毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

「出雲」に乗って初詣⑤(ちょっと不思議な出雲大社)

 2005年1月3日、出雲大社

 出雲大社神域の入口である勢溜の木製の鳥居をくぐり、両側の露店には目もくれず(露店の食べ物ってどうしてあんなにおいしく見えるんですかね)長い参道を歩き、突き当たりで銅鳥居をくぐると、ついにやってきました、しめ縄でおなじみ、出雲大社拝殿。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819024439.jpg 出雲大社拝殿。しめなわデカい。

 拝殿の大しめ縄は長さ8メートル、重さ1500㎏。大きさが特徴であることもさることながら、このしめ縄、かけ方が「左本右末」であることも大きな特徴です。これはご存じの方も多いと思いますが、ちょっとだけ解説しますね。

 しめ縄のかけ方と綯い方にはそれぞれ大きく言って二通りずつあり、かけ方は一般には社殿に向かって右を上位とし、綯い始めを右にする「左末右本」です。逆の「左本右末」は日本全国で一割程度しかないとか。綯い方には左綯いと右綯いがあり、左綯いが本来とされますが右綯いも20%ほどあるそうです。

 出雲大社は、綯い方は左綯いですが、かけ方は一般と正反対の「左本右末」です。

 出雲大社はどうしてこうなっているのでしょうか。しめ縄とは「神域など神聖な場所を限って不浄悪穢の侵入を防ぐ縄」とされますが、ある説では「出雲大社では左右の上下は向かって左を上位としているので、しめ縄の絢始も向かって左に置かれている」といい、またある説では、「御神座である大国主命から見れば一般的な「左末右本」になっている、すなわち大国主命が御神座のある本殿から生者の世界へ出てこられないように本殿を封印しているのだ」と主張するものもあります。

 さて、拝殿の向こうには、その大国主命を祀る本殿があります。
 一般の参拝では、本殿の敷地を囲む外塀の南面にある八足門から中へは入ることができませんが、正月5ヵ日に限っては八足門が開放され、敷地内の楼門前まで入ることができます。
 正月の八足門開放のことは全然知らず、行ってみたら楼門まで入れたので、こりゃー春から縁起がいいわいとありがたさ倍増。中では御神酒も素焼きの盃で振る舞われていたのでさらにありがたさ三倍増。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819024445.jpg 本殿入口、八足門。

 ところで、正月の八足門開放の時であっても、参拝客は楼門前までしか入れず、本殿へは一切近づくことができません。この本殿の中の配置がまた不思議です。参拝者は南を背にし、北を向いて本殿に向かって二拝四柏手一拝しますが、御神座の大国主命は南を向いていません。大国主命は参拝者のほうを向かずに、西を向いて座っており、正面の参拝者には左の横顔を見せているのです。大国主命から見て右には正面(南面)を向いて御客座五神が祀られており、この五神は参拝者のほうを向いています。

 ですから、本殿の外側を外塀に沿って西面へ歩いて行くと、西を向いている大国主命の正面に当たる位置に、大国主命はこちらを向いているのでここでも拝礼してくださいということが書かれた木札が立っています。

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↑本殿西面。中央奥に見えるのが本殿。この中で大国主命はこちらを向いて鎮座している。

 これにも、「本殿内部は古代住宅の様式が忠実に反映されてあり、囲炉裏を囲んで座る際に最上位に当たる横座に大国主命が座っているから」とか、「参拝者が大国主命ではなく御客座五神を拝んでいるのは参拝者に大国主命を拝ませないためであり、また御客座五神は大国主命が祟らないように監視しているのだ」とか、諸説あるようです。
 それにしても、しめ縄にせよ神座の向きにせよ、出雲大社って不思議なところです。

 参拝を一通り終えると、お昼を大きく通り越してすでに2時。これは何か食べなければなりません。
 出雲大社に来たときはとにかく「出雲そば」。食べるのは出雲大社の勢溜から西へ歩いて5、6分の「荒木屋」と決めています。創業は江戸末期天明年間、約220年の歴史を持つ老舗。色黒で歯ごたえ十分でだしの味も格別のこの店のそば、いくらでも食べてしまいそうです(わんこそばじゃないってば)。四段重ねになった割子そば、それぞれ違う薬味類が載っていて飽きさせません。いや、薬味が載っていなくても飽きないのですが。 

 あ、勢溜から荒木屋へ行く途中にある「俵屋菓舗」の出雲大社名物「俵まんぢう」もなかなか素朴でよいです。そばを食べたあとの甘いものとしてちょっとつまむのにぴったりかも。


https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/m/mainichigaharu/20190819/20190819024454.jpg 「荒木屋」の割子そば。