毎日ヶ原新聞

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帰省ついでの青荷温泉partⅡ(その2;ランプの宿)

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222915.jpg青荷温泉、一軒宿の玄関を入った帳場には一晩中5つのランプがほのかに灯っています。

 2005年12月29日、ランプの宿・青荷温泉

 虹の湖公園から送迎バスに揺られること約30分、青荷渓谷の谷底にある一軒宿に到着。またまたやってまいりました、ランプの宿・青荷温泉です。

 青荷温泉の開湯は昭和4年といいますから、ぼちぼち80周年を迎えます。本館にある内湯と、離れになっている「健六の湯」「滝見の湯」「露天風呂」の4カ所の風呂があり、無色透明、無味無臭の単純炭酸泉が湧いています。消防法で定められた最小限の電気以外は引いていないので、客室には当然テレビも冷蔵庫もなく、明かりもランプの火しかないので日が暮れれば本も読めず、送迎バスの運転手さんが「うちの宿には温泉と退屈しかありません」と紹介してくれるように、日が暮れてしまったら温泉に浸かるか酒を飲むかぼーっとするか寝るかしか選択肢はありません(^-^)。かつては冬季休業だったのが2001年からは通年営業になったので、こうして最も雪深い季節にも訪れることができるようになりました。

 本館2階の客室に入り、缶ビールや酒瓶を窓の外に出して冷やします。2階の窓から眺めると、渓流や離れの建物や、小さな吊り橋などが分厚い雪をかぶって、外は本当に真っ白で、川の流れる音以外はとても静かです。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222847.jpg 厚い雪に覆われた小川と離れ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222852.jpg 「健六の湯」はまだ新しい。

 午後4時を過ぎて日が傾きかける頃、ランプ係の青年がランプを吊しにやってきます。大きな火屋の中の芯にぽつりと火が点ると、小さいけれどとても暖かい光が部屋に満ちます。あたりが暗くなってきた頃にまた窓の外を見てみると、露天風呂の屋根の下や吊り橋のあたりの小道に沿って灯されたランプがほのかな明かりを放っていて幻想的でさえあります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222856.jpg 客室にもランプが灯った。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222909.jpg これで一晩十分もちます。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222902.jpg ▲中央に見えるのが「露天風呂」の屋根。その中にも、その周りの離れにもランプが吊されたようす。

 夕食は大広間で宿泊客全員が一斉に集まって始まります。ごはんと味噌汁はセルフサービスなのでまるで合宿のようです。大広間も厨房もランプの明かりしかないので、暗くて料理がよく見えません。よく見えないので、食事が始まるときに板前さんが今日のおかずを津軽弁でおもしろおかしく紹介してくれるのが青荷温泉の定番です。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222930.jpg ▲帳場に一晩中灯る5つランプはどれも火屋がぴかぴかに磨き上げられています。

 自慢の温泉が湧く風呂場にも、明かりはランプの火と石油ストーブの火しかありません。誰もいない浴槽に一人でゆらゆらと浸かっているのはなんとも言えず癒されます。すっかり温まって本館に戻ると、軒先に厚く雪を積もらせた玄関も、ねぶた絵や凧絵が飾られた入口広間も、ランプの火に照らされてゆらゆらと揺れています。部屋に戻っても何もすることがありません。湯飲み茶碗によく冷えた地酒を注いで、夜が更けるのにまかせて飲むことにしましょう。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222926.jpg ヒバの湯船の脇にもランプ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190818/20190818222920.jpg ▲すっかり温まって本館に戻ると、たっぷり雪が積もった軒先の先の玄関越しにランプの明かりが。