毎日ヶ原新聞

日本全国、時々中国、たまにもっと遠くへ、忘れちゃもったいないから、旅の記録。

名残の「彗星」、そして火祭り④(重岡駅)

イメージ 1 ▲緑に吸い込まれるように重岡駅を走り去る延岡行き普通列車2725M。

 2005年8月27日06:40、南延岡からの普通列車はついに重岡駅に到着しました。
 列車を降り、去っていく2720Mを見送ります。

イメージ 2 ▲ついに念願の重岡駅に降り立ち、2720Mが大分へ向けて出発するのを見送ります。

 列車が行ってしまうと、広くて苔生したホームに一人取り残されました。
 停車する列車が一日にわずかしかないからと言って、ここは別に秘境駅の雰囲気があるわけではありません。駅のすぐ前を国道10号線が走っていますし、側線には保線用車両も停められています。しかし、早朝の日の光に照らされた苔生したホーム、黒い屋根瓦の木造駅舎、駅を取り囲むように濃い緑の山々、時折国道を行き過ぎる自動車、それらのものが渾然一体となって、どうにも訪れたくなる、そして訪れてみるとどうにも離れがたい風景をそこに作り出しているのでした。

イメージ 3 ▲苔生した重岡駅のホーム。うむ、確かに映画「なごり雪」にはこんなシーンがあった。

イメージ 4 ▲黒い屋根瓦にも苔むす重岡駅の木造駅舎。

 二年ぶりに再訪を遂げた重岡駅のホームで感激に浸っていると、一日たった二本しかない下り列車の一本目、佐伯始発の延岡行き普通列車2725Mが1番線にやってきました。こちらも457・475系デカ目の三両編成です。

イメージ 7 ▲06:56発の下り延岡行き普通列車2725Mが到着。

 この列車が行ってしまうと、次に重岡駅に旅客扱いの列車が停まるのは10時間以上あとの午後5時を過ぎてから。さすがにそれまで待っていることはできないので、僕は重岡駅前発08:52のバスで佐伯駅へ出ることにしました。それまでのあと2時間、念願の重岡駅で映画「なごり雪」の世界に浸ることにしようと思います。

 重岡駅は、映画「なごり雪」の中では「臼杵駅」という設定で登場します。ですから、駅舎の出番はなく、映画に出てくるのはもっぱらホームだけです。主人公たちがホームで出会いや別れを繰り返すことによって時を紡ぎ、28年という歳月が映画の中で静かに語られるのです。映画では、このホームを舞台に、臼杵を離れる者、臼杵に残る者が切なく描かれ、どうしてもこのホームが印象に残ってしまいます。

イメージ 6 ▲いつ作られた駅名標なのか。隣駅「宗太郎(そうたろう)」の「た」に濁点をつけたのは誰?

イメージ 9 ▲次に普通列車が停まるのは10時間後。

 朝7時を過ぎてまもなく、佐伯方から貨物列車が駆け抜けていきましたた。牽引はED76-1010機。

 駅舎の脇に水道があったので、そこから出る冷たい水で顔を洗い、歯磨きをします。夜行明けのぼんやりした頭がこれですっきり。広い駅の構内で誰気にすることなくじゃぶじゃぶと顔を洗うなんて、なんか、いかにも青春18きっぷの旅っぽくないですか?なんかキャッチコピーでも作ろうかしら。「一人で降りた駅で顔を洗った。冷たくて涙が出た。」こんなのダメか(笑)。

イメージ 8 ▲ED76-1010機が牽く貨物列車が轟音とともに駆け抜けていきます。

イメージ 5 ▲重岡駅の駅舎内に掲げられた時刻表。上下合わせて四本と、重岡終点で折り返して行く列車が一本。