毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

2008年夏、はやぶさ、薩摩三昧(その43;くろぢょか)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818121710.jpg ▲焼酎燗付け器「黒千代香(くろぢょか)」。温泉のお湯でゆっくりと温まります。

 2008年7月13日、珍しく焼酎。

 指宿温泉での夕食が続いています。

 お次のお料理はなんでしょう。ハモですか。ハモにエビ、枝豆をすりつぶして寄せたものでしょうか、これまたいい肴。お酒が進みます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818121719.jpg ハモなんてうれしいわあ。

 お酒と言えば、こんなにいろいろとお料理が出てきますと、せっかくはるばる鹿児島まで来たのですから、いくら焼酎が苦手な僕といえども、薩摩の芋焼酎を試してみないわけにはいきません。

 そんなわけで、前回の揚げたばかりの薩摩揚げの写真の中に、焼酎のロックのグラスが写っていたと思いますが、最初のビールに続いて芋焼酎のロックをまず飲んでみました。仲居さんに「いちばんクセのある、つまりいちばん鹿児島の芋焼酎っぽいのはどれでしょう」と無謀にも尋ねてみたところ、ちょっとうろ覚えですが「薩摩の薫」という銘柄だったかな、それを出してきてくれて、これをロックで楽しんでみました。なんせ焼酎が苦手なもんですから、ちびりちびりと、でもけっこうおいしく楽しみました。

 しかしながら、笠沙恵比寿に泊まったとき、部屋に備え付けてあった旅行雑誌に焼酎の飲み方が詳しく書いてあり、それによれば地元九州のみなさんは焼酎と言えば「お湯割り」にするのが普通で、四季を問わずそれがいちばんおいしい飲み方なのだとか。そこで、二杯目は銘柄を変えてお湯割りを、と頼んだところで、出てきましたー「黒千代香(くろぢょか)」。初めて見るシナモノであります。

 それは一言で言えば、黒い陶製のヤカン、というか巨大な急須というか。ひらべったい胴にちょこんと飛び出た注ぎ口、そして蔓の取っ手という容貌は、黒い色ともあいまってなかなかしぶいシェイプです。鹿児島県に昔から伝わる焼酎を燗付けするための道具で、この黒い色は薩摩焼と呼ばれる陶磁のなかの「黒薩摩」なのだそうです。
 この器で燗を付けると聞くと、僕のような日本酒派にとって更に興味深いのは、日本酒で燗を付けると言えばとっくりに酒を入れて、これをヤカンやタライに張ったお湯の中に入れて、いわば「湯煎」をすることによって中の酒を温めるのに対し、こちら鹿児島での焼酎の燗付けは、焼酎を直接「黒千代香」の中に入れ、それを直接火にかけて、まさにヤカンで湯を沸かすようにするということです。まことにおもしろい。酒文化の違いというやつでしょうか。

 さらにこの宿でおもしろいのは、このテーブルの前でこんこんと湧いている温泉で燗を付けること。温泉がとうとうと湧き出る壺の上に焼酎と水を入れた黒千代香を載せ、温泉の熱いお湯の熱でゆっくりと燗を付けるのです。なんとまあ優雅というか贅沢というか、こんなお酒の楽しみ方ができるなんて、指宿よいとこ一度はおいでヘ(^_^)~ですな。

 燗の付いた焼酎のお湯割りを、これまた黒薩摩と思われる杯に注いで、ほどよく温まった薩摩芋焼酎をいただきます。燗酒なので芋の香りがぐーんと増幅されて味にもふくらみが増したような気がします。ああ、僕も早くオトナになって、焼酎を「ウマイ」と思ってたしなめるようになりたいものだ。

 食事の〆めはせいろに入った蒸しごはん。ああ、この日もたっぷりいただきました。これでは部屋に戻ったらばたんきゅーと寝てしまいそうです。お風呂に入りに行きたいのに……。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818121715.jpg 黒薩摩の杯で焼酎お湯割りを。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818121722.jpg ▲食事の〆めはせいろの蒸しごはん。ほっくりと炊きあがってこれまた美味。