毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

「日本海」でいったりきたり(その7;映画「待合室」)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122735.jpgIGRいわて銀河鉄道の自動券売機で買った切符。

 更新が遅れていてスミマセン。今、日本に来ています。今日は更新ができそうなのでがんばります。久しぶりの更新なので長文です(^_^ゝ。

 2006年11月23日(木)、勤労感謝の日

 八戸からIGRいわて銀河鉄道の快速に乗ってやってきた二戸では1時間ほど時間があります。まずは腹ごしらえ。二戸駅に隣接する二戸広域観光物産センター「カシオペアメッセ・なにゃーと」の2階にあるレストランで盛岡三大麺の一つ「じゃじゃ麺」を食べました。1階は物産センターなどが入っていて、ちょっとした待ち時間を過ごすには最適。二戸にどうして「カシオペア」が出てくるのかはわかりませんが、南部地方の人間なら「なにゃーと」と聞けば何から付けられた名前かはぴんときます。三戸なども含めてこのあたりの盆踊りでは「なにゃどやら」という民謡を踊るのです。「なにゃどやら」の意味は今もって不明で、ヘブライ語ではないかという説も。僕なんか小さいときから何も気にせず踊ってましたが……(^^)。

 食後は、二戸発12:48のIGRいわて銀河鉄道盛岡行き普通列車4526Mに乗ります。行き先は小繋。列車は二戸から一戸、小鳥谷と停まって、16分で小繋に到着します。

 小さい頃に三戸に住んでいて、盛岡に住む親戚との往来などで何度も盛岡を往復していたこともあり、小繋という駅はよく知っていましたが、降りたことは今の今まで一度もありませんでした。そんな僕を小繋駅へ降り立たせることになったのは、映画「待合室」がきっかけです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122809.jpg 小繋駅に到着。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122739.jpg 小繋駅全景

 映画「待合室」。2005年公開のこの映画、監督は板倉真琴さん、主演は富司純子寺島しのぶ母子、舞台はズバリ小繋駅。キャッチコピーは「東北の小さな駅の待合室に人知れず置かれた「命のノート」、それに励ましの返事を書き続けるひとりの女性――」。この映画は、小繋駅に置かれた「命のノート」に書き綴られる旅人たちのメッセージに、二度と読まれることはないかもしれないけれど返事を書き続けた女性がいたという実話をベースにしたストーリーです。僕はこの映画を劇場でもDVDでも観ましたけれど、オープニングで雪に覆われた小繋駅のホームを寝台特急カシオペア」が駆け抜けて行くシーンは「鉄」にとってはたまらないシーンですし、ストーリー全体は、ともすれば自分の人生を軽く考え、なげやりにしてしまいがちが現代の人々にぜひぜひ観てほしい内容です。おまけに富司純子の演技は卓越で、一言の台詞もなしに、IGRいわて銀河鉄道の車内でおにぎりを頬張るシーンだけで観客を泣かせるなんて、並みの役者にできることではありません。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122746.jpg 小繋駅の駅舎。


 僕はこの映画を観て、ああ小繋駅を訪れてみなければと思い、そうして今回、実際に訪ねることができたのでした。
 今やIGRいわて銀河鉄道の列車と貨物列車が行き交うだけになった小繋駅に降りると、駅前には酒屋が一軒建っています。これが「立花酒店」。ここのおかみさんが、小繋駅に置かれた「命のノート」に、読まれるとは限らない返事を書き続けていたのだそうです。映画「待合室」では、この酒店をそのまま使ってロケをしています。「命のノート」を介して、拠り所を失った人たちと、一所懸命生きていれば必ずいいことがあるのだと返事を書き続ける主人公がいつしか通じ合い、その行き交いが、山奥の小さな駅・小繋駅で繰り広げられていくというストーリーは、こうして思い出して書いていても涙が出てきます(T_T)。今はDVDでしか観ることはできないけれど、ぜひみなさんに観てほしい映画です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122742.jpg 駅前に今もある立花酒店。

 小繋駅には、今も「命のノート」が置かれています。もう何冊目になるのでしょうか。駅舎の中には、映画「待合室」のスタッフたちの寄せ書きが今も飾られています。映画のシーンに出てくるような石油ストーブは今はもうなくなってしまってちょっと寒々しくなってしまったけれど、今もここ小繋駅で降りて「命のノート」に文字を連ねてくれる人はいると思うし、そうやってIGRいわて銀河鉄道に乗ってくれる人がいるというのはうれしい限りです。でも、何も深刻な悩みを抱えて小繋駅で降りる必要はありません。ほんのついででいいですから、岩手の山奥の、小さいけれどとても優しいこの駅に、みなさんにもぜひ途中下車していただきたいと思います。とてもいいところですよ(^-^)。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122759.jpg 今も置かれる「命のノート」。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122804.jpg どれだけの人が書き記したか。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818122755.jpg ▲映画「待合室」スタッフ(板倉組)の寄せ書きが飾られる駅舎内。日が差して暖かいんですよ。