毎日ヶ原新聞

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【社説】中国山東省で大規模列車事故発生

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 ただいま更新はお休み中ですが、中国で大規模な列車事故が起きましたので簡単にレポートします。

 4月28日午前4時48分、中国山東省淄博市西部の鉄道膠済線で、北京発青島行きのT195次列車が脱線転覆し、脱線して上り線に乗り上げた一部車両に、上り線を走行してきた烟台発徐州行き5034次列車が衝突するという二重事故が発生しました。T195次列車には乗客1231人と乗員35人が、5034次列車には乗客1620人と乗員44人が乗っており、この事故で70人が死亡、416人が重軽傷を負いました。

 この事故は、膠済線王村駅付近のカーブに差し掛かったT195次列車の後方9両目から17両目までが脱線転覆し、その一部が上り線に乗り上げ、時速約70kmで通りかかった5034次列車がこれに衝突し、機関車とその後ろ1両目から5両目までが脱線転覆したもので、制限速度80km/hの区間を、事故発生当時T195次列車の速度は131km/hだったことが判明しており、事故原因は速度超過によるものとされています。

 2005年4月に発生したJR福知山線脱線事故は、制限速度70km/hのカーブに115km/h前後で列車が進入したことが原因とされていますが、今回の事故は、事故発生現場のカーブ曲線はわからないものの、それを上回る速度超過が行われていたようです。

 僕が今回の事故に関する報道を読むなどして大いに疑問を感じたのは、事故発生から約22時間後の29日午前2時16分に運行が再開されたことです。

 事故発生から運行再開までに報じられた記事は、現地政府や軍、医療機関などが地域住民らと協力し合いながらいかにして乗客らを救出したかということと、各鉄道局が1000人を上回る保線要員を直ちに投入して復旧工事に当たり、いかにすばやく線路上のがれき等を片付けて新しいレールを敷き、架線を張り替え、運行再開にこぎつけたかということばかりを事細かに報じ、事故の原因については速度超過のことが簡単に言及されているだけでした。

 29日から30日にかけての報道では、29日午前に国務院(日本の内閣に相当)に「4・28」膠済線特別重大事故調査グループが設立され、軌道基盤、運行状況、機関車の技術的な状況、運行指令系統、信号表示、運転士の対応等に問題がなかったかを厳しく調査するよう指示がなされたとされています。
 
 しかし、事故現場にはすでに何も残されていません。レールや枕木、バラスト、架線柱等に残った傷などの状況、転覆車両の脱線位置や転覆位置、破損状況等々を一つ漏らさず見つけて記録・保存するためには相当な時間を要するはずですし、死亡者の遺品や負傷者の持ち物がどこにどう散らばりどこで拾得されたかというようなことも記録されなければならないでしょう(なにしろ2列車で30両以上の客車が巻き込まれたわけですから)。それなのに、報道を見る限り、28日の正午過ぎにはクレーンが出動して線路上の車両と壊れた枕木が除去され始め、線路沿いの転覆車両はブルドーザーが撤去にかかっています。つまり、事故の現場には事故の痕跡はもうほとんど残っていないはずであり、これから事故調査をしたところで、いったい何がわかるというのでしょう。もちろん、仮に調査が進んで報告書が作成されたとしても我々一般市民の目に触れることはないでしょうし、この事故を受けてATSが設置されるようになるとも思えません。政府・軍・人民が一体となった救助作業と復旧作業が高らかに誇らしく宣伝されても、再発防止のための十分な原因究明は行われないのです。

 中国の鉄道は今、飛躍的な発展を遂げています。中国版新幹線CRH型車両が導入され、200km/hを超す速度の旅客列車も数多く運転されています。こういった高速列車やその路線にはそれなりの安全対策ももちろん施されいるでしょう。しかし、そうではない路線もまだまだたくさんありますし、何よりも、安全への取り組み姿勢、事故を未然に防ごうとする姿勢が稀薄なであるように感じられたので、こうしてこの記事を書きました。中国が鉄道運行の安全に対する意識をもっともっと高めていくことを希望します。

 なお、写真は新華社通信が配信した記事に掲載された写真を転載させていただきました。不都合や問題がある場合にはご指摘願います。