに陣取って、後部運転席を眺めながら広島港を出発します。皆実町六丁目までは、広島市の繁華街へ向かう1号線、3号線と併用なのでさまざまな種類と行き先の電車がいきかいます。皆実町六丁目から的場町までは5号線の単独区間。772号機は雨の中をたんたんと走っていきます。
冷たい雨のそぼ降る中を、広島駅前へやってきました。それにしても広島は路面電車が発達していて、とても便利です。一日乗車券や宮島観光を含めた一日乗車乗船券などもあるようなので、ゆっくり時間をかけて広電の旅をしてみたいものです。
雨の中をがたんごとん。
▲772号機の運転台。むき出しのパイプや真鍮製の部品など、無骨だけれどどこか温かい。