臼杵竹宵、秋の灯はほのかに⑥(臼杵竹宵)
▲古い町並みを竹ぼんぼりの中を縫うようにそぞろ歩くのが「うすき竹宵」の楽しみ。
フェリーターミナルにはバスもタクシーもいなかったので、歩いて市内へ入ることに。しかし、少し歩いてフェリーターミナルのだだっ広い駐車場のほうを通りかかると、臼杵竹宵まつり用のシャトルバスがぽつんと停まっていて、まつり運営スタッフが数人待機していました。でも、ターミナルにはシャトルバスがあるというような案内も出ていなかったし、シャトルバス乗り場はターミナルから離れすぎていて、フェリーを降りた人は誰も気づきません。スタッフのかたに「他にも竹宵に来た人がいたみたいですけど、案内が何もないので困っていましたよ」と言ってあげたら、そのスタッフはあわててターミナルのほうに走っていきました。もっと近くに乗り場を設置するか、せめて案内を掲示してくれれば初めての旅行客にも親切なのにね。
「うすき竹宵」―― 国宝臼杵石仏石仏を造ったと言い伝えられている真名長者伝説を再現したおまつりで、古い町並みの残る二王座など市内各所の道々に二万本に及ぶ「竹ぼんぼり」が置かれ、やさしくやわらかい灯が点されます。大林宣彦監督の映画「なごり雪」で映し出されたあまりにも美しい竹宵のシーンに、ぜひ一度実際に竹宵を見たいと思い、こうして再び臼杵を訪れたのでした。
臼杵城址。
臼杵城址に灯る竹ぼんぼり。
灯籠のような灯りも見える。
まず臼杵城址、それから石畳の道を歩いて久家の大蔵のほうへ向かいます。ふだんは駐車場になっている広い空き地にはたくさんの露店が軒を並べて祭り気分を出していますが、石畳の両脇に無数に並べられた竹ぼんぼりに静かに灯が点り、ところどころに竹を使ったオブジェが飾られ、訪れた人々はゆっくりとそれらを眺めながら臼杵の古い町並みをそぞろ歩くのみです。ここだけ時間がゆっくり流れているようで、竹ぼんぼりのだいだい色の光がゆらゆらと揺れるのをぼんやり眺めるだけなのに少しも飽きません。ああ、こんな祭りもあるのだなとなんだか感心してしまうような。
竹で作ったオブジェ。
道沿いに無数のぼんぼり。
▲前回初めて「黄飯」を食べた小手川商店の前にものどかに竹ぼんぼり。
▲臼杵の石畳の古い町並みに「竹ぼんぼり」がぼんやりと灯ります。
19時になると、儀式が始まります。般若姫行列です。真名長者のひとり娘である般若姫の御霊の里帰りを再現した行列で、当時の装束を身にまとった人々が、里帰りの船を模した御輿に般若姫役の若い女性を乗せて八坂神社、稲葉家下屋敷から臼杵の町を練り歩きます。般若姫には例年地元の女性が選ばれるそうですが、映画「なごり雪」が完成した年にはヒロインを演じた須藤温子さんが般若姫になったそうですし、今年は、大林監督が再び臼杵を舞台に撮った映画「22才の別れ」(なんとかして観に行きたい)のヒロインを演じた女優・鈴木聖奈さんが般若姫だそうです。
温かい灯りはどこか幻想的。
▲大勢の人々に見守られながら般若姫の行列が進みます。
上臼杵の駅前にもぼんぼりが。
今年の「うすき竹宵」は11月3日と4日の二日間行われます。静かで穏やかでやわらかい、この臼杵のおまつりに、みなさんもいらしてみてはいかがですか?
▲「うすき竹宵」は今年で11年目を迎えるそうです。