毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

中国版新幹線に乗っちゃいました。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202601.jpg ▲中国版新幹線CRH5型「和諧号」。4月18日、瀋陽北駅にて。

 出張から戻ったら冬の道東の旅をレポートすると書いておきながら、今日はいきなり中国ネタを書かせていただきます(^^ゞ。

 昨日(18日)、瀋陽へ戻ってくるのに中国版新幹線に乗っちゃいました。

 中国鉄路の近年の発展はめざましく、特にスピードアップの実現には目を見張るものがあります。その筆頭は昨年登場した「D字頭」列車と呼ばれる高速列車です。
 中国にはこれまで固定編成の電車というものはほとんどなく、機関車が客車を牽引するタイプばかりでしたが、昨年、CRHと呼ばれる固定編成の電車が登場しました。CRHは「中国鉄路高速(China Railway High-speed)」のことで、いくつかのタイプが製造されています。CRH1がカナダ・ボンバルディア社との技術提携、CRH2が日本のE2系1000番台をベースにしたもの、CRH3がドイツ・ICE3をベースにしたもの、CRH5がフランス・アルストムとの技術提携で、近い将来CRH2を時速300km対応型にしてCRH4とし、北京~上海間高速鉄道に投入する計画だそうです。このうち、北京と中国東北地方各地を結ぶ路線に投入されているのがCRH5型。固定編成車両のことを「動車組(Dong che zu)」と称することから、この車両を用いた列車の列車番号には「D」が付いているため、「D字頭」列車と呼ばれているのです。まさに「イニシャルD」であります。

 08年4月発行の時刻表によれば、東北地方の「D字頭」列車は、北京~瀋陽北間に一日6往復、北京~長春間と北京~ハルビン間に一日2往復が運行されています。最速列車は北京~瀋陽北間に1往復設定されているノンストップ便で、703kmを3時間59分で走りきります。表定速度は時速176.5km。
 中国版新幹線と言っても、日本の新幹線のような完全な専用線を走るわけではありません。新在共用というか、在来線の特急や鈍行や貨物列車が走っているのと同じ線路を走る部分も多く、必ずしも性能に見合った走りができているわけではありません。しかし、こと遼寧省に限って見れば、かつて「中華之星」という高速鉄道計画があったときにそのための専用線が河北省との境の秦皇島から瀋陽まで建設され、それを「D字頭」列車にそのまま使えるようにしたため、この区間は誰にもじゃまされずに爆走できます。例えば、北京発瀋陽北行きD3次列車は途中秦皇島と錦州南に停車しますが、専用線区間である秦皇島から錦州南までの走りを見てみると、181kmを54分かけており、この表定速度は201.1km/hです。また、北京発長春行きD21次列車は専用線区間部分である秦皇島から瀋陽北までの404kmを2時間03分で走っており、表定速度は197.1km/hです。

 この専用線部分には、「D字頭」列車運行に合わせて新駅がいくつか設置されました。西から「綏中北」、「葫蘆島北」、「錦州南」、「盤錦北」の4駅です。僕は今回、葫蘆島市下の山村を訪れたのち、その最寄り駅である「綏中北」から、「綏中北」に一日1本だけ停まる「D字頭」列車に乗って瀋陽へ戻ってきたのです。

 さて、前置きが長くなりました。

 新駅「綏中北」駅は、駅舎の中に売店などもなくがらーんとした印象。周辺も畑が広がるだけで市街地に近いわけでもありません。駅前の工事の後らしき空き地にテントを張って食堂兼売店を営む店が4軒ほど。テントを張ってでも商売をするそのたくましさには感服しますが、土埃の吹き付ける薄汚れたテントに近づいて食事や買い物をする気にはちょっとなりません。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202507.jpg できたばかりの綏中北駅。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202527.jpg 駅前の掘っ立て小屋的売店群。

 乗車するのは綏中北16:25発の瀋陽北行きD11次列車。綏中北に停車する唯一の「D字頭」です。到着5分前に改札開始。日本ではホームに乗車口案内板があるだけですが、「D字頭」はオリンピックに向けて中国がPRする自慢の高速豪華列車ですから、改札口からホームの乗車口まで駅員さんが案内してくれます!ホームに乗車口の案内はないが駅員さんが案内してくれるというなんとなく力の入れ具合のアンバランスなのが中国のおもしろさ(^-^)。

 高架の上は、中央に本線が2線とその両脇にホームに接する待避線が2線あり、ホームに屋根のある部分が少ないことと高架上に防音壁がまったくないことを除けば、日本の小さな新幹線駅とほとんど変わらない感じを受けます。
 北京発ハルビン行きのD27次列車が高速で駆け抜けたあと、D11次列車がゆっくりとホームに入ってきました。CRH5型です。確認はしていませんが、1編成8両×2編成の16両で運行されているもよう。先頭車両は「はやて」に似ているような、「こまち」に似ているような。ヘッドライトの間には誇らしげな「和諧号」の文字。「和諧」とは「調和がとれている、整っている、和やか」という意味で、今中国政府が全力を挙げて実現に向けて取り組んでいる国家の大目標「和諧社会」の最重要キーワードであります。それが列車の愛称になっているのですから、「D字頭」列車がいかに中国にとって重要でしかも誇り高いものであるかがわかるでしょう。先頭車両と最後尾車両の側面にもでっかく「和諧号」と書かれてあります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202534.jpg D27次ハルビン行き通過!

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202541.jpg ▲D11次が少々遅れて綏中北駅にゆっくりと到着。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202522.jpg 側面にでっかく「和諧号」。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202546.jpg ドアは気密式の自動ドア。

 ボディはホワイトにブルーのライン。かなりスマートに見えます。ドアが開きます。自動ドアです(中国の鉄道車両は自動ドアは極めて少ない)。乗車するのは3号車、二等車です。車番はZE500403。「ZE」が二等車を表し、数字はおそらくCRH5型の第4編成の3号車を表しているのではないかと思われます。ちなみに一等車は「ZY」らしいのですが、見たことありません。

 車内に足を踏み入れると、日本の新幹線車両と遜色ないぐらいにきれいでです。シートは2×3でこれも日本と変わりませんが、回転させることはできず、向きが固定されており、車内の三カ所ぐらいにお見合い席があります。シートはリクライニングもせず、クッションも薄く、前後の間隔も狭い上に隣席との間に肘掛けもないので、どうも窮屈で座り心地が悪いです。おまけに満席なので窮屈感倍増。それと窓が小さいのか窓際の席でないと外の景色が楽しめません。発車直後に車掌さんが「今乗ってきたひとー」と尋ねてまわり、新しく乗ってきた乗客にミネラルウオーターのペットボトルを配ります。これはサービス。
 座り心地はよろしくないですが、乗り心地は快適。さすがに専用線を走るだけあって揺れはほとんどなく、防音壁がないので車窓の景色もなかなかよろしい。周囲は地平線まで続く畑ばかりでただっぴろいのであまりスピードを出している実感がありませんが、200km/hは出しているのでしょう。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202551.jpg 二人がけシート。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202556.jpg こちら三人がけシート。

 瀋陽市内に入り、皇姑屯駅の近くで専用線を下り、在来線軌道を終点瀋陽北へと進みます。綏中北駅到着のときから少々遅れが出ていましたが、瀋陽北到着も少々遅れて18:20頃到着しました。綏中北からの330km弱をわずか2時間弱で走るとはさすがイニシャルD。しかし遅れを出すあたりはまだまだですね。驚いたことに、到着したばかりのD11次列車は休む間もなくD12次列車として北京へ引き返します。車内整備や清掃なんてやりません(というか、清掃は終点到着前に乗客も巻き込んでみんなでやっちゃいます)。乗客が降りるのと入れ違いでどんどん次の乗客を乗せちゃいます。それでも遅れての発車になります。もうちょっと余裕のあるダイヤを組んではいかがでしょうか、中国鉄路さんっ!

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202609.jpg 真横から見たCRH5型。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202615.jpg 先頭車にはCRHのロゴ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818202512.jpg薄暮れの瀋陽北駅に少々遅れて到着したD11次列車。すぐにD12次として折り返す。